2月26日からスペイン・バルセロナで開催されている、世界最大の携帯電話の見本市イベント「MWC Barcelona 2024」に、KDDIが初出展。国内の携帯電話会社としてはNTTドコモ、楽天モバイルに続いての本格出展となる。
KDDIが今回のMWC Barcelonaのブース内で展示している要素は大きく5つある。1つは「デジタルツインとAI」であり、KDDIのメタバース関連サービス「αU」にグーグルの生成AIモデル「Gemini Proモデル」を取り入れたさまざまな取り組みを紹介している。
具体的には、実店舗をデジタルツイン技術でデジタル空間上に再現できるEコマースサービス「αU place」との連携により、AIを活用した接客の実現や、服の画像1枚から試着イメージを生成して自身が服を着た時のイメージを再現できる仕組みなどを紹介。また、2023年にプロトタイプを公開した、生成AIマスコット「Ubicot」に関しても、Gemini Proモデルの言語処理を用いて対話ができるデモなどを披露している。
2つ目は「コミュニティ×通信」の取り組みで、KDDIの通信サービス「povo 2.0」の基盤をオープン化して他のアプリから活用できる仕組みを用意し、それを国内外に展開する取り組みを披露した。
その具体例として示されたのが、povo 2.0が主なターゲットとしているZ世代が積極的に取り組むとされる“推し活”のコミュニティと、povo 2.0の基盤をかけ合わせたプラットフォームの展開だ。
実際に、既に国内では、ライブ配信サービス「SHOWROOM」とpovo 2.0が連携し、SHOWROOMからpovo 2.0のデータトッピングを直接購入できる仕組みを提供しているとのこと。現在はトッピングを直接購入するのみだが、今後はSHOWROOMのギフトなどで購入できる方法なども検討しているそうで、対象とするコミュニティの幅を広げながら、仕組みを海外の携帯電話事業者に提供することなども考えているとのことだ。
3つ目が「APIを介したビジネス協業」であり、povo 2.0の事例のように携帯電話の通信や認証、課金などの仕組みをAPIとして外部の企業に提供することにより、企業が迅速にサービス提供できる仕組みとなる。
KDDIは業界団体のGSMAが立ち上げた共通APIの構築に向けた「GSMA Open Gateway」構想に初期メンバーとして参画しており、APIを介して異業種の企業のビジネス創出を進めていきたいとしている。
その具体的な事例として挙げられていたのが、1つに京都パープルサンガと共同で取り組んでいるARゲームを活用したギフティングの実証実験であり、APIを活用したゲームコンテンツの提供などを実現しているとのことだ。
そしてもう1つが、ソニーと共同で取り組んでいる放送・メディア業界のDX推進に向けた取り組みである。これはソニー製の放送機器と、5Gに対応したポータブルデータトランスミッターを活用し、APIの活用により5Gの実力をフルに発揮できるスタンドアロン(SA)運用下で、ネットワークスライシングによる安定的なワイヤレス中継を実現できるようにしていくとのことだ。
4つ目は「モビリティ」で、KDDIの通信技術やプラットフォームを活用してコネクテッドカーやドローンの高度化を進めていくとのこと。同日に発表がなされた、ソニー・ホンダモビリティとのコネクテッドビジネス推進に向けた協業の取り組み内容のほか、KDDIらが開発している「水空合体ドローン」などを展示している。
そしてもう1つ、ある意味で最大のアピールポイントとなっていたのが「ネットワーク基盤」に関する取り組みであり、中でも大きな注目を集めているのが、KDDIがここ最近力を入れている、Space Exploration Technologies(スペースX)の衛星群「Starlink」を活用した通信サービスである。
そうしたことからイベントの初日となる2月26日には、KDDIの執行役員 事業創造本部長である松田浩路氏と、スペースXのVice President Starlink Enterprise Salesであるジェイソン・フリッチュ氏、そしてKDDIと同じくスペースXと提携し、スマートフォンと衛星との直接通信の実現を打ち出しているT-MobileのVice President Business Developmentであるジェフ・ジアール氏による対談イベントを実施。Starlinkの活用と、2024年内の実現を予定しているスマートフォンと衛星との直接通信に関して議論が交わされた。
松田氏はまず、KDDIがこれまでStarlinkを活用して取り組んできた事例を披露。基地局のバックホール回線としての活用や、音楽フェスなどでのWi-Fiスポットとしての活用に加え、能登半島地震でスペースXの協力を得て、ネットワーク復旧や被災者支援などのため350のStarlinkのキットを迅速に提供してきたことなどを紹介している。
それを受ける形でジェフ氏も、T-Mobileではハリケーンや洪水など自然災害からの復旧に加え、インターネットのない学校へのeラーニング導入に向けてStarlinkを活用している事例などを披露。Starlinkの活用が幅広い形で進められている様子を示した。
一方のジェイソン氏は、スペースXの仕事が「モバイルのデッドスポットをなくすこと」だと説明。ロケットの打ち上げ技術を持ち迅速な衛星の打ち上げが可能なことから、スマートフォンと直接通信できる衛星の打ち上げを積極的に進め、よりシームレスな通信体験を実現したいとしている。
ただ、衛星とスマートフォンとがLTEで直接通信するためには、あくまでLTEの仕様を満たす必要があり、衛星との距離によって発生する遅延を抑えるなどの課題が存在していたとのこと。スペースXではそれら課題を解決するため、独自にカスタイマイズしたシリコンを開発するなどさまざまな技術を投入して課題解決を進めてきたという。
一方で、携帯電話の周波数帯を用いて衛星と通信するには、電波干渉などの問題を解決していく必要がある。そうしたことからスペースXでは、干渉などの問題が生じないようにするため世界各国のモバイル通信事業者と協力し、検証や対策を進めているとのこと。ジェイソン氏は地上の携帯電話と同じ周波数帯を使うことが最も正しいアプローチだとし、最後に残る干渉の問題をクリアするためのチャレンジを続けるとしている。
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