先日、まもなく登場するAppleの「ゲームモード」を体験する機会があった。「iPhone」「iPad」「MacBook」――Appleがエコシステム全体で次世代のモバイルゲーミングを実現しようとしていることは間違いない。
モバイルゲーミングは目新しいものではないが、急発展している分野でもある。Appleは、最新のゲームをiPhoneで、しかも携帯ゲーム機と同等のパフォーマンスでプレイできるようにすることを目指してきた。その大きな成果が2024年秋にリリースされる「iOS 18」のゲームモードだ。
AppleはiOS 18のゲームモードを、6月に開催した「WWDC 2024」の基調講演で発表した。基調講演では他にも注目すべきニュースがたくさんあったので、ゲームモードに関する発表を見逃した人もいるかもしれない。おさらいすると、iPhoneでゲームモードをオンにすると、ゲームのパフォーマンスが向上し、長時間にわたり高いフレームレートが保たれ、バックグラウンドのタスクによるパフォーマンスへの影響が減ることで、没入感の高いプレイを楽しめるという。
「iPhone 15 Pro」はハードウェアアクセラレーションによるレイトレーシングに対応しているため、ゲームのビジュアルが大幅に向上し、スマートフォンでゲームを遊んでいるというより、携帯ゲーム機でプレイしているような感覚が得られる。
ゲームモードは2023年に登場した「macOS Sonoma」にすでに搭載されているが、iPhoneでも同じように機能するとみられている。例えば、全画面表示でゲームを実行すると、ゲームモードを有効化するよう促される。ゲームモードがオンになると、CPUやGPUといったシステムリソースがゲームに最優先で割り当てられ、没入感を損なう通知は無効になる。緊迫した試合の最中に通知がポップアップ表示されるほど最悪なことはないからだ。
ゲームモードでは、Bluetoothのサンプリングレートも引き上げられ、コントローラーやヘッドセットなどのワイヤレスアクセサリーの遅延が軽減される。ゲーマーなら、仲間とのコミュニケーションのわずかな遅れがゲームの勝敗を分けることを知っているだろう。
iOS 18がリリースされ、iPhoneにゲームモードが導入されれば、Apple製デバイス間でゲームプレイが標準化され、デバイスを切り替えても同じ場所からゲームを再開できるようになる。このアプローチは、MacBook経由でiPhoneをリモート操作するなど、「連係」機能によるデバイスをまたいだシームレスな体験の提供を目指すAppleの方針とも一致している。
AppleがiPhoneやMacBook、iPadでのゲーム体験に力を入れている大きな理由は、これらのデバイスには強力なハードウェアが搭載されており、その圧倒的性能を最大限に活用できるだけの技術もあると自負しているからだろう。新型iPhoneとMacBookの発表が迫るなか、ゲーム機能に対する注目は今後さらに高まりそうだ。
例えば新型「iPad Pro」に搭載されているAppleの純正チップ「M4」は、最新のゲームを一部のゲーム専用機よりもうまく処理できる。推奨スペックを優に超えるグラフィックス性能、美しく鮮やかな「Ultra Retina XDR」ディスプレイも、快適なゲーム体験を約束する。
デモでは、新型「iPad Air」でゲーム「アサシン クリード ミラージュ」を実際にプレイしてみたが、タブレットというより、むしろ超軽量なゲーム機と表現すべきパフォーマンスだった。iPhone用「Backbone One」のようなサードパーティー製コントローラーと組み合わせれば、満足度の高い高機能な携帯ゲーム機になるはずだ。
MacBookも同じようにゲーム性能は高く、macOS用に開発されたわけではないゲームですら快適にプレイできる。最近は「Windows」用ゲームをmacOS環境でプレイできるようにするエミュレーション技術が大きく進化し、多くのゲームをmacOSに最適化されているかのようにプレイできるようになった。たとえば、カルト的人気を誇るWindows用ゲーム「CONTROL」をMacBookでプレイしてみたところ、100%完璧とは言えないが、想像以上に快適だった。こうした技術を利用すれば、多くの新しい可能性が開かれるはずだ。
筆者は筋金入りのPCゲーマーだが、前述したようなゲームについては、Apple製デバイスでも問題なくプレイできると感じた。Windows用ゲームをApple製デバイスでも遊べるようにする動きは勢いを増しており、Appleはゲーム移植ツール「Game Porting Toolkit」を導入し、Windows用ゲームと比べて数が少ないとされるMacOS用ゲームを増やそうとしている。
Game Porting Toolkitは、WindowsアプリをmacOS等の環境で動かすためのエミュレーター「Wine」をベースにしたもので、「Direct X 11」と「Direct X 12」の命令を変換する「D3DMetal」を利用できる。Game Porting Toolkitは、開発者が自社のゲームをApple製デバイスに対応させるための標準化されたツールキットであり、統合されたゲームプラットフォームを用意することで、さまざまなプラットフォームとの互換性を保つことを目指している。これにより、macOS対応のゲームを作れば、iOSやiPadOSにも対応したことになる。これらのプラットフォームは同じハードウェア技術、同じソフトウェア技術を使っているからだ。
Game Porting Toolkitを使えば、ゲームを簡単にクロスプラットフォーム化できる。専門知識のあるファンが、動作しなくなった古いゲームを移植したり、独自に作ったりすることも不可能ではない。
iPhoneの場合は2024年秋にリリースされるiOS 18から、iPadの場合は同時にリリースされる「iPadOS 18」からゲームモードを利用できるようになる。また、同じく秋に登場する「macOS Sequoia」では、ゲームモードが改善され、新しいゲームタイトルが追加される予定だ。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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