Googleの折りたたみスマートフォンが大きな進化を遂げた。「Pixel 9 Pro Fold」は、激化しつつある折りたたみスマートフォン市場に同社が初めて参入した2023年の「Pixel Fold」の後継製品だが、見た目だけでその進化は分からない。
Pixel 9 Pro Foldは、Googleの折りたたみスマートフォンとして2世代目であり、新しいプロセッサーや魅力的な人工知能(AI)機能など、2024年の新型スマートフォン製品に期待されるアップグレードはすべてそろっている。変わったと感じるのは、その一新されたデザインだ。カバーディスプレイは細くなったが全体では大きくなり、パスポートのような形状だったPixel Foldから一転して、折りたたんだときに通常のスマートフォンに近くなるデザインを採用している。この変化で、Pixel 9 Pro Foldは前モデルより実用的になったように感じられる。
GoogleはPixel 9 Pro Foldで、デザインと機能に関して、広く受け入れられている標準的な「Pixel」シリーズをうまく手本にしている。その結果、サムスンや老舗の折りたたみスマートフォンメーカーと真の意味で肩を並べられると感じるデバイスが誕生した。
それでもPixel 9 Pro Foldは、現在の折りたたみスマートフォンについて回る最大の問題を、やはり解決できていない。1799ドル(日本では25万7500円)からという高い価格である。ハードウェアはそれなりの進化を遂げているが、Pixel 9 Pro Foldのソフトウェアは、サムスンの製品と比べると、折りたたみ式ディスプレイを十分に生かし切れていないように感じる。2000ドル近い価格であることを考えると、ハードウェアとソフトウェアのどちらについてもハードルは高いのだ。
まだ何日間か試用しただけなので、もう少し長く使ってみれば詳細を報告できるだろう。今のところPixel 9 Pro Foldは、Googleの折りたたみスマートフォンとして正しい方向に大きく進んでいる印象だが、ソフトウェア面ではもう少し魅力が欲しいところだ。
Googleはこのスマートフォンを「Pixel Fold 2」ではなく「Pixel 9 Pro Fold」と名付けており、その理由は明白だ。Pixel Foldと比較すると、Pixel 9 Pro Foldは外観も使用感も全く異なるスマートフォンで、まるでGoogleが一から作り上げた製品のように感じられる。
カバーディスプレイのサイズは6.3インチで、折りたたみ式ではない通常の機種の「Pixel 9」や「Pixel 9 Pro」と同じだ。参考までに、Pixel Foldのカバーディスプレイはそれよりも小さいが幅のある5.8インチとなっている。筆者は折りたたみスマートフォンを閉じた状態で使用することがほとんどなので、カバーディスプレイの大型化は大歓迎だ。従来のストレートタイプの機種と比較したとき、Pixel 9 Pro Foldのような機種の最大の特徴は巨大な内部ディスプレイだが、筆者が写真撮影やテキストメッセージへの返信といった日常的な操作に最も利用するのは外部ディスプレイだ。また、257gのPixel 9 Pro Foldは、283gのPixel Foldよりもはるかに軽く感じる。
内部ディスプレイにも待望のアップグレードが施された。輝度が向上したほか、サイズもPixel Foldの7.6インチから8インチに大型化し、より大きな画面でゲームをしたり、SNSを閲覧したり、映画や番組を視聴したりできるようになった。しかし、筆者が最も評価しているのはディスプレイ自体ではなく、ディスプレイを囲むベゼルだ。ベゼルが大幅にスリム化したおかげで、画面の没入感が高くなった。画面の折り目もPixel Foldに比べて目立たなくなった。
デザインに関しては、Pixel 9 Pro Foldの方がPixel Foldよりも優れていることは間違いない。しかし、サムスンや小米科技(シャオミ)のスマートフォンと比べると、どうだろうか。239gの「Galaxy Z Fold6」はPixel 9 Pro Foldよりも幅が狭く、重さもそこまでないため、よりコンパクトに感じる。シャオミの「Xiaomi MIX Fold 4」は、広げた状態の厚さが5mmもなく、Googleやサムスンの機種よりもさらに薄い。
デザインは通常、スマートフォンで最も重要な要素というわけではないが、折りたたみスマートフォンは例外だ。折りたたみスマートフォンがこれほど高価なのは、Pixel 9 Pro Foldのような機種のハード面での特徴と特性が要因である。その点において、Googleが正しい方向に進んでいるのは、喜ばしいことだ。
Pixel 9 Pro Foldのカメラは、Pixel 9 Proほど高性能ではない。しかし、折りたたみ式ではないPixel 9 Proの代わりにPixel 9 Pro Foldを選んでも、大きな犠牲を払うことはない、と自信を持って言えるだけの性能は備えている。
Pixel 9 Pro Foldには、4800万画素のメインカメラ、1050万画素の超広角カメラ、1080万画素の望遠カメラが搭載されているのに対し、Pixel 9 Proは5000万画素のメインカメラ、4800万画素の超広角カメラ、4800万画素の望遠カメラを備えている。Pixel 9 Pro Foldのフロントカメラには、1000万画素のセンサーが搭載されているのに対し、Pixel 9 Proのフロントカメラは4200万画素となっている。
