ASUSの「Zenfone 11 Ultra」が米CNETのオフィスに到着したとき、筆者は早く試したくてたまらなくなった。1月にテストした同社のゲーミングスマートフォン「ROG Phone 8 Pro」をすっかり気に入っていたからだ。Zenfone 11 Ultraのデザインが部分的にROG Phone 8 Proからインスピレーションを得ていることは明白である。しかし、幸いにも、価格についてはそうではない。Zenfone 11 Ultraの価格は899.99ドル(約13万4300円)からと、無印の「ROG Phone 8」よりも100ドル安くなっている。
残念なことに、リリース前のソフトウェアを搭載したレビュー機をテストした1週間の間に、スマートフォンのデータが何度も破損したため、公正なレビューができなくなってしまった。とりあえず今回は、「ROG」スマートフォンシリーズとの共通点によってZenfone 11 Ultraが受けているさまざまな恩恵について、詳しく解説していく。
どちらの機種もプロセッサーはQualcommの「Snapdragon 8 Gen 3」で、大型の6.78インチディスプレイ、長時間持続する5500mAhのバッテリー、65Wの有線充電機能、15Wのワイヤレス充電機能、高音質のスピーカー、ヘッドホンジャックを搭載している。また、カメラシステムも似ており、5000万画素のメインカメラ、1300万画素の超広角カメラ、3200万画素の3倍望遠カメラを搭載している。
こうした機能はどれも、連休でワシントンDCに旅行に行ったときに役に立った。明るくて大きなディスプレイは、「Dead Cells」というゲームをプレイするのにぴったりだったし、「オーディオウィザード」機能にワイヤレスイヤホンの「Beats Studio Buds」を組み合わせて使用することで、機内で叫ぶ子供たちの声を遮断することもできた。ラガーディア空港に新たにオープンしたチェイスサファイアラウンジを初めて訪れたときは、Zenfone 11 Ultraで何枚も写真を撮影した。Zenfone 11 Ultraは使っていて楽しいスマートフォンだと感じた。
Zenfoneでは、メジャーソフトウェアアップデートは2年間、セキュリティアップデートは4年間しか提供されないというのは、残念なことだ。Googleやサムスン、OnePlusが同価格帯のスマートフォンで提供しているサポート期間と比較すると、あまりにも短い。
Zenfone 11 Ultraは米国では現在予約受付中で、早期予約者向けの特典として、現地時間4月14日まで、99.99ドル(約1万4900円)のワイヤレスヘッドホンが付いてくる。ただし、購入を検討している人には、ASUSがソフトウェアの問題点を解決するまで待つことをお薦めする。先ほども述べたが、この点は本当に残念だ。ソフトウェアの問題さえなければ、Zenfone 11 UltraはサムスンやGoogle、OnePlusの競合機種に対抗できる可能性を秘めているからだ。
Zenfone 11 Ultraは「Zenfone 10」よりも縦長だが、それ以外は、ROG Phone 8とデザインの面で同じ部分が多く、本体背面の右上には同様のカメラバンプがあり、上部と下部にはデュアルスピーカー、底面にはUSB-Cポートとヘッドホンジャックが付いている。
ROG Phone 8の背面は黒い色合いで、LEDライトが搭載されているのに対し、Zenfone 11 Ultraの背面には三角形の模様の装飾が施されており、カラーバリエーションも、スカイラインブルー、エターナルブラック、デザートサンド、ミスティグレー(レビュー機はこの色だった)の4種類が用意されている。
Zenfone 11 Ultraの大型ディスプレイは、晴れた日の屋外でも、ブルックリンの暗いバーでも、明るくて視認性が高い。デフォルトでは、1~120Hzの可変リフレッシュレートに設定されているが、常に120Hzで動作するように設定した場合でも、バッテリーは余裕をもって丸1日持続した。
ZenfoneにはROGシリーズと異なる点もある。11 Ultraのリフレッシュレートは144Hzまで達することができるが、このリフレッシュレートはゲームでしか使用できない。ROG Phone 8 Proでは、165Hzを常に使用することが可能で、動きもこちらのほうが滑らかに見えた。とはいえ、ゲーム以外のほとんどの操作では、120Hzと144Hzの違いに気づくことはなかった。どれも、非常に滑らかに表示される。
画面が大きい分、Zenfone 11 Ultraは映画やテレビ番組のストリーミングに最適だ。動画の端をほとんど切り取らずに画面いっぱいに表示するクイックズーム機能があるので、この画面は劇場用の横長のアスペクト比で撮影された動画に特に適していると感じた。
6.78インチの画面は、「Galaxy S24+」や「Google Pixel 8 Pro」の6.7インチディスプレイよりも大きく、「OnePlus 12」の6.82インチディスプレイや「Galaxy S24 Ultra」の6.8インチディスプレイよりもわずかに小さい。
