折りたたみスマートフォンが登場してから5年近くたった。最初の折りたたみスマートフォンは、2019年にサムスンと華為技術(ファーウェイ)が発売したものだ。しかし、この最初期のモデルは高額で、ソフトウェアの機能も限られ、強度にも不安があったため、当時は一般の人には勧めにくかった。
しかし、この4年間で状況は大きく変わった。製品の種類が増えただけでなく、価格を抑えたモデルも登場し始めた。例えば2023年10月にMotorolaが発売した「razr」(2023年版)は700ドルだ(日本では「razr 40」の商品名で12万5800円)。ソフトウェア面の体験はまだまだ進化と改善の余地があるものの、2023年はサムスン、Google、Motorolaを中心に、折りたたみスマートフォンが大きく成長した。
例えば、サムスンの「Galaxy Z Flip5」やMotorolaの「razr+」(日本では「razr 40 ultra」)は大型のカバーディスプレイを備えており、端末を閉じた状態でも通知をチェックできるだけでなく、アプリを実際に使える。Googleの「Pixel Fold」には、外側と内側のディスプレイを活用する新しい翻訳機能が搭載された。
2023年の折りたたみスマートフォン市場は、サムスン、Motorola、OnePlus、Google、OPPOから次々と新モデルが登場し、かつてない盛り上がりを見せた。この勢いは数字にも現れている。International Data Corporation(IDC)のレポートによると、2023年の折りたたみスマートフォンの世界出荷台数は前年比43.9%増となる見込みだ。Counterpoint Researchのデータでは、2023年第2四半期には折りたたみスマートフォンの世界出荷台数が前年同期比10%増を記録した。
折りたたみスマートフォンに乗り換えるべきかを考える上で、最も重要なポイントは「いくらまで出せるか」だ。2019年よりは安くなっているとはいえ、一般的なスマートフォンと比べればかなり高価だ。例えば、サムスンの「Galaxy Z Fold5」とGoogleのPixel Foldは下取りなしだと最安モデルでも1800ドル(日本では25万円台)、Galaxy Z Flip5とMotorolaのrazr+は1000ドル(日本では16万円前後)だ。Motorolaのrazr(2023年版)は700ドル(日本では12万5800円)と最も安いが、その代わり大きなカバーディスプレイは諦めなければならない。
折りたたみスマートフォンの中でも、左右に開くタイプは特に価格が高い。Galaxy Z Fold5や「OnePlus Open」(1700ドル、日本では前者は約25万円で後者は未発売)、Pixel Foldがこれに当たる。しかし上下に開くタイプのフリップフォンなら、「iPhone 15 Pro」や「Pixel 8 Pro」(どちらも約1000ドル、日本では約16万円〜)といった、折りたたみではないタイプのハイエンドスマートフォンと同程度の価格で手に入る。そのため、普段からこの価格帯のスマートフォンを買っている人なら、価格面の抵抗はそれほどないだろう。
なるべく出費を減らすために、割引や下取りキャンペーンにも注目しよう。ただし、この種のキャンペーンはキャリアと新規回線を契約する、比較的最近の機種を下取りに出すなど、何らかの条件が設定されている場合が多いので注意が必要だ。
最近の折りたたみスマートフォンは以前よりも頑丈になっているとはいえ、ヒンジや折り曲げ可能なディスプレイを搭載しているという点で、どうしても普通のスマートフォンよりは壊れやすい。例えば、Googleが6月にPixel Foldを発売した際は、すぐに一部のRedditユーザーからディスプレイの破損が報告された。折りたたみスマートフォンの多くは防塵性能がなく、「Pixel 8」や「Galaxy S23」シリーズのような、折りたためないタイプのスマートフォンと比べると防水性能も劣る傾向にある。
屋外で仕事をする人や、スマートフォンを落としたり、乱暴に扱ったりしがちな人、ケースをつけたくない人は、折りたたみスマートフォンへの乗り換えは慎重に考えよう。デバイスメーカーやサードパーティーが提供している修理サービスも調べておきたい。
