パナソニック エレクトリックワークス社は、LED照明による資源循環型のビジネスモデル開発をスタートした。使用しているLED照明の余寿命などを算出し、バックヤードの蛍光灯と交換することで、長期スパンでのCO2削減とコストダウンを目指す。
パナソニックでは、サーキュラーエコノミー型の事業創出にあたり、「ものを長く使う仕組み」「寿命末期を迎えた部品や製品をリサイクルし、工場に素材として戻す仕組み」の2つにポイントを置き取り組んでいるとのこと。
パナソニック エレクトリックワークス社ライティング事業部綜合企画室企画推進課の阿部益巳氏は「資源循環型ビジネスモデルの開発にあたり、環境省の実証実験を活用した。その中で資源循環が目的になり、普及に必要となる経済面の検討が十分になされていないことが環境省、そしてパナソニックの共通課題として浮かび上がった」と現状を話す。
ビジネスモデルの開発にあわせて展開している実証実験では、コープさっぽろ、オリックス環境、日本通運など4社の実証パートナーと6社の協力企業とともに実施。技術開発者、企業、顧客のそれぞれが有益になるような仕組みにしたという。
実証実験は、コープさっぽろの店内などで使用し、寿命が迫るLED照明を、蛍光灯を使用しているバックヤードへと移設しリユースするほか、取り外した蛍光灯は部品や部材に分けリサイクルに回すという流れ。
「照明は店舗改修時に更新するケースが多く、取り外した照明器具は寿命を見ずに廃棄されることもある。一方で発売から約10年が経つLEDだが、市場の約半数は蛍光灯を使っているのが実態。脱炭素の観点からも、LED照明をリユースし、お客様の照明コストを徹底的に抑えること、もう1つは寿命末期を迎えた照明器具を必ず工場に素材として戻すリサイクルを徹底すること、の2点に取り組んだ」(阿部氏)と実証実験のポイントを説明する。
今回の実証実験では、大型店舗の「コープさっぽろ二十四軒店」で使用していたLEDを、蛍光灯を使用している小型店舗の「植物園店」「菊水元町店」「ひばりが丘店」のバックヤードに移設するというもの。
コープさっぽろ二十四軒店は、2016年の店舗建て替え時にLEDを導入。現在約8年が経過している。LEDの適正交換時期は8~10年だが、余寿命診断したところ、2~3年程度は使えることがわかったという。
余寿命診断とは、電力モニターと温度センサーの情報から、累積点灯時間と設定温度に対する温度差を算出するなどして余寿命を求めたもの。今回の実証実験では、継続利用時の故障台数を確認し、リユース検証をしたが、将来的には電源ユニットのコンデンサ電圧のモニタリングによる余寿命診断が有効になるとしている。
「LEDは平均気温25度を想定し設計しているが、二十四軒店のLEDは平均気温15度の屋内で使用されていたため、品質がかなり良かった。そのため通常よりも長寿命化できると判断した」(阿部氏)とし、計3軒の店舗のバックヤードへと移設したという。
LED導入先の店舗では、取り外しに半日、設置に1日半をかけて移設を完了。ひばりヶ丘店の店長である長谷川智宏氏は「照明の数は変えていないが、バックヤードが明るくなり従業員にも好評だ。なかでも野菜や果物をカットする作業場は手元が見えやすくなったと喜ばれている」と感想を話した。
生活協同組合コープさっぽろ 組織本部広報部広報メディアグループグループ長の森ゆかり氏は「蛍光灯を使用していた店舗のバックヤードにLED照明を移設することは、電気代の高騰対策として大変有効な手段だった。今まで使用していた蛍光灯はリサイクルに回し、SDGsに向けた取り組みを拡大していきたい」とした。
コープさっぽろは、パナソニック エレクトリックワークス社が提供する、月額払いの照明サービス「照明の機能提供型サービス」を導入しており、環境先進事業に力を入れている。1店舗あたり、平均で500台の照明器具を採用しており、店頭における照明はすべてLED化済み。バックヤードに蛍光灯を使用している店舗があるという。
パナソニック エレクトリックワークス社では、今回の実証実験を2025年度には事業化したい考え。照明の機能提供型サービスのオプションとしての提案なども検討しているという。
(取材協力:パナソニック エレクトリックワークス社)
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