5500mAhのバッテリーは、最も酷使した日でも、次の充電まで1日半持続した。午前8時から午前0時まで使用した日には、画面使用時間が5時間31分に達し、バッテリーは100%から31%まで減った。Zenfone 11 Ultraは、65Wの急速充電と15Wのワイヤレス充電をサポートしている。ほかの新しいAndroidスマートフォンと同様、11 Ultraも、磁気アタッチメントをサポートする「Qi2」充電規格には対応していない。ASUSによると、アクセサリーを提供するパートナー企業の一部が磁気アクセサリーを取り付けるためのケースを製造しているところだという。
Zenfone 11 UltraはAndroid 14を搭載しており、ROG Phone 8と同様、好みに応じてASUSのカスタマイズ設定の多くを有効または無効にできる。ASUSのオプションをすべて有効にしても、純粋なAndroidの使用感とそれほど変わらないと感じた。最大の違いは、通知プルダウンを分割できるオプションだ。このオプションを使用すると、画面左上のプルダウンに通知が配置され、画面右上のプルダウンにコントロールセンターのトグルが配置されるようになる。言い換えると、「iPhone」の「iOS 17」のような配置だ。
Zenfone 11 Ultraは、ROGシリーズのスマートフォンではないが、ゲーム専用の設定を切り替えるための「Game Genie」オーバーレイが搭載されている。それらの設定には、より高度なパフォーマンスモードや、先述した144Hzのリフレッシュレート、マクロのセットアップ、ゲームプレイ中のアラートのブロックなどがある。
ASUSのオーディオウィザードは、Zenfone 11 Ultraで音楽を再生するときの筆者お気に入りのオプションとなっている。「Dirac Audio」設定を使用すると、低音部にはっきりとしたパンチが追加されるからだ。筆者は「ダイナミック」設定をオンのままにしておくことが多いが、音楽や映画、ゲーム用により繊細な設定も用意されている。もっとカスタマイズしたい場合は、イコライザー設定をさらに細かく調整することもできる。Zenfone 11 Ultraでの音楽の再生方法を問わず、これらの設定は非常に効果的であると感じた。
「Apple Music」や「Tidal」といったロスレスオーディオや空間オーディオをサポートする音楽サービスを使用している人は、ヘッドホンジャックを使用して、Bluetoothによって圧縮されない形式で音楽を簡単に楽しむことができる。こうした設定やオプションがあるおかげで、Zenfone 11 Ultraはおそらく、有線か無線かに関係なく好みのオーディオ機器を接続できる最高のフラッグシップスマートフォンに入るのではないだろうか。
こうした機能すべてを動かしているのが、Snapdragon 8 Gen 3プロセッサーだ。米CNETのベンチマークによるパフォーマンステストを見ると、2024年に入ってテストしたスマートフォンの中でも、Zenfone 11 Ultraは特に強力であることが分かった。「Geekbench 6」のCPUスコアは、同じプロセッサーを搭載するサムスンの「Galaxy S24」シリーズと肩を並べる。ところが、極めて要求水準の高いグラフィックステストである「3DMark Wild Life Extreme」を使ったゲーミングテストでは、Galaxyシリーズをしのぎ、同じASUSのROG Phone 8 Proとほぼ同等の結果を残したのである。Zenfone 11 Ultraの内部には、それより高価なROGゲーミングスマートフォンに等しい多くの性能が隠されていることが、大きく裏付けられた。
ASUS Zenfone 11 Ultra | ASUS ROG Phone 8 Pro | サムスンGalaxy S24+ | Google Pixel 8 Pro | |
---|---|---|---|---|
スコア | 5219 | 5195 | 4808 | 2388 |
fps | 31.25 | 31.09 | 28.79 | 14.3 |
人工知能(AI)に関しては、サムスンとGoogleのどちらと比べても、Zenfone 11 Ultraのアプローチは控えめだ。音声通話に、AIを使ったノイズキャンセリング機能「AI Noise Cancellation」を採用しており、これが通常の電話でも、「WhatsApp」などのアプリの音声通話でも機能する。地下鉄電車が地上区間の頭上を走り抜ける高架下で何回か電話を受けてみたところ、通話中の雑音が完全に除去されたわけではないものの、低減効果は確かだった。
Zenfone 11 Ultraは、セマンティック検索も搭載しているので、アプリや設定、写真などを検索するときに一般的な検索より柔軟な検索語を指定することができる。例えば、スマートフォンのスクリーンを使っていた時間を知りたい場合、その機能が「Digital Wellbeing」設定にあることを覚えていなくても、「screen time」と入力すれば、正しい設定画面が、他の検索候補と並んで表示される。
