シャープ一筋44年、沖津新社長が伝えた「3つの言葉」と課長時代の苦い体験

 シャープの社長兼CEOに、6月27日付で就任した新社長の沖津雅浩氏が、7月1日、最初のCEOメッセージを発信した。「今が正念場、共に力を合わせ シャープの真価を発揮しよう」と題し、自らが大切にしている3つの言葉を紹介するとともに、経営方針や新たな事業体制のポイントについて説明した。

  1. シャープ生え抜きの沖津新社長、初のCEOメッセージ
  2. 大切にしてきた「3つの言葉」
  3. シャープの真価が問われる時、乗り越えるには社員の協力が不可欠

シャープ生え抜きの沖津新社長、初のCEOメッセージ

シャープの社長兼CEOに6月27日付で就任した沖津雅浩氏 シャープの社長兼CEOに6月27日付で就任した沖津雅浩氏
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 CEOメッセージは戴正呉氏呉柏勲氏と、2代続いた鴻海出身のCEOが、シャープの社員に対して、自らの考え方を伝えたり、経営の方向性などを示したりするものとして、月1回程度のペースで、社内イントラネットを通じて発信してきた。

 シャープ生え抜きの沖津新社長も、この仕組みを踏襲し、このほど、第1回のCEOメッセージを発信。「私の考え方や問題意識については、今後もこのメッセージなどを通じて伝える。社員は必ず確認してほしい」と述べ、継続的にCEOメッセージを発信する考えを示している。

 CEOメッセージの冒頭に、沖津新社長は、「現在、シャープは、将来の飛躍に向けた大変革の真っ只中にある。こうしたなか、新たに社長兼CEOの重責を担うこととなり、非常に身の引き締まる思いである」と述べた。

大切にしてきた「3つの言葉」

 今回のCEOメッセージでは、「私が大切にする3つの言葉」を紹介した。「1980年にシャープに入社し、白物家電事業を中心に国内および海外でキャリアを積んだあと、2022年の副社長就任を経て、今回、社長兼CEOの責務を担うことになった。44年間、シャープ一筋でやってきた人間であり、シャープという会社を思う強い気持ち、シャープを世界に誇れる会社に成長させたいという気持ちは誰にも負けないと自負している」と述べ、「これまでのキャリアのなかで、先輩から教わり、大切にしているシャープならではの3つの言葉がある。最初のメッセージとして、それを紹介する」と切り出した。

 1つ目は、シャープ創業者である早川徳次氏の創業精神をもとにした「経営理念・経営信条」である。

 「経営理念」はシャープが目指す姿を、「経営信条」は理念を実現するために全社員が堅持すべき信念や考え方を示している。

 沖津新社長は、「この2つを大切にしてこそ、まねされる商品、つまり、他社とは異なる視点で独自の価値を生み出してきた『真のシャープらしさ』を発揮できると考えている。いま一度、経営理念と経営信条に立ち返り、シャープならではの新たな価値創出に邁進してほしい」と、社員に呼びかけた。

 2つ目は、「日々努力 何糞(なにくそ)」という言葉だ。「これは、多くの試練を乗り越えてきた早川創業者の不屈の魂を示した言葉である」と前置きし、「私自身、入社以降、いくつもの困難に直面し、そのたびに、この言葉を心の支えに自らを奮起させ、乗り越えてきた。いままさに、シャープはこの魂を発揮する時である。私自身が先頭に立って、『何糞』の精神で困難に立ち向かっていく」と述べた。

 3つ目の言葉は、「品質第一 私たちの心です」というシャープの品質スローガンだという。

 「私は課長時代、部品の品質問題を起こしてしまったことがある。その際、費用面での損害については解決できたものの、企業として失った信頼を取り戻すには非常に長い時間がかかった経験がある。それ以来、私は品質を第一に考えること、そして、お客様に信頼いただくことが何よりも大切であるという思いを一層強くし、現在も、自身の居室にこのスローガンを掲げている」と、自らの苦い体験を披露した。

 そして、「品質というのは、単に商品に限った話ではない。さまざまな顧客接点において、高い品質の体験を提供し続けることが、シャープのブランドを創る。強いブランド企業“SHARP”の確立に向け、お客様の信頼を、ひとつひとつ積み上げていこう」と語った。

シャープの真価が問われる時、乗り越えるには社員の協力が不可欠

 経営方針および新たな事業推進体制についても説明した。
 シャープの真価が問われる時、乗り越えるには社員の協力が不可欠
 「5月14日に発表した中期経営方針は、私自身、策定に責任を持って携わってきたものであり、早期の具体化に向け、今後も全力をあげて取り組む」と位置づけた。

 また、4~5月にかけて、社員を対象にした意識調査「エンゲージメントサーベイ」を実施したことに触れ、「社員が持っている会社に対するいまの思いを改めて認識した。結果を見ると、経営の根幹に関わる課題も多く、これらの解決に、経営陣が一枚岩となって取り組む」との考えを示した。

 新たな事業推進体制については、「私が社長兼CEOとして、経営の最終責任を担う。また、私自らがブランド事業を担当する」と役割を述べたほか、前社長で現在副会長の呉柏勲氏は、デバイス事業およびアセットライト化などの重要課題を担当することになるとした。

 さらに、6月27日付で、鴻海 董事長の劉揚偉氏がシャープの会長に就任したことにも触れ、「今後は、シャープの企業価値向上に向けたアドバイスや、鴻海との中長期成長に向けた連携強化のサポートなどを行ってもらうことになる」と報告した。

 加えて、「現在のシャープにとって、より公正で、公平、透明なコーポレートガバナンスを構築していくことが非常に重要な経営課題のひとつである。4人の独立社外取締役を新たに選任し、業務執行の監督体制を強化していく」と説明した。

 メッセージの最後に、沖津新社長は、「新たなマネジメントチームは、私を筆頭に、シャープで長年働いてきたメンバーを中心に構成しており、まさに、シャープの真価が問われる。私自身、社長兼CEOとして、先頭に立ち、シャープの経営を強力にリードしていく覚悟である」と抱負を述べながら、「だが、シャープの再生、そして飛躍には、社員一人ひとりの協力が不可欠である。社員全員が、いま一度、ベクトルを合わせ、One SHARPで一致団結し、今後も業績改善に取り組もう。そして、この正念場を乗り越え、シャープを世界に誇れる会社へと成長させていこう」と、One SHARPによる結束を呼び掛けた。

シャープ

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