シャープ、戴会長退任で社員に残したメッセージ--「大きな魚ではなく、早く泳ぐ魚を目指せ」

 シャープ 代表取締役会長の戴正呉氏は、6月23日に開催された株主総会で、同社代表取締役会長を退任するのにあわせて、社内イントラネットを通じて、「会長退任にあたって」と題したメッセージを社員に向けて発信した。午前10時の株主総会が開始される前に、社員に配信されており、シャープ再建に陣頭指揮を振った戴会長による最後のメッセージとなった。

退任するシャープ 代表取締役会長の戴正呉氏。写真は2017年12月の東証一部へ復帰会見時
退任するシャープ 代表取締役会長の戴正呉氏。写真は2017年12月の東証一部へ復帰会見時

 戴会長は「いよいよ、社員の皆さんとお別れをする日がやってきた。この6年間、私と苦楽をともにしてくれて、本当にありがとう。苦しい時も、つらい時も、一緒に歩み続けてくれたことを心からお礼する」と切り出し、「私は、本日付けでシャープの会長を退任し、今後は、堺本社に席を置かず、無報酬で、新経営陣から要請があれば助言を行おうと考えている。本来であれば、日本に行き、社員や株主の前で、直接挨拶をしたいと考えていたが、残念ながら新型コロナウイルスに感染してしまい、現在、病院に隔離されている。会長メッセージという形で最後の挨拶をさせていただく」と記した。

 冒頭、戴会長は、「振り返ると、この6年はあっという間だったが、本当に色々なことがあった」とし、2016年4月2日に堺で共同記者会見を行い、鴻海からシャープへの出資を正式に発表し、その後、独禁法の審査を経て、8月12日に出資が完了したことに触れ、「8月13日に、社長に就任したが、ちょうど日本が夏季休暇中だったため、私はまず上海や南京の拠点を回り、8月20日に一人で日本にやってきた」と振り返った。

 「日本に来る飛行機のなかのことは、いまでもはっきりと覚えている。私はニール・セダカの『one way ticket to THE blues』という歌を聞き続けていた。まさしく、いま、自分は片道切符を持って日本に行くのだ。そして、再生を果たさなければ、二度と台湾には戻らないという強い責任感を持って、飛行機のなかで時を刻み、堺にやってきた」

 シャープでの実質的な初日になった8月21日については、「夏季休暇の最終日であり、日曜日であったが、私は丸一日をかけて、50ページにおよぶ経営基本方針を幹部に説明した。その内容については、多岐にわたり、かつ深いものであったと自負している。出席した幹部も、とても驚いたのではないかと思っている」とした。

 さらに、こんなエピソードも明かした。「あの時は、経営基本方針の徹底に加えて、もう1つの狙いがあった。それは、幹部と直接接し、気持ちや心構えを肌で感じたかったことであった」とし、「あの日、私はとても安心したことをよく覚えている。態度や顔つき、表情を見て、その真剣な眼差し、真摯な姿勢を感じ、『ここにいる皆さんとであればシャープは必ず再生できる』、『皆さんと一緒に歩んでいくことができる』と強く感じた」という。

 その後、戴会長は、早川創業者を心から敬い、「誠意と創意」を旗印にして、ブランドの取り戻したことや「One SHARP」の徹底、「Be Original.」の推進、国内拠点の整備、決裁権限の厳格化、海外子会社の統合、人事制度の抜本的改革、R&Dのプロフィットセンター化、本社費の廃止、寮の新設、ITシステムの効率化、契約の見直し、DBI(Dynabook)やSNDS(シャープNECディスプレイソリューションズ)などのM&A、マスク事業の開始、Eコマースの拡充などの施策を実行してきたことに触れ、「ときには厳しく叱責することもあったと思うが、それもすべて、シャープを良くしたいとの思いでやってきたことである」と述べた。

 また、「2016年3月期には2559億円もの赤字であった会社の業績は、すぐに黒字に転換し、過去に例のないスピードで東証一部復帰も果たせた。SDP(堺ディスプレイプロダクト)も取り戻すことができた。『有言実行』から『有言実現』に、私たちの活動を昇華させることができた」と、自らの経営を総括した。

戴会長が最後に話したかった3つのこと

 今回のメッセージでは、戴会長が示した経営基本方針と、社員に向けた51本のメッセージについて、「これらは、私の長年の経験をベースとした企業経営の基礎となる考え方や、心構えをしたためている。今後のマネジメントの参考にしてほしい」とする一方、「最後に、3点、話したいことがある」とした。

 1点目は、「どんな困難な局面でも逃げてはいけない。諦めてはいけない」ということだ。「私は鴻海時代から、『あなた自身が、物事を面倒だと思った時は、それはやり方が合ってない』、『あなた自身が、物事を困難と思った時は、それは能力が足りない』という中国語の標語を部屋に掲げてきた。何事にも『絶対に諦めない』『積極的に新しいことに取り組む』という姿勢が大事である。まわり道の先に待っているのは行き止まりだけであり、困難から逃げては、苦労は2倍になるだけである。だが、真正面からぶつかれば、誰かの力を借りることができる。つまり、『借力使力』が可能になる。ぜひ、気持ちを強く持って業務にあたってほしい」と語った。

 2点目は、「スピード」である。「Speedという英単語の語源は、成功や繁栄を意味するSpedである。『God speed you!!』という言葉は、『幸運を祈る』という意味に使われる。つまり、『Speed』こそが成功の鍵である」と前置きし、「いま、Beyond 5GやAR/VRの具体化、DXの深化が待ったなしの世の中になっており、時代の変化はますます激しくなっている。私は、社長に就任して以来、『シャープは大きな魚ではなく、早く泳ぐ魚を目指せ』と言い続けてきた。これからも、早く泳ぐ魚であり続けて欲しい」と述べた。

 そして3点目が、「シャープは、日本の宝」であるということだ。「私は心からそう思っている。社員も、自分はそういう会社に勤めているという強い自負心と、シャーププライドを持って、全身全霊で業務にあたったほしい」と述べた。

 最後に、戴会長は、後任であるCEOの呉柏勲(Robert Wu)氏について触れ、「若くしながら、卓越した能力を持った素晴らしい経営者である。彼を中心に新しいシャープや、これから100年先も発展し続ける輝かしいシャープを作っていってほしい」と期待を寄せた。

 その上で、「私自身、これからもシャープを見守っていきたい。また、今後とも何らかのつながりを持てたらと思っている」とし、「最後に、心からの感謝で締めくくらせていただく。長い間、本当にありがとうございました」とメッセージを締めた。

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