現在ベータ段階のAI機能もいろいろと採用されている。限られた数のプロンプトに基づいて、ごく一般的な背景画像を生成する「AI Wallpaper」もその1つだ。プロンプトの数が限られているため、ほかのAI画像生成機能を使うときのように「ライオンと魔女と衣装だんすを融合して」といったフレーズを入力して、恐ろしい画像が生成されたりすることはない。翻訳機能の「AI Call Translator」もあるが、現在は中国語に固定されているようで、試すことはできなかった。また、録音アプリでリアルタイムに文字起こしする「AI Transcript」という機能があるのはすばらしいが、これはスマートフォンで目新しい機能というわけではない。例えば、GoogleのPixelに搭載された「レコーダー」アプリでは、2年前からオフラインでリアルタイムの文字起こしが用意されている。
Zenfone 11 Ultraのカメラ機能は、なかなか優秀だ。
週末旅行で、まずラガーディア空港のチェイスサファイアラウンジを訪れ、フロア中を慌ただしく巡りながらZenfone 11 Ultraで写真を撮ってみた。最も印象的だったのは料理の写真だ。卵を使った4種類の料理の写真は、実物と同じように見事な質感に仕上がっている。
バージニア州のモール、タイソンズコーナーセンターに行った日は、あいにく雨になってしまったものの、そこで撮影した写真ではエントランスプラザの色も、雨に濡れて艶の出た周囲の質感も忠実に再現された。筆者の自撮り写真を見ると、くったりした髪のディテールがよく出ている。
ASUSが、Zenfone 11 Ultraで動画の手ぶれ補正に力を入れたことも明らかだ。配車サービス「Lyft」で呼んだ車はかなり揺れたが、その車窓から撮影した動画には、通り過ぎる町並みが比較的安定して写っている。この動画のフレーム左下をよく見ると、実際には車がかなり揺れていたのが分かるだろう。デフォルトでは、「Adaptive」という設定が使われており、本体が揺れている度合いに応じて画角を狭めたり広げたりするのである。画角を常に内側に絞った状態にしてこの効果を一貫して適用する、「Super HyperSteady EIS」という機能もオンにすることができる。
Zenfone 11 Ultraと、999ドルから(日本では15万9900円から)のPixel 8 Proを比較するため、ナイトモードでも撮影してみた。ブルックリンにあるバーのHouse of Waxと、米CNETのニューヨークのポッドキャストスタジオ、その2カ所の暗い環境を使っている。ほとんどのケースで、Zenfone 11 UltraとPixel 8 Proの結果は似たようなものだった。
バーで撮影した写真では、Zenfone 11 Ultraが暗い室内隅のぼやけた部分を滑らかに処理していることが分かる。だが、スタジオで撮った写真ではPixel 8 Proに軍配が上がった。レンガの壁も、「iMac」と隣のスタジオから漏れる光だけに照らされた観葉植物も、描写力が高かった。
下に載せたのは、米CNETの草に覆われた壁を撮った写真だ。Zenfone 11 Ultra、ROG Phone 8 Pro、Pixel 8 Proの3枚とも互角の結果になった。
ASUSのZenfone 11 Ultraは、大型サイズの筐体に新しい仕様が詰め込まれ、ポータブルなエンターテインメントセンターとして際立っている。要求の高いゲームも楽々と処理できるプロセッサー、聴き方を問わず見事な音質で音楽を再生するオーディオ機能、映画やウェブブラウジングに適した明るい大画面などの採用で、スマートフォンを主に小型のテレビとして使うユーザーに訴求するはずだ。
だが、価格を考えると、ソフトウェアとセキュリティのアップデート保証期間が短い点を無視するわけにはいかない。動画や音楽のストリーミング再生に優れたスマートフォンを探していて、写真や動画の撮影に申し分ないカメラ機能も重視しており、3~4年で買い換えを視野に入れてもいいのであれば、Zenfone 11 Ultraは魅力的な選択肢になりそうだ。
一方、次のスマートフォンは完全に壊れるまで使い倒したいというのであれば、2031年までソフトウェアがサポートされる、優れたAndroidスマートフォンがサムスンやGoogleからたくさん出ている。また、AI機能を求めている場合も、その方面に力を注いでいるように思われるのは、やはりGoogleとサムスンだ。もっとも、われわれがスマートフォン上でAIに厳密に何を求めるのかは、まだ模索している段階なのだが。
それでも、忘れてはならない点が1つある。現行モデルで、ヘッドホンジャックを搭載するフラッグシップモデルとしては、おそらく唯一の存在ということだ。その点だけでも、注目に値するかもしれない。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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