パナソニック ホールディングは5月9日、2023年度の決算概要を発表した。売上高は、くらし事業、インダストリー、エナジーが減収となったが、オートモーティブ、コネクトの販売増と為替換算により、前年比101%の8兆4964億円で、増収。調整後営業利益は、くらし事業、オートモーティブ、コネクトの増益にIRA補助金が加わり、前年比124%、3900億円の増益となった。IRA補助金を除くベースでの調整後営業利益は減益となる。純利益はパナソニック液晶ディスプレイの解散に伴う一時益の計上により、前年比167%の4440億円となり、過去最高となった。
パナソニックホールディングス 代表取締役副社長執行役員グループCFOの梅田博和氏は「当期純利益は2018年度の2841億円以来、過去最高の値となった。これにはIRAの補助金とパナソニック液晶ディスプレイの解散など、一時的な要因も含まれており、過去最高値を更新したという高揚感はない。将来、営業キャッシュフローで返ってくるものであり、冷静にとらえている。しっかりと見留めていきたい」と慎重な姿勢を見せた。
自動車生産が緩やかな回復基調に転じたオートモーティブと、アビオニクス、現場ソリューションとブルーヨンダーの増販となったコネクトが業績を牽引したが、成長領域と位置づける空質空調の欧州の「Air to Water(A2W)」が厳しい市況となったほか、中国市況低迷や半導体商流変更などの影響を受けたインダストリーが減収となった。
調整後営業利益では、インダストリーが市況低迷の影響による減販損、品種構成悪化により減益となったが、くらし事業、オートモーティブ、コネクトが増益となった。
2024年度の業績見通しでは、売上高が前年比101%の8兆6000億円、調整後営業利益が同115%の4500億円、営業利益が105%の3800億円と前年を上回り、増収増益。当期純利益は、パナソニック液晶ディスプレイの解散に伴う一時益の反動により、同70%の3100億円とした。
パナソニックでは、車載電池、サプライチェーンマネジメントソフトウェア、空質空調を成長領域と位置づける。この1つである空室空調の「A2W(Air to Water)」については「需要自体は2023年度に4割程度。そこからの増販というのは見ていない。2024年度は、前年ほどの大きな下落はないと見ており微増と予想している」(梅田氏)とコメント。
車載電池については「成長スピードが鈍化していることはご承知の通り。ただし、中長期的に見て必ず伸びていく分野だと思っている。EVについては全体の需要の増減では語れなくなってきていると認識しており、IRA補助金や重要鉱物を含む原材料への制約など、地域別に見ていかなければならない」(梅田氏)とした。
中期経営指標(KGI)で、累積営業キャッシュフロー2兆円の目標を掲げているが「2023年度時点で累計約1兆4000億円の実績を達成し、残りは6000億円強。目標達成が視野に入ってきた。これによりキャッシュフロー重視の経営が根付いたものと認識している。一方で2023年度の目標10%をクリアしたROEは、2024年度の見通しが7%と未達の予想。累積営業利益については、約1兆円となりこちらも未達の見通し。事業ごとに見れば、想定外の市況悪化など外的要因はあるものの、KGIの未達はこれまで取り組んできた競争力の強化が道半ばであることの現れ。推進スピードや環境変化への対応力において課題があったと認識している」(梅田氏)とした。
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