Googleから発売された499ドル(日本では税込み7万2600円)の新型スマートフォン「Pixel 8a」を使用してみて、筆者は1つの大きな疑問を感じた。200ドル多く払って、699ドル(同11万2900円)の「Pixel 8」を購入する人などいるのだろうか。この2機種の間には顕著な違いがいくつかあるが、Pixel 8aは重要なポイントをすべて押さえており、そのため、「Pixel」ラインアップの中で、より高価なPixel 8の存在意義が薄れてしまっているように感じる。
大手テクノロジー企業各社が人工知能(AI)を搭載した華々しい新機能を製品に詰め込んでいる中で、Pixel 8aは良い意味でシンプルに感じられる。「かこって検索」や「ベストテイク」など、Pixel 8のAIツールや機能を一部受け継いではいるものの、初めて見る機能はなさそうだ。
そして、それは悪いことではない。Pixel 8aが際立っているのは、基本的な機能を比較的手ごろで入手しやすい価格で利用できるからだ。長年にわたってPixelスマートフォンをアップデートし、新機能を追加してきたGoogleの実績を考えると、今後、Pixel 8aにもスマートな機能がさらに追加されるとみていいだろう。Pixel 8aを使用してみて、筆者が一番良いと思った点を絞るのは難しい。なぜなら、重要なのは、どれか1つの特定の改善ではなく、すべての要素がどのようにまとまっているかということだからだ。
セールや割引によってPixel 8を500ドル以下で購入できる場合を除けば、Pixel 8aは、出費を1000ドル以下に抑えたい「Android」ファンにとって、おそらく最良の選択肢だろう。
Pixel 8aとPixel 8には多くの共通点があるが、相違点もかなり多い。Pixel 8aの方がバッテリー容量がわずかに少なく、画面も若干小さい(Pixel 8の6.2インチに対して6.1インチ)。またPixel 8aでは、「バッテリーシェア」(スマートフォンをほかの対応アクセサリーのワイヤレス充電器として使用できる機能)も利用できない。
Pixel 8は、有線充電もPixel 8aより速く、防塵・防水性能もPixel 8aがIP67なのに対し、IP68となっている。屋外で過ごすことが多く、ケースを装着するのが嫌いな人の場合、それらの機能が重要なポイントになるかもしれない。
カメラも異なるが、どちらのモデルも、広角カメラと超広角カメラを背面に搭載している。Pixel 8aのカメラの方が解像度は高いが、ピクセル幅は小さく、レーザー検出オートフォーカスとマクロフォーカスモードも備えていない。また、Pixel 8aでは、サラウンドサウンドのような効果を生み出す空間オーディオも利用できない。
多くの機能が省かれているように聞こえるかもしれない。しかし価格を考えると、これらは納得できる妥協点であり、ほとんどのユーザーにとって違いはないだろう。
Pixel 8aのデザインは、Pixel 8と「Pixel 8 Pro」に非常によく似ている。角を丸くすることで、「Pixel 7a」よりも柔らかい印象に仕上がっている。背面もマット仕上げで高級感があり、光沢のあるPixel 7aやPixel 8と比べて、指紋の汚れも付きにくそうだ。
カラーバリエーションは、「Aloe」(グリーン)「Bay」(ライトブルー)「Obsidian」(ブラック)「Porcelain」(ホワイト)の4種類だ。筆者が使っているのはグリーンのAloeで、これまでのところ、とても気に入っている。少し大胆で明るいミントグリーンのような色合いだ。
ただし、残念な点もある。ストレージを128GBの容量でやりくりしなければならない。いまどきのほとんどのスマートフォンと同様、Pixel 8aも拡張可能なストレージをサポートしていないからだ。この点において、競合するサムスンの399.99ドル(約6万2700円))の「Galaxy A35 5G」はユニークである。同機は、最大1TBの拡張可能なストレージをサポートする数少ない新型デバイスの1つだからだ。
Pixel 8aの画面を囲むベゼルはPixel 8よりも分厚くなっているが、両機種を並べて見比べでもしない限り、ベゼルの厚さについて考えることはないだろう。ただし、日常の使用で気になったり、目立ったりするほど分厚くはなく、Appleの同価格帯(429ドル、日本では税込み6万2800円)の「iPhone SE」の上下のベゼルと比較すると薄い。
