折りたたみスマートフォンを求めているサムスンのファンには、4年前から2つの選択肢が提供されてきた。開くとほぼタブレットサイズになる「Galaxy Z Fold」と、クラムシェル型の「Galaxy Z Flip」だ。その形態は2024年になっても変わっていないが、サムスンのGalaxy Z Foldは、独自の製品シリーズへと発展し、スマートフォンとタブレットの体験を組み合わせたデバイスを、メインストリームのユーザーに近づける可能性がある。
XでRevegnusというアカウント名で知られるリーカーによると、サムスンは華為技術(ファーウェイ)に対抗して、新しい3つ折りデバイスを開発中であるという。また、それよりも前に韓国のニュースサイトETNewsが報じたところによると、サムスンは2024年、Galaxy Z Foldの標準モデルに加えて、廉価モデルもリリースする可能性があるという。この2つの報道についてサムスンに問い合わせてみたが、同社からコメントは得られなかった。
これらのリーク情報を合わせて考えると、Galaxy Z Foldは「Galaxy S」シリーズのような独自のデバイスファミリーへと進化する可能性がある。そうなれば、サムスンが折りたたみスマートフォンを新たな常識として確立する取り組みを強化していることを示唆することになる。Z Foldはその計画の重要な役割を果たす。さらに重要なことに、新しいブック型折りたたみスマートフォンを複数の価格帯で発売すれば、折りたたみスマートフォンをより幅広いユーザーに訴求し、より多くのユーザーが入手できるようになる可能性がある。
世界最大のスマートフォンメーカーの1社であるサムスンは、モバイルデバイスの方向性に関して大きな影響力を持っている。その一方で、折りたたみスマートフォン市場と、より広範なスマートフォン分野の両方で、これまで以上に激しい競争に直面しているのも事実だ。
International Data Corporation(IDC)によると、2023年にはAppleがサムスンを抜き、世界のスマートフォン出荷台数で首位に立ったという。サムスンが首位から陥落したのは、2010年以来初めてのことだ。GoogleとOnePlusはいずれも2023年に自社初となる折りたたみスマートフォンを発売した。つまり、現在では、スマートフォンとタブレットのハイブリッドデバイスは、Galaxy Z Fold以外にもたくさん存在する。
Counterpoint Researchによると、サムスンではなく、ファーウェイとVivoのモデルの人気が高まっていることから、現在、折りたたみスマートフォン市場で最大のシェアを占めている国は中国であるという。
Galaxy Z Foldを拡大して1つのデバイスファミリーにすることは、折りたたみスマートフォン分野のリーダーとしての地位をサムスンが維持するために、まさに必要なことなのかもしれない。
先述のとおり、未発表のサムスン製品に関する情報を頻繁に投稿しているリーカーのRevegnusによると、サムスンは3つ折りディスプレイを備えた新しいデバイスを製品ラインアップに追加することを検討しているという。これは、ファーウェイに対抗しようとするサムスンの試みの一環だろう、とRevegnusは記している。韓国経済新聞によると、ファーウェイも3つ折りスマートフォンを開発しているとのうわさがあるという。さらに、サムスンはファーウェイとのさらなる競争に向けて、巻き取り式ディスプレイの開発を完了したという報道もある。
Revegnusの情報が常に正しいわけではない、ということにも言及しておくべきだろう。一例を挙げると、サムスンが2023年に「Galaxy Z Tab」という折りたたみタブレットを発売する、とRevegnusは予想していたが、実際にはそのような製品は発売されなかった。
サムスンは折りたたみスマートフォンの今後の計画について、何も語っていない。ただし、新しいタイプのフレキシブルディスプレイや折りたたみディスプレイの技術に関して言えば、その技術が持つ可能性を公に示してきた。例えば、ラスベガスで毎年開催されるテクノロジー見本市の「CES」で、サムスンのディスプレイ部門は、アコーディオンのように曲がる3つ折りディスプレイを採用したコンセプトデバイスを披露したこともある。2カ所で折り曲がるスマートフォンの特許出願も、サムスンが将来的に3つ折りスマートフォンを発売するのではないか、との憶測のきっかけとなった。
サムスンのモバイルエクスペリエンス(MX)事業のプレジデントで部門を統括するTM Roh氏は、自社のロードマップについては語らなかったものの、さらに多くのディスプレイコンセプトを準備していることをほのめかした。
「われわれはさまざまな製品やテクノロジーの開発を進めており、準備が整い次第、消費者に披露していくつもりだ」。Roh氏は2023年7月、米CNETによるインタビューで、このように語った。「実は、CESで披露したコンセプトや製品以外にも、さらに多くのコンセプトや多くのデザインおよびテクノロジーの開発を進めている」