これまでのところ、Pixel 9 Pro FoldとPixel 9 Proで撮影画質が最も顕著に異なるのは、予想通り、超広角カメラとフロントカメラだ。Pixel 9 Proの超広角カメラで撮影した写真は、Pixel 9 Pro Foldで撮影したものよりも鮮やかで、カラフルな出来栄えだった。一方、9 Pro Foldのフロントカメラで撮影した写真は、Proで撮影したものに比べると、輪郭がぼんやりとしており、細かいところまで写しきれていなかった(下に掲載した写真は同じように見えるかもしれないが、27インチモニターで見ると違いが分かった)。
しかし、状況によっては、Pixel 9 Pro Foldは最大のライバルであるサムスンのGalaxy Z Fold6よりも優れたパフォーマンスを発揮する。どちらも明るくて色鮮やかな写真を撮影できるが、Pixel 9 Pro Foldのメインカメラを使って日なたや暗めの場所で撮影した写真は、Galaxy Z Fold6で撮影したものよりも少し色鮮やかに見えた。
Galaxy Z Fold6はPixel 9 Pro Foldよりも高いズーム倍率で写真を撮影できるが(前者は30倍、後者は20倍だが、どちらも主にデジタルズームだ)、Pixel 9 Pro Foldで20倍ズームを使って撮影した写真は、Galaxy Z Fold6で撮影したものよりもはるかに鮮明ですっきりしていた。しかし、驚いたことに、Galaxy Z Fold6の超広角カメラで撮影した写真は、Pixel 9 Pro Foldで撮影したものよりも輪郭がはっきりしていた。
モバイルデバイスのカメラの評価は、主観的なものになることがあり、カメラの性能に関して言えば、それぞれの機種に長所と短所がある。しかし、これまで見た限りでは、Pixel 9 Pro Foldのカメラは、折りたたみ式ではないハイエンドスマートフォンと同等の性能を備えているように思える。価格の高さを考えると、当然だろう。
「Pixel 9」シリーズのほかのモデルと同様、Pixel 9 Pro FoldにもAIを利用した写真撮影機能や画像生成機能が搭載されている。具体的には、「一緒に写る」(拡張現実《AR》を使用して、撮影者も含めた全員の集合写真を撮影できる機能)や、生成AIを利用した「イマジネーション」(写真内のオブジェクトを操作したり、新しいオブジェクトを追加したりできる機能)、「Pixel Studio」(テキストから画像を生成できる機能)などがある。
一方で、Pixel 9 Pro Foldにしかない機能もある。「こっちを見て」というカメラモードだ。折りたたみスマートフォン向けに作られたモードで、Pixel 9 Pro Foldの前面ディスプレイに楽しいアニメーションを表示することで、カメラを見ようとしない子供を撮影しやすくしてくれる、というものだ。この機能については、本来の目的ではまだテストできていないが、幼いおいっ子に次に会いに行ったときに、実際に試すのを楽しみにしている。
Pixel 9 Pro Foldは画面を展開した状態だと、小型タブレットとしてうまく機能する。8インチの画面で、動画や画像も鮮やかに表示される。また、分割スクリーンモードで2つのアプリを並べて表示させることも可能だ。「Googleフォト」からメッセージアプリに写真をドラッグ&ドロップする操作もスムーズにできる。「Googleドライブ」から「Gmail」にファイルをドラッグする場合も同様だ。
個人的には1つのアプリをディスプレイ全体に表示させる方が好きなのだが、Pixel 9 Pro Foldの分割スクリーン機能が役に立つ場面もいくつかある。例えば、「Spotify」と「Slack」を同時に表示しておけば、仕事中の昼休みに軽く汗を流したいときでも、重要なメッセージを見逃すことなく運動できるため間違いなく便利だ。
「YouTube TV」を利用している人は、スポーツイベントやニュース番組など、特定の番組の複数の配信を同時に視聴することもできる。ただし、この機能はPixel 9 Pro Foldに限定されているわけではない。ほかのAndroidスマートフォンや、「iPhone」「iPad」、スマートテレビ、ストリーミングメディアプレーヤーでも利用できる。また、複数の配信を見ているときに、ディスプレイ全体が占有されるといったこともない。
ソフトウェアに関しては、これ以外の点で改良を期待したい。特に、半開きにした状態でのソフトウェアの動作だ。動画ストリーミングやカメラなど一部のアプリは、本体を折り曲げてL字型にすると画面の上部に移動する。だが大半のアプリはそうならず、まるで滝のように、上半分と下半分の画面をまたがった状態で実行されるので、半開きのときには操作も表示も難しくなってしまう。Galaxy Z Fold6なら、半分まで開いて置いたときにはアプリがきちんと上側の画面に配置されるので、小型のノートPCのようになる。
