前編に続き、「iPhone 16 Pro/Pro Max」のレビューをお届けする。
2023年に登場した「アクション」ボタンに続き、iPhone 16シリーズには「カメラコントロール」ボタンが追加された。ボタンと言っても、実質的にはカメラ機能のショートカットキーだ。押すとカメラが起動し、もう一度押すと写真を撮影する。長押しすれば、動画撮影が始まる。
カメラコントロールボタンは電源ボタンのすぐ下にあり、端末の側面とほぼ同化している。軽くダブルタップすると、小さなカメラツールのメニューが表示される。見るたびに満足感を覚えるミニマルで美しいデザインだ。「ズーム」を選択して、指をボタン上でスライドさせると拡大や縮小ができる。まるで「MacBook」のトラックパッドのミニチュア版だ。このボタンは、ポートレートモードの絞り値を設定して、背景のぼかし具合を調整するのにも利用できる。
筆者の場合、カメラコントロールボタンは「フォトグラフスタイル」の選択に使うことが多い。ボタン上で指をスライドすると、実際に写真を撮る前に各スタイルのプレビューを確認できる。Appleによれば、他にもさまざまな機能を開発中だという。例えば、ボタンの半押しでフォーカスと露出を固定し、全押しで撮影するといった、プロ用ミラーレスカメラのような機能だ。
カメラコントロールボタンの最大の欠点は誤タッチしやすいことだ。iPhoneを横向きにして片手(筆者は右利きなので右手)で持ち、落とさないよう人差し指を端末の側面に添えると、誤ってカメラコントロールボタンを触ってしまいやすい。
便利なカメラコントロールボタンだが、その真価が発揮されるのは「ビジュアルインテリジェンス」の登場後となりそうだ。ビジュアルインテリジェンスは「Googleレンズ」に少し似た機能で、iPhoneのカメラが捉えたものについて調べられる。残念ながら現時点では使えないが、2024年末までには登場予定だ。
カメラコントロールボタンはサードパーティーの写真関連アプリでも使える。個人的には「TikTok」などのアプリのスワイプや、ソーシャルメディアのフィードやストーリーのスクロールに使えようになるとうれしい。実現すれば、「Blackberry」の象徴だったスクロールホイールの現代版となるかもしれない。
iPhone 16 Proには3つの新しいカメラが搭載された。2023年発売の「iPhone 15 Pro」には3倍望遠カメラが搭載されていたが、iPhone 16 ProにはiPhone 16 Pro Maxと同じ、1200万画素の5倍望遠カメラが追加された。この他、4800万画素の超広角カメラと、高速化された4800万画素のメインカメラを備える。繰り返しになるが、iPhone 16 ProとiPhone 16 Pro Maxに搭載されているカメラは同じだ。
では、iPhone 16 ProとiPhone 16 Pro Maxで撮ったお気に入りの写真を紹介していこう。
高解像度の超広角カメラを使えば、見事なマクロ写真を撮影できる。下の写真は、獅子舞のヘッドマスクをクローズアップで撮影したものだ。毛の細かなディテールをしっかり捉えられているところに注目してほしい。
超広角カメラは食べ物のマクロ撮影にも使える。下の写真はカフェ「Four Barrel」のミルク入りエスプレッソとスコーンを写した1枚だ。
超広角カメラで撮影した写真は美しく、画質がメインカメラに劣るとは感じない。しかし実際のところ、この2つのカメラはかなり違う。下の写真は、メインカメラでワインバーを撮影したものだ。
そしてこちらは、同じバーを超広角カメラで撮影したものだ。
個人的には、超広角写真のコントラストの方が好みだが、超広角カメラはメインカメラよりもダイナミックレンジ(カメラが捉えられる明るい部分から暗い部分の再現幅)が狭く、かつ暗い方に寄っている。レンズフレアはかなり少ない。下の画像では、上部に街灯(写真には写っていない)が生み出した小さなフレアがうっすらと見える。
メインカメラはダイナミックレンジが広い。例えば下の写真は、サンフランシスコのSoMa(サウス・オブ・マーケット)地区を撮影したものだ。