Googleによると、Pixel 8aのディスプレイの輝度は2023年に発売されたPixel 7aから向上しているという。Pixel 7aの画面は筆者には屋外では暗く見えたので、それを聞いてうれしくなった。Pixel 8aでも、筆者は屋外で輝度を上げているが、これまでテストしてきたPixelデバイスと比べると、それほど深刻な問題ではないように感じる。
Pixel 8aは基本的にPixel 7aと同じカメラを搭載しており、6400万画素のメインカメラと1300万画素の超広角カメラを備えている。Pixel 8の背面カメラシステムの5000万画素のメインカメラ(1200万画素の超広角カメラも搭載)よりも優れているように聞こえるかもしれないが、解像度がすべてではない。
Pixel 8aのカメラはピクセル幅が小さい。ピクセルが大きいほど、より多くの光を取り込めるため、ピクセル幅の違いが全体的な画質に大きな影響を及ぼすこともある。また、Pixel 8aはレーザーオートフォーカスを備えておらず、マクロフォーカスモードもない。料理を接写した写真の一部で、画像内の特定の部分のシャープさが失われていたのは、おそらく、マクロモードがないからだろう。とはいえ、ほとんどの人にとって、このことはPixel 8aを購入しない理由にはならないはずだ。友人や家族、ペット、休暇の写真を撮影したいだけの人は、Pixel 8aのカメラでも十分すぎるくらいだろう。
全体的に見て、Pixel 8aは色の正確さで優れており、鮮やかな写真が撮れはするものの、筆者が過去にテストしたサムスンのスマートフォンで時々見られたように、鮮やかさが誇張されているようには感じなかった。被写体が花であれ、食べ物であれ、野球の試合や騒がしい街角などの複雑でにぎやかなシーンであれ、写真はリアルで現実に忠実であるように感じられた。とはいえ、このようなスマートフォンで、極めて高精細なズーム写真を撮影できると期待すべきではない。コンサートやお祭りで、遠くから鮮明な写真を撮影できるデバイスがどうしても必要な場合は、専用の望遠カメラを搭載した高価なスマートフォンを購入すべきだろう。
それでも、Pixel 8aにはPixel 8に匹敵する堅牢なカメラシステムが搭載されている。両機種で同じ被写体を撮影した写真を見直したとき、Pixel 8aで撮影した写真はPixel 8で撮影した写真によく似ている、と何度も感じた。
Pixel 8で撮影した画像の方がPixel 8aよりも鮮明で高精細に見えることもあったが、ノートPCやモニターなどの大きな画面で確認しなければ、そうした違いに気づかないことも多かった。両機種のカメラの違いがより顕著だったのは、薄暗い環境やズームインしたときなどの難しい撮影状況においてだ。
下の写真を見れば、筆者の言っていることが分かってもらえるだろう。どちらの写真も、Pixel 8の方がPixel 8aよりもわずかにシャープな写りになっている。
しかし、Pixel 8aとGalaxy A35 5Gの画質には、本体の価格が100ドル(約1万5700円)しか違わないにもかかわらず、大きな差がある。基本的に、ほとんどのケースで、Pixel 8aの方が色がより正確で、被写体に当たる光もより均一だった。例えば、筆者が飼っている猫を撮影した下の写真では、Galaxy A35よりもPixel 8aの方が毛の色をより正確にとらえている。
結論を言うと、Pixel 8aのカメラは、ほとんどの人にとって十分な性能を備えている。この価格のスマートフォンにしては、なおさらだ。Pixel 8を購入すればカメラの性能も上がるが、価格の差に納得できるほどの大きな差はない。
おまけとして、Pixel 8aで撮影した筆者お気に入りの1枚を掲載しておこう。街灯は少しにじんでいるが、暗く曇った夜空と照明で照らされた道路のコントラストが目を引く。
Pixel 8aは、ベストテイク、「編集マジック」「音声消しゴムマジック」など、Pixel 8に搭載されているAIを利用した写真や動画の編集機能も一部継承している。ベストテイクと編集マジック(前者は複数の画像を連続で撮影した後、被写体の表情を変更する機能で、後者は写真内のオブジェクトを削除したり操作したりできる機能)はPixel 8と同じように機能する。サムスンのAI編集機能は、Galaxy A35 5Gにはまだ搭載されていないが、将来的にソフトウェアアップデートを通して提供されたとしても、筆者は驚かないだろう。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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