長年の間に、多くの人が「Googleアシスタント」を頼りにするようになった。リマインダーやタイマーの設定、メディアやスマートホームデバイスの制御などさまざまな仕事をしてくれるこのデジタル執事は、筆者を含む多くの人々の生活の一部になっている。
しかしこの数年で、全体的に信頼性が落ちていることに気づいた人もいるだろう。筆者自身がそれに気付いたのは、Googleが「Gemini」(旧「Bard」)をはじめとする他の製品に力を入れ始めた頃だった。その時期の一致が偶然かどうかは不明だが、そこには確かに関連性がありそうだ。とはいえ、Googleはこの問題を解決しようとしているようにも見える。最近の発表で明らかになった、Geminiを「Google Home」の世界に統合しようとする取り組みがそれだ。
残念ながら、これらの新たな施策は、何かを尋ねる前から何が必要なのかを知っているかのような、以前の信頼できるデジタルアシスタントとしてGoogleアシスタントを復活させることを目指しているわけではなさそうだ。今ある問題を解決するのでなければ、なぜGeminiをGoogle Homeに統合しようとするのか。この記事では、今何が起こっているのかを整理してみたい。
Googleは、強力なAIツールであるGeminiをさまざまな形で利用しているのだが、今のGeminiの使われ方は、ユーザーがスマートホームを利用する際のGoogleアシスタントの使われ方とはあまり関係がない。しかしその状況は、GeminiをGoogle Homeに導入するという最近の発表によって変わりつつある。
最も重要な統合事例は、「Google Nest」のセキュリティカメラかもしれない。これは本当に素晴らしいGeminiの活用方法であり、同僚のTyler Lacoma記者が、その仕組みと何が期待できるかについて説明する記事を書いている。簡単に言えば、文章や画像、動画などを同時に扱えるというGeminiのマルチモーダル性によって、Google Nestのカメラが、映っているものをよりしっかりと把握できるようになるということだ。生成されるプレビューも改善されるし、何よりも通知がこれまでよりも正確になる。
Geminiの統合について最初に発表されたそれ以外の内容の中には、少々物足りなくはあるが、他にも有用な使われ方がある。Google Homeでタスクの自動化(「ルーティン」と呼ばれることもある)をやってみたことがある人なら、その作業はそれほど難しいとまでは言えないものの、面倒だったり、分かりにくかったりすることをご存じだろう。スマートホームの初心者やカジュアルユーザーであれば、イライラさせられても不思議ではない。
Googleは、複雑なルーティンを作成する場合のために、スクリプトエディターと、生成AIを使用した「スクリプトを作成」する機能を導入した。この機能は比較的よくできており、AIの統合はスクリプトの扱いにあまり自信がない人にとってうれしい話だろう。残念ながら、スクリプトの編集は多くのユーザーにとってあまりにも高度な作業であり、熟練したユーザーにとっても、楽になる方法があれば助かるはずだ。そこにGeminiの出番がある。
Geminiの統合によって得られる効果は、Googleアシスタントにリマインダーの設定や、買い物リストへの品物の追加などを頼む場合に似ている。話し声と普通の話し方を使って、ルーティンの作成を手伝ってもらえるようになるのだ。
これは、この新しい自動化支援機能を実際に使えるものにするための最後の一押しになる。Geminiが使いやすい理由の1つは、普通の話し方で使えることだ。命令するための正確な言葉や言葉の順序を覚えていなくても、人間に話しかけるように話すだけで理解してもらえる。以下に、GoogleがGeminiが役に立つ場面の例として示した動画を掲載しておく。
筆者はかつて、Google HomeとGoogleアシスタントを非常によく使っていた。「Android」搭載スマートフォンユーザーである筆者は、Googleのサービスにあまりにも多くの情報を預けており、スマートホームの制御にGoogleアシスタントを使うことは当然の選択だった。その状況は長い間続いた。しかしこの2、3年であまりにも使い勝手が悪化したため、筆者がスマートホームやその他の用途でGoogleアシスタントを使うことはほとんどなくなった。
これは、明かりを点ける、室温を調整するといった単純なタスクを頼んだときでさえ、「すみません、うまく理解できませんでした」などと返してくるようになったためだ。そのため筆者は、スマートホームデバイスのほとんどをAmazonの「Alexa」と「Home Assistant」に移行してしまった。家族には不評なのだが、筆者の家にはまだGoogleアシスタントで動くスマートスピーカーが家中に置かれている。しかし、音楽を流したり写真を表示したりする以外にはほとんど使われていない。
筆者は、Googleが新機能や「Google TV Streamer」に関する説明会を行った際に、Googleアシスタントがスマートホームの基本的な操作にも失敗することが多くなっており、この状況が近日中に修正される見込みはあるかと尋ねてみた。それに対する回答は、「Geminiが導入されれば、アシスタント機能全般の品質と安定性が改善されるだろう。品質は開発チームの最優先事項だ」というものだった。GoogleがGoogleアシスタントの全体的な質を改善したいと考えていることは確かだろうと思うが、いつ、どのようにそれが実現するのかは不明だ。
また、GeminiとGoogleアシスタントが将来どのような形で連携するのかを尋ねたところ、「家庭での利用の文脈では、Geminiのような大規模言語モデルの開発でも、基本的なユーザーのニーズは変わっていない。ユーザーは安全とセキュリティ、快適さ、そしてエンターテインメントを求めている。これらの優先順位やユーザーのニーズは、Geminiが開発された今でも変わらない。AIは転換点を迎えており、Geminiにはこれまでにもあったユーザーのニーズに応える準備ができている」という答えが返ってきた。
GoogeがGeminiをできるだけ多くのサービスに組み込むつもりであることは明らかであり、それは良いことなのかもしれない。Geminiによって、Google Homeの一部機能やGoogle Nestが改善されていることには希望が感じられる。しかし、Googleアシスタントが持っているスマートホームを制御するための基本機能が残念な状況にある一方で、Geminiにはまだそれらのデバイスを直接制御する機能はない。少なくとも一般ユーザーの目には、解決への道筋は、1492年に世界を探検するのに使われた地図のようにあいまいに見える。
GeminiとGoogleアシスタントが今後も別々のままなのか、いずれ統合されるのかは分からない。これはGoogleアシスタントとGoogle Homeのユーザーである筆者にとっては苦々しい話だし、筆者やほかの多くのユーザーは、スマートホームデバイスの制御に使える信頼できる音声アシスタントがない状態にある。しかしそれこそが、Googleが提供するスマートスピーカーやスマートディスプレイの本来の用途だったのではないだろうか。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」