これと同様の動作をGoogleが実装していないのは惜しまれる。本のように折りたためるスマートフォンで筆者が気に入っている機能の1つは、半分開いたままの形でどこかに置いて、小型のディスプレイのように使えることだからだ。掃除をしているときや洗濯物をしまうときには、Galaxy Z Fold6をデスクやドレッサーの上に半開きで置いたまま「Spotify」を実行するという使い方が気に入っている。これなら、手に持っていなくても、さっとプレイリストをスクロールしたり楽曲を切り替えたりできる。Pixel 9 Pro Foldをテントのような形で置いてカバーディスプレイを使えば、同じような操作性をどうにか再現できるのだが、サムスンのように操作系の機能を下側の画面に配置した方が、デバイスの使い方はずっと簡単になる。
とはいえ、一部のゲームはPixel 9 Pro Foldのディスプレイに合わせて最適化されており、ゲーミングデバイスとしての可能性を感じさせる。例えば「アスファルト:Legends Unite」などでは、ゲームプレイの画面が上側の画面に表示され、操作系とマップは下側の画面に表示される。また、「NBA Infinite」などは全画面を使って表示できる。このような最適化は確かに、Pixel 9 Pro Foldを通常のスマートフォンと差別化する好例ではあるが、「Android」向けゲームのほとんどがこの機能に対応するまでは、Pixel 9 Pro Foldのような折りたたみスマートフォンを購入する十分な理由にはならないだろう。
Pixel 9 Pro Foldは、「Android 14」が搭載されてのリリースとなった。これまでGoogleは、新型Pixelスマートフォンをリリースするとき、同じ年に登場するバージョンのAndroidを搭載してきたので、その慣例を脱したことになる。筆者の想像だが、フラッグシップモデルの投入が通例より早かった関係で、「Android 15」のパブリックリリースの準備が間に合わなかったからかもしれない。いずれにしても、Pixel 9 Pro FoldはAndroidとセキュリティに関して7年間のアップデートが保証されているので、新機能への対応と安全性が2031年8月まで約束されることになる。これ以外の新型Pixelデバイスと同様だ。
折りたたみデバイスに固有の機能に加えて、Pixel 9 Pro FoldにはほかのPixel 9シリーズと同じ新しいAI機能が採用されている。画像生成機能のPixel Studioや、スクリーンショットから視覚的な検索を実行できる「Pixel Screenshots」、AIで生成される天気予報の概要などだ(いずれも現時点で英語、一部の国のみの対応で、日本での提供予定は不明)。
Pixel 9 Pro Foldに搭載されている4650mAhのバッテリーは、筆者がこれまで試用した限りでは、1回の充電で1日以上持つ。友人宅を訪問したある日、節約しながらウェブの閲覧、写真撮影、音楽の再生などに使って約14時間経過した時点で、バッテリー残量は53%だった。
ただし、バッテリーの持続時間は常にデバイスの使い方に左右されることに注意してほしい。Pixel 9 Pro Foldで映画を観る、長時間のビデオ通話を受ける、動画の録画や音声の録音、ゲームを長時間プレイするといった使い方をすれば、バッテリーの減りはずっと速くなる。
バッテリー持続時間については、もっと長期間使用できれば、米CNET式のバッテリーテストの結果などを含めて、さらに詳しく考察できるだろう。
Googleの「Tensor」チップは、必ずしも強力なプロセッサーとして知られているわけではない。それでも、ゲームをプレイする、複数のアプリを並行して実行する、動画を視聴するなどに使っている範囲では、Pixel 9 Pro Foldのパフォーマンスは十分に高速だ。インターフェースも快適な滑らかさで、これはおそらく、プロセッサーとリフレッシュレート120Hzのディスプレイのおかげだろう。
今回のPixel 9 Pro Foldを見ても、第1世代の製品に手を出すのは、Google製品なら特に、最も賢い選択とは言えないだろうという例証の1つになった。Pixel 9 Pro Foldは、洗練された実用的なデザインを採用したことで、初代モデルと比べて大きく飛躍したと感じられる。
折りたたみスマートフォンのようなデバイスは、もともと通常のモバイルデバイスより大きく不格好になりがちなので、デザインの見直しは単に表面的な美観の変化にとどまらない。折りたたみスマートフォンをより薄く軽くし、しかもスクリーンサイズを大きくすれば、より自然に感じられ、楽しく使えるようになる。購入に際してスクリーンが大きな決定要因になるようなデバイスなら、この点は重要だ。
以上のことと、優秀なカメラ機能とをあわせて考えると、第2世代となったPixel 9 Pro Foldには歓迎すべき点が多い。筆者が2023年の「Pixel Watch 2」で感じたことを思い出す。初代の「Pixel Watch」も有望な点は多かったが、Pixel Foldのように重要な欠点も持っていた。それを、Googleは第2世代で改善したのである。
Pixel 9 Pro Foldで、ハードウェアは目に見えて向上した。次はぜひ、ソフトウェアの改善を期待したい。
Pixel 9 Pro Foldこの記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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