一般社団法人 日本電機工業会(JEMA)によると、2024年4~6月の国内出荷実績は、冷蔵庫や洗濯機などの主要家電カテゴリーが前年割れとなるなか、ルームエアコンは前年同期比10%増の伸びとなり、3カ月連続でのプラスとなっている。同協会では、「全国的に気温が高かったことや、前年6月が低調だったこともあり、前年を上回った」と語る。
電機大手各社が発表した2025年3月期第1四半期(2024年4~6月)決算でも、エアコンの好調ぶりが浮き彫りになる。
空調事業が増収増益となり、過去最高を更新したダイキン工業は、国内住宅用エアコンが、電気代の上昇による省エネニーズの拡大や、猛暑などの影響を受けて販売が拡大。「うるさらX」など差別化商品の販売を拡大したという。
「賃金改善による消費マインドの回復に加え、4月は統計開始以来過去最高の平均気温になったこと、5月、6月も全国的に平年の平均気温を上回ったこともあり、販売台数は前年同期を大きく上回った」という。
富士通ゼネラルも、国内空調機事業が好調だ。
「前年度に比べて、エアコン需要の立ち上がりが早まるなか、省エネ性の高い機種を中心に、量販店ルートで、需要期に向けた商品供給が進んだ。住宅設備ルート向けの販売も堅調に推移し、売上げが増加している」という。
シャープでも、エアコンの好調ぶりを強調。「4~7月は、業界全体で前年同期比11%増となっているが、シャープでは、前年同期比20%以上の成長となり、伸び率は業界全体を大きく上回っている」と、高い伸びを見せていることを示す。
こうしたなか、日立ブランドのルームエアコン「白くまくん」を展開していたジョンソンコントロールズ日立空調は、出資していた日立グローバルライフソリューションズ(日立GLS)およびジョンソン・コントロールズ・インタナショナルが、ドイツのRobert Bosch GmbH(ボッシュ)に、すべての株式を譲渡することを発表した。日立製作所では、「家庭用ルームエアコンは、これまでと同様に日立GLSが国内販売する」と説明。ジョンソンコントロールズ日立空調でも、「日立および白くまくんのブランドを維持しながら事業を継続する。また、国内向けルームエアコンの生産も栃木事業所で引き続き行う」と説明。「国内での生産は、円安が続いていることもあり、競争力のある地産地消での拠点として、確固たる供給力を実現する要になる」とする。
エアコン需要の特徴は、気温に影響されやすいこと、需要のピーク時になると、すぐに欲しいという需要が高まり、在庫がある商品が売れやすい傾向にある。そのため、需要に柔軟に対応できる国内生産が有利とされる。
静岡でルームエアコンの生産を行っている三菱電機も、「全機種を静岡において国内生産することにこだわってきた理由は、必要なときに、必要な製品を届けるためである。競合他社では国内生産に戻す動きもある。他社が三菱電機の良さに気がつき、追いついてきた」と自信をみせる。
ルームエアコンの旺盛な需要が高まるなかで、省エネ性、清潔性、快適性、操作性などともに、需要に対応した柔軟な供給体制も、シェア争いには大きく影響することになりそうだ。
この時期の需要として、もうひとつ見逃せないのが、パリオリンピックの開催にあわせたテレビ需要の行方だ。
だが、こちらは盛り上がりに欠けたといわざるを得ない。一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA)によると、2024年4~6月の薄型テレビの国内出荷実績は、前年同期の102万3000台に対して、102万7000台と微増に留まっている。調査会社の調べでも、7月は前年実績を上回った模様だが、4月からの4カ月間の実績は大きな成長は見られない。
ソニーグループは、テレビ事業が減収。「とくに、中国ではテレビ市場の大幅な縮小となった」という。テレビ事業では、第1四半期に在庫コントロールの徹底と、コスト削減施策を実施。オペレーション体質を強化することに注力。さらに、「家庭でのシネマ鑑賞体験をより豊かにする新製品として、『BRAVIA 9』シリーズを投入した。今後も高付加価値商品に注力していく」と述べ、台数を追わない戦略を推進している。
シャープでは、「国内テレビ市場全体では、4~7月実績で前年同期比2%増と見ているが、シャープでは、それを少し上回っている。これまで弱かったOLEDテレビが販売台数を伸ばしていることもあり、全体でシェアがあがっている」と、こちらも付加価値戦略を推進する姿勢をみせる。
なお、一般社団法人 放送サービス高度化推進協会(A-PAB)によると、6月末時点での4K8K衛星放送視聴可能台数は、テレビ、レコーダー、セットトップボックスなどを含めて、1998万6000台となっており、7月には、累計台数が2000万台を突破していることは明らかだといえそうだ。同協会では、4K8Kキャラクターの「ヨンハチさん」を新たに用意。4K8K衛星放送の認知度の向上、普及促進を図るという。
電機大手の2024年度第1四半期決算で目立ったのが、生成AIの普及や、それに伴うデータセンター需要による業績へのプラス効果だ。
生成AIの急速な普及は、経済活動にも大きな影響を与えており、経済産業省の試算によると、日本において生成AIがもたらす経済効果は、2025年には34兆円に達するとしている。これは日本のGDPの6%に匹敵する規模だ。
そうした動きが電機大手各社の決算にも反映されているというわけだ。
パナソニックグループでは、「インダストリーおよびエナジーの領域で、⽣成AI関連のビジネスが好調」とコメント。「生成AIサーバー向けのコンデンサーや多層基板材料のほか、生成AIの普及によって増加しているデータセンター向けに、蓄電システムが好調な売れ行きを見せている。生成AIサーバーの需要の拡大は継続する見込みであり、販売拡大を図る」と語る。
生成AIサーバー向けには、大電流の安定供給を支える高容量および高信頼性のコンデンサや、大容量や高速伝送に対応する超低伝送損失の多層基板材料のニーズが高く、データセンター向け蓄電システムでは、高入出力や高耐久、安全、省電力といった特徴に加えて、制御も含めた電源ソリューションの開発および供給力に評価が集まっているという。
三菱電機でも、「データセンター関連の業務用空調の引き合いには強いものがあり、前年同期に比べて大きく伸長している。欧州、インド、中国での商談が増えており、今後、北米でも受注活動を強化していく。チラーの販売が中心だが、このビジネスを、面で広げていきたい」と意気込む。
日立製作所では、生成AIやクラウド利用で高まるデータインフラ需要によって、国内外でのストレージ事業が伸長していることを示す。同社では、「ストレージは想定以上にいい。生成AI関連では、オンプレミスでの活用や、セキュリティ対策が注目され、日立が得意とするハイブリッドクラウドの提案が受け入れられている。ストレージ事業の販売体制を強化しており、第1四半期は米国での新規顧客の獲得、欧州での大口案件の獲得できている」と手応えを示す。
このように、生成AIの利用拡大や、それに伴うデータセンター需要の活発化は、当面の間、電機大手の業績に、プラス効果をもたらすの間違いなさそうだ。
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