Revegnusによるリーク情報では、この3つ折りスマートフォンとされる製品がGalaxy Z Foldシリーズの一部になるのか、それとも全く新しい製品ファミリーになるのかは、言及されていない。しかし、この製品をZ Foldシリーズに加えることになった場合、サムスンが「Galaxy Note」やGalaxy Sシリーズなどの他のスマートフォンやタブレットで採用してきた同じアプローチを踏襲することが予想される。これらのシリーズでは、標準モデル、「+」(プラス)モデル、「Ultra」モデルが用意されている。
サムスンは、すでに4年以上かけてZ Foldのユーザー基盤を築いてきたので、新しい製品シリーズを一から作るのではなく、既存のZ Foldシリーズを拡大する方が理にかなっている。3つ折りスマートフォンが例えば「Galaxy Z Fold Ultra」という名称で発売されることも想像に難くない。
一方、Galaxy Z Foldの廉価モデルに関するうわさを報じたのは、韓国のニュースサイトETNewsだ。サムスンは「Galaxy Z Fold6」の2種類のモデルを開発中だとET Newsは報じている。1つは「Sペン」に対応するモデル(おそらく、「Galaxy Z Fold5」の後継となる標準モデル)、もう1つは対応しないモデルで、対応しない方は標準モデルよりも低価格になる、とET Newsは伝えている。サムスンは、この動きによって、折りたたみスマートフォンの売り上げを伸ばすことを期待しているのだろう。
サムスンが1000ドル(約15万円)を切る折りたたみスマートフォンを近いうちに発売する可能性はあるのか尋ねられたRoh氏は、難しいと答えた。
同氏は先述のインタビューで、「ごく近いうちに1000ドル以下の折りたたみデバイスを提供するのは難しいだろう」と語っている。「だが、その努力はし続ける」
Galaxy Z Foldシリーズを拡大すれば、折りたたみデバイスがスマートフォンの未来であるというサムスンのスタンスを強調することになるだろう。だが、Z Foldの廉価モデルとともに、Ultraモデルを発売することが重要な意味を持つ理由は、他にもいくつかある。
まず、全く新しいスタイルの折りたたみスマートフォンは、スマートフォンが新鮮でワクワクするものという印象を与え続けるのに、大いに効果があるだろう。Galaxy Z Foldのような折りたたみスマートフォンでさえ、毎年のアップグレードが漸進的なものに感じられるようになっている。例えば、「Galaxy Z Fold4」と2023年のGalaxy Z Fold5の最大の違いは、Z Fold5の新しいヒンジと高速化したプロセッサーだ。
現行の折りたたみスマートフォンがスマートフォン市場でごく小さなシェアしか獲得できていないのに、新しいタイプの折りたたみスマートフォンをリリースするのは少し時期尚早なのではないか、と主張する人もいるかもしれない。確かにそうかもしれないが、新しい形式やデザインを試すことで、サムスンが折りたたみデバイスのいわゆる「キラーアプリ」を見つけられる可能性もある。サムスンのコンセプトが何らかの判断材料になるなら、折りたたむ点が1カ所ではなく2カ所にある3つ折りのディスプレイによって、より大きな画面をポケットに収められることになる。スマートフォンとしてもタブレットとしても使えるデバイスという価値提案を強化できるかもしれない。
仮定したGalaxy Z Fold Ultraのようなデバイスは、万人向けではない。「Galaxy S24 Ultra」やそれ以前に登場した他のUltraモデルと同じように、このデバイスも、サムスンの技術の集大成を示す手段になるだろう。カメラの100倍のデジタルズーム、6.8インチの巨大な画面、4つの背面カメラ、Sペンを備えたGalaxy S24 Ultraは、おそらくほとんどの人がスマートフォンで必要とする以上の機能を提供する。そして、それに見合った高い価格が設定されている。Galaxy Z Fold Ultraが実際に発売された場合、同じように極めて強力な機能を備えた製品になる可能性が高い。
うわさのGalaxy Z Fold6の廉価モデルは、Galaxy Z Fold Ultraよりも実際に登場する可能性が高そうだ。そうなった場合は、現在の折りたたみデバイスの普及を阻害している最大の要因、つまり、価格の問題の解決に向けた一歩になるだろう。折りたたみスマートフォンは常に標準のスマートフォンよりも高価であり、この4年間で大きな変化はない。
下取りや値引きがない場合、Galaxy Z Fold5は1799.99ドルから(日本では24万2660円から)、Galaxy Z Flip5は999.99ドルから(同15万4300円から)となっており、驚くほど高価だ。価格を高く設定しているのは、サムスンだけではない。Googleの「Pixel Fold」も1799ドルから(日本では25万3000円)、OnePlusの「OnePlus Open」は1699.99ドル(約25万6000円)となっている。Motorolaの699.99ドルの2023年版「razr」(日本では「razr 40」の商品名で12万5800円)など、より価格の低いクラムシェル型折りたたみスマートフォンは登場し始めているが、手頃な価格のブック型折りたたみスマートフォンはまだ発売されていない。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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