Googleは以前から、場所が分からなくなった「Android」「Wear OS」搭載デバイスを見つける「デバイスを探す」機能を提供している。4月にはこの機能を拡張し、オフラインのデバイスや、Chipoloの「ONE Point」などのBluetoothトラッカーも探せるようにした。
一方、Appleの「探す」ネットワークは「iPhone」「iPad」「Apple Watch」「AirTag」などのApple製品を見つけられるほか、Nomadの「Tracking Card」をはじめとする、この機能に対応する他社のデバイスにも使える。
では、この2024年時点では、この2つの機能のどちらが優れているのだろうか。筆者はそれを確かめるため、ChipoloのONE PointとAirTagを持って、サンフランシスコを訪れた観光客に人気のスポットであるピア39に向かった。その後、米CNETのJohn Kim記者にこれらのデバイスをBluetoothの通信圏外に隠してもらい、「iPhone 14 Pro」の「探す」アプリと、「Pixel 8 Pro」の「デバイスを探す」を使ってそれらを探してみることにした。この記事ではその結果を紹介する。
AppleとGoogleのシステムはどちらも、なくし物を見つける際にクラウドソースネットワーク(iOSやAndroidのスマートフォンやデバイスを、暗号化された接続で相互に繋いだネットワーク)を使用している。これらの機能には、次のようなことができる。
どちらのサービスでもBluetoothトラッカーの設定は非常に簡単で、トラッカーをスマートフォンに近づければポップアップメッセージが表示される。ただしChipoloのONE Pointの場合、Androidで「ファストペアリング」機能のポップアップを表示させるには、最初にONE Pointの本体中央(ボタンになっている)を押す必要がある。
Appleの「探す」ネットワークは、2021年にAirTagの発売に備えて刷新され、他社製品に対応したが、その時からさらに若干進歩している。またGoogleの「デバイスを探す」も、2024年に入ってから、同じように他社のデバイスやトラッカーに対応するようになった。
現時点では、「デバイスを探す」のトラッカーがBluetoothにしか対応していないのに対して、AppleのAirTagはBluetoothと超広帯域無線(UWB)の両方を使用している。UWBは「探す」アプリで正確な場所をピンポイントに特定し、なくし物がある方向と距離を表示するために使われている。
AppleのAirTagには、「手元から離れたときに通知」と呼ばれる警告機能も用意されており、「探す」アプリでこのオプションを有効にしておくと、何かをBluetoothの圏外に忘れてきてしまったときに通知を受け取ることができる。
Appleの「探す」ネットワークを使ってなくし物の場所を特定するためには、その近くにインターネットに接続されたiPhoneかiOSデバイスが1台あればいい。なくし物の近くに「探す」ネットワークに参加するデバイスがあったが、そのデバイスがインターネットに接続されていない場合には、その品物の場所が暗号化されて、iPhoneなどのインターネットに接続されているデバイスにたどり着くまで、「探す」ネットワークに参加しているデバイスの間でその情報が中継される。
一方、Googleの「デバイスを探す」の設定では、デフォルトでは「トラフィックの多いエリアでのみネットワークを使用」の設定が有効になっている。この場合、なくし物の位置を検出するためには、その付近に複数のAndroidデバイスがなければならず、その場合にのみ各デバイスの位置情報から三角測量で計算した中心地点が表示される。
ただし、Androidの「セキュリティ」>「デバイスを探す」>「オフラインのデバイスを探す」の項目で、設定を「すべてのエリアでネットワークを使用」に変更することもできる。この設定を有効にすると、人通りが少ないエリアで他の人がなくし物を探そうとしている際に役に立つ。この場合は、Appleの「探す」機能と同じように、Androidデバイスが付近に1台あれば品物を見つけることができる。Androidの「デバイスを探す」のヘルプページには、「このオプションをオンにすると、トラフィックの多いエリアと少ないエリアの両方で、紛失したアイテムを探すための情報をお互いに提供し合うことができます。紛失したアイテムをできるだけ早く見つけるには、このオプションをオンにすることをおすすめします」と書かれている。