メインカメラの写真は画質が非常に高く、肌の色も的確に表現できている。下の写真は、サンフランシスコの夕日を背景に撮影した米CNETスタッフの集合写真だ。どのスタッフの肌もやわらかく輝いている。ややソフトに傾きすぎているかもしれないが、プラスチックのような加工感はほとんど感じられない。
下の写真は、霧のたちこめた夜にサンフランシスコ市庁舎をナイトモードで撮影したものだ。
Appleは「フォトグラフスタイル」を刷新した。これは筆者がカメラコントロールボタンを使って、さまざまなスタイルを試すためによく利用する機能だ。ボタン上で指をスライドし、あれこれスタイルを変えながら理想の見え方を探る。「FUJIFILM X100VI」の「フィルムシミュレーション」に少し似ているかもしれない。スタイルを変えるだけで写真のさまざまな要素が自動で変わる点だけでなく、変化を自分でコントロールし、カスタマイズできる点が似ている。
写真アプリで写真や動画を確認するとき、特に撮影直後はディスプレイを一度タップしなければ全画面表示に切り替わらない。致命的な問題ではないが、動画撮影中に結果を確認したいときはわずらわしく、不要なストレスを感じることがあった。
写真アプリといえば、ビデオ用の新機能「オーディオミックス」にも感心した。iPhone 16 Proには標準でビデオからノイズを除去する機能が備わっている。オーディオミックスを使えば、録音された音声を後から調整して、カメラに向かって話している人の声だけを分離し、スタジオ収録のような響きに変えたり、人間の声は前面のトラックに配置し、周囲の音は別のトラックに保存したりすることも可能だ。
筆者は、米CNETのJessica Fierroが騒々しい屋上でギターを弾き語りする様子をビデオに撮り、オーディオミックスを使用したところ、街の喧噪や空調機のノイズ、風の音を見事に除去できた。
iPhone 16 ProとiPhone 16 Pro Maxの魅力を大いに高めているのが「iOS 18」だ。今回のアップデートでは、自分のニーズに合わせてiPhoneをパーソナライズできるようになった。ホーム画面の好きな場所にアプリを動かしたり、アイコンの色やサイズを変えたり、アプリ名を非表示にしたり、コントロールセンターにショートカットを追加したりと、カスタマイズの幅は広い。
ダイナミックアイランドをタップすると表示される「フラッシュライト」のコントロールも楽しく便利だ。メッセージにリアクションを返す「Tapback」機能では、多彩な絵文字や「Live Photos」で作ったステッカーを使えるようになったほか、新しい「パスワード」アプリでは、Wi-Fi用パスワードをQRコードで共有できるようになった。
iPhone 16 Proシリーズの軽快な動きを支えているのは、Appleの純正チップ「A18 Pro」だ。この強力な新型チップは、大量の4Kスローモーションビデオの撮影からゲーム、日常的なスクロール操作まで、どんなタスクも難なくこなす。
バッテリーについては、レビューではiPhone 16 Proをメインに使っており、1日程度なら十分に持つ。特に酷使した日(画面輝度を最大にしてビデオ撮影をした日)は、午前6時半にフル充電でスタートし、午後7時時点での残量は12%だった。その後、15分間充電して37%まで増やし、午前1時時点での最終的な残量は22%だった。
iPhone 16 Pro(6.3インチ)とiPhone 16 Pro Max(6.9インチ)は、年次アップデートとしては期待通りの仕上がりだ。Apple Intelligenceを抜きにしても、長いバッテリー駆動時間、高性能な写真・動画機能、iOS 18など、多くの改良点がある。マイナス点は、大きな画面を取り囲む極細ベゼルのように目立たないが、あえて挙げるなら999ドル(日本では税込15万9800円)もするのに基本モデルのストレージ容量が128GBしかないこと、地味な色しか選べないこと、新しいカメラコントロールボタンは誤タップしやすいことだ。
iPhone 16 ProとiPhone 16 Pro Maxは手に入れる価値のある優れた端末だ――もし財布に余裕があるならば。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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