国民生活センターから、保護者からの子どものゲームにおける無断課金に関する相談が増えていると発表があった。
契約当事者が小学生・中学生・高校生のオンラインゲームに関する2022年度の相談件数は4024件で、契約購入金額の平均は約33万円と高額となっている。特にスマートフォンやタブレット端末による小中学生の無断課金に対する相談が目立つという。
どういう場面で子どものオンラインゲームの無断課金が生じるのか。対策までをご紹介したい。
相談事例には、驚くようなものが寄せられている。
たとえば、小学生の息子に母親の古いスマホを自宅のWi-Fiにつなげて使用させていた事例だ。課金には母親の指紋認証が必要な設定にしていたものの、母親のアカウントにログインした状態だったため、息子が自分の指紋を追加登録し、約5万円をゲームに課金してしまったというものだ。
子どもの課金したい欲求を甘く見てはいけない。生まれた頃からスマホやタブレットを使っている世代であり、検索などで情報を得ることもできる。「自分の指紋を登録すれば自由に課金できる」というくらい、すぐに思いついて実行できてしまうと考えるべきなのだ。
そのほか、母親名義で契約、中学生の息子を利用者に登録したスマホを息子に使用させていたところ、5カ月の間にキャリア決済で約5万円をゲームに課金してしまったという事例もある。
中学生の息子が自分のスマホで1年前から総額約55万円をゲームに課金していた事例では、数年前に母親がゲーム課金以外の目的で息子のスマホにクレジットカード番号を入力したことがあり、そのクレジットカード番号で課金していた。
どちらも気づくのに時間がかかりすぎている。無断課金もすぐに気付けば被害は少額で抑えられるし、子どもにも「悪いことをすればすぐにバレてしまう」と教えることもできる。できるだけ早く気付けることも重要なのだ。
未成年の保護者の同意を得ない課金などは、未成年者の契約取消権によって、原則取り消すことができる。ただし、運営事業者に対して個別に交渉する必要があり、手間と時間がかなりかかる。
しかも、保護者のクレジットカードや保護者のアカウントで購入した場合、保護者の同意を得ているとみなされることがある。また、購入場面で「保護者の同意を得ていますか」「成人ですか」などの問いに対して、「同意を得ている」「成人である」などの嘘の回答をしていた場合も同様だ。
事業者によって対応は異なり、必ずしも返金されるとは限らない。子どもの無断課金はできる限り防ぐべきであり、あらかじめ対策しておくことが重要というわけだ。
保護者のアカウントにログインした状態の端末を利用させる、古いスマホを保護者のアカウントにログインした状態で渡すなどはやめるべきだ。子ども専用端末でも、子どものアカウントを用意し、ペアレンタルコントロール機能で課金を制限しなければ、やはり課金はできてしまう。「このくらいなら大丈夫だろう」という保護者の思い込みで利用させると、思わぬ無断課金につながってしまうのだ。
具体的な対策は、以下の通りだ。
クレジットカードを紐づけた「App Store」のアカウントや「ニンテンドーアカウント」などからはログオフしておくこと。ログインした状態で利用させると、無断での高額課金につながりやすくなる。
スマホ決済やキャリア決済の際には、必ず毎回パスワード入力、あるいは顔認証や指紋認証が必要な設定にしておこう。パスワードは子どもには教えず、推測できないものにしておく必要がある。キャリア決済の上限額も、念のため引き下げておくと安心だろう。
子どものアカウントを作成し、ペアレンタルコントロール機能で課金を制限した端末を使わせるのもおすすめだ。
前提として、保護者のクレジットカードや現金はしっかりと管理し、カードの利用明細書やアプリストアの領収メールも必ず確認する習慣をつけよう。万一無断で課金された場合にも、できるだけ早く気づけるようにしておくことが大切だ。
子どもに利用させるゲームやアプリは、課金方法についてよく調べてから利用させよう。同時に、子どもとは、あらかじめ課金の有無や上限金額について話し合い、ルールを決めておこう。
ただし、ゲームは課金したくなるようにできているため、利用し始めてからも随時ルールの見直しが必要だ。課金したくなったら相談してもらうようにしておくことで、少なくとも無断の高額課金は防げるはずだ。子どもが相談してきたら、子どもの気持ちに寄り添い、少なくとも気持ちは受け止めてあげ、一度限りの課金なども検討してはいかがだろうか。
それでも無断の高額課金などのトラブルが起きてしまったら、消費者ホットライン(#188)に相談したり、運営事業者に相談するようにしてほしい。
子どものゲームへの無断課金、高額課金は毎年問題となっていることだ。しかし、保護者があらかじめ対策し、ルールを決めて見守ることで防げるトラブルなので、この機会にぜひ対策していただければ幸いだ。
高橋暁子
ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。SNS、10代のネット利用、情報モラルリテラシーが専門。スマホやインターネット関連の事件やトラブル、ICT教育に詳しい。執筆・講演・メディア出演・監修などを手掛ける。教育出版中学国語教科書にコラム 掲載中。元小学校教員。
公式サイト:https://www.akiakatsuki.com/
Twitter:@akiakatsuki
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
「程よく明るい」照明がオフィスにもたらす
業務生産性の向上への意外な効果
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」