「課金代行」という言葉を聞いたことがあるだろうか。「X」(旧Twitter)などには代行業者が多数おり、5000円出せば1万円分の課金ができるなど、格安に課金が楽しめるとうたっている。中には、高評価がついた販売事業者もいる。“からくり”はどうなっているのか。課金代行のリスクについて解説したい。
「課金代行」で検索すると、「課金代行の販売・買取」「課金代行/荒野行動」「課金代行/Sky星を紡ぐ子どもたち」など、さまざまなRMT(リアルマネートレード)サイトで販売されている。
Xでは、「副業でお金稼ぎたい人いる?スマホをポチポチするだけで3万円稼ぐ方法教えます。副収入がほしい人、私のTwitterを見てね。#課金代行」などの投稿が多数見つかる状態だ。しかし、数多く見つかるからと言って、安心な訳ではない。
「お金がないけれどどうしてもランカー(ランキング上位者)を維持したかった。課金代行というサービスをXで知って、10万円出せば20万円分の課金ができるから得だと思って課金したのに、いきなり運営から通知がきて、垢バンされた」。あるゲームのユーザーは頭を抱える。
運営会社からの通知は、「運営事務局が対応していない、ジュエル(ゲーム内通貨)の購入取り消しが続いたため、ジュエル購入の利用制限を実施しました」というものだった。そのユーザーのアカウントは停止処分となり、現在も復活できていない。「これまで給料の大半を課金して育ててきたのに垢バンされて、もうどうすればいいのかわからない」
課金代行業者の中には評価が高い者もおり、感謝の言葉が並ぶ高評価コメントがついているものも。なぜこれほど多く取引されているにも関わらず、アカウント停止処分につながってしまったのだろうか。
考えればわかることだが、課金額よりも多額の課金ができる仕組みの代行をしても、代行業者は手数料が得られず、まったく儲からないはずだ。しかしこれが成り立っているのには、当然からくりがある。
多くの場合、課金代行は盗難されたクレジットカードを使って行われている。課金代行として販売し、代わりに盗難クレジットカードで課金することで、販売者は安全に現金を得ることができる。つまり、マネーロンダリングが行われていることになる。
販売業者が高評価なのも、販売後すぐにアカウント停止となるわけではないためだろう。ゲーム会社に連絡がいくのは、クレジットカードが盗難・不正利用されたことに気づいた持ち主からの連絡でカードがストップされてからのこと。ゲーム会社は、不正利用したアカウントを停止処分にするが、その頃には販売業者はアカウントを消したり、連絡が取れなくなったりしていると考えられる。
あるクレジットカードを不正利用された男性は、「履歴を確認したところ、自分のクレジットカードでゲームの不正課金が何回も何回も行われていた。それこそ課金代行に使われたのかもしれないと思った」という。課金代行詐欺が蔓延している証とも言えるかもしれない。
「課金代行」は、完全なる詐欺だ。そもそも課金をリスクなく安くできることなどあるわけはなく、そんなビジネスは成り立たない。手を出してもメリットは何もなく、アカウントも失い、犯罪の片棒を担がされてしまうだけだ。魅力を感じても、けして手を出さないようにしてほしい。
レベル上げ代行やアカウント売買などもSNSで多くされており、RMT専用サイトもあるので誤解している人もいるかもしれないが、代行は規約で禁止しているゲームは多く、RMTも禁止されている。どちらもゲームバランスを崩す行為であり、ゲーム会社や他のユーザーに迷惑をかける行為でもある。たとえ違法ではなくとも、判明した時点でアカウント停止処分になると考えた方がいい。ゲームの代行行為は違法ではなくとも、手は出さないのが賢明だろう。
次々に新しい詐欺は生まれている。うますぎる話は検索して評判を調べたり、相談機関などに相談したりすることで、被害は未然に防げるだろう。同時に、新しい詐欺情報をニュースなどで積極的にとることでリテラシーを高めていくことも大切だ。
高橋暁子
ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。SNS、10代のネット利用、情報モラルリテラシーが専門。スマホやインターネット関連の事件やトラブル、ICT教育に詳しい。執筆・講演・メディア出演・監修などを手掛ける。教育出版中学国語教科書にコラム 掲載中。元小学校教員。
公式サイト:https://www.akiakatsuki.com/
Twitter:@akiakatsuki
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