今回の実験では、すべての設定がデフォルトの状態で、何が起こるかを調べてみた。
筆者は、AirTagとChipoloトラッカーをピア39のどこかに一緒に「置き忘れ」たあと、iPhoneとPixel 8 Proでアプリを起動してそれぞれのデバイスをなくし物として設定し、タイマーをスタートした。すると、実験開始からわずか4分45秒後にはAppleの「探す」ネットワークから最初の通知が届いた。また、5分後にも再びAirTagの位置を示す通知が届いた。
そのまま30分まではGoogleの「デバイスを探す」ネットワークでトラッカーが見つかるかどうか待っていたのだが、何の通知も来なかった。ただし、「デバイスを探す」アプリの地図上では、Chipoloタグのおおよその位置を確認することができた。紛らわしいことに、Googleの「デバイスを探す」ネットワークは、おおよその位置を三角測量で特定できたにもかかわらず、トラッカーが発見されたという通知を寄越すことはなかった。
筆者はその後、それぞれのアプリに組み込まれている位置特定ツールを使って、トラッカーを探しに出かけた。Appleの「探す」アプリは、なくしたAirTagに歩いて向かう方向をマップ上に示してくれたため、すぐに歩いてわずか数分の距離であることが分かった。一方、Googleの「探す」アプリは方向は示してくれず、地図上で位置を表示してくれただけだった。
AirTagの方は、Bluetoothの通信圏内に入るとUWBを使って正確な位置を特定するオプションが表示された。この機能を利用したところ、iPhoneをさまざまな方向に動かすことで正しい方向と距離が分かる矢印が画面に表示された。Chipoloトラッカーの場合は、それとは対照的に、画面に図形が表示され、距離が縮まるにつれてその図形が塗りつぶされる面積が広がっていくだけだった。
これらの機能で品物が近くにあることは分かったが、実際にどこにあるかはすぐには分からず、見つけるには音を鳴らす必要があった。AirTagの音はかなり小さかったが、Chipoloの音は、ピア39の喧噪の中でも聞こえるほどの大音量だった。
AirTagはUWBが示してくれる方向のおかげですぐ近くまでたどり着くことができたが、近づいてからトラッカーを実際に見つける上では、Chipoloの大音量がかなり役に立った。
今回の極めて非科学的なテストでは、Appleの「探す」ネットワークの方が、Googleの「デバイスを探す」ネットワークよりもなくし物をずっと早く見つけることができた。ただし、Andoirdデバイスに「デバイスを探す」ネットワークが広がれば状況は改善されるはずだ。特に、「すべてのエリアでネットワークを使用」を選ぶユーザーが増えれば状況は大きく変わるだろう。また、AndroidのトラッカーにUWBを利用する機能が追加されれば、勝敗は互角に近づくと予想される。多くのAndroidスマートフォンには、すでにUWB用のチップが搭載されている。
筆者は、数カ月後にもう一度このテストを行って、Googleの「デバイスを探す」ネットワークがどれくらい改善されるかを調べてみるつもりだ。ネットワークに参加するデバイスが増えれば、結果は変わるかもしれない。
Googleの広報担当者は米CNETに対し、同社のネットワーク上でなくし物の位置情報を特定する速度と精度を、今後数週間のうちに向上させるために取り組んでいると述べた。「デバイスは新しい『デバイスを探す』ネットワークに次々と参加しており、ネットワークの拡大により、紛失した端末の位置情報の特定精度も向上すると期待している。Bluetoothタグの所有者は『デバイスを探す』ネットワークの設定を『すべてのエリアでネットワークを使用』に変更し、トラフィックの少ない場所におけるなくし物の発見能力の向上に協力してほしい」(同担当者)
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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