多くの電子機器と同様に、折りたたみスマートフォンも定期的に新モデルが発売されることが多い。すぐに時代遅れになるような端末に1000ドル(約15万円)以上を費やさないために、新モデルのリリースサイクルは頭に入れておきたい。古いモデルが大幅に値引きされて売られていることもあるが、通常は最新版を選ぶ方が得策だ。
「Android」搭載スマートフォンのOSアップデートのサポート期間はだいたい数年だ。例えば、Galaxy Z Flip5とGalaxy Z Fold5は4世代、Pixel Foldとrazr+は3年分のAndroidアップデートを保証している。つまり、最新モデルを購入した方が、ソフトウェアアップデートを長く受けることができるのだ。
サムスンは毎年8月頃に新しい折りたたみスマートフォンを発表しているが、2023年は例年より少し早い7月にGalaxy Z Flip5とGalaxy Z Fold5を発表した。Googleが年1回のペースでPixel Foldの新機種を発表するとすれば、第2世代は2024年6月に登場するだろう。Motorolaのrazrシリーズの発表サイクルは不定期だが、上位モデルのrazr+は6月、価格を抑えた下位モデルは米国では10月に登場した。OnePlus初の折りたたみスマートフォンOnePlus Openの米国発売も10月だ。
予算以外では、おそらくこれが最も重要なポイントと言えるだろう。折りたたみスマートフォンは高い上に、一般的なスマートフォンと比べると弱点も多い。
例えば、斬新なデザインのせいで閉じた状態でもかさばり、使いづらく感じることがある。搭載されているカメラも、iPhone 15 ProやGalaxy S23 Ultra、Pixel 8 Proといった折りたたみ式ではないハイエンドモデルに搭載されたカメラほど高機能ではないことが多い。折りたたみスマートフォンを使うのが初めてなら、特に左右に開く大画面モデルの場合、使い方に慣れるまでに若干の時間を要するかもしれない。しかし折りたたみスマートフォンの最大の問題は、今も多くのモデルがディスプレイの中央に目立つ折り目があることだ。
しかし、こうした点を考慮しても、自分のニーズと合っているなら折りたたみスマートフォンに乗り換える価値はある。例えばスマートフォンで動画を見たり、ゲームをしたりすることが多い人なら、Galaxy Z FoldやPixel Foldのような、スマートフォンとタブレットのハイブリッドタイプは良い選択となり得る。筆者は2023年前半に数週間Galaxy Z Fold4を使ってみたが、大きなディスプレイはメールを書くにも読むにも快適だった。タブレットの代わりにGalaxy Z Fold4を持って飛行機に乗り、機内でNetflixを楽しんだこともある。タブレットとしても使えるスマートフォンが必要か、そのためなら多少価格が上がっても構わないと思えるか、よく考えよう。
上下に開くタイプのフリップフォンは、ポケットや小さなバッグにも入れやすい、標準的なサイズのスマートフォンが欲しい人向きの選択肢だ。例えばMotorolaのrazrシリーズや、サムスンのGalaxy Z Flipシリーズなどのスマートフォンは、実質的にキックスタンドを内蔵しているようなものなので、セルフィーをよく撮る人、集合写真を撮る際にシャッターを押してくれる人を探したくない人にぴったりだ。
最近のフリップフォンには、Galaxy Z Flip5やrazr+のように、端末を閉じた状態でもアプリを操作できる、大型のカバーディスプレイを搭載しているものもある。こうしたモデルなら、手のひらの上で「Googleマップ」やSpotifyを素早く簡単にチェックできるだけでなく、小型のスマートディスプレイを持ち運んでいる感覚で使える。例えば、筆者がrazr+をテストした際は、端末をテントのように開いて置き、家事をしながら音楽を再生したり、アルバムアートを眺めたり、プレイリストの次の曲にスキップしたりできた。
このように、スマートフォンには何よりも利便性と携帯性を求めるという人にはフリップフォンが最適だ。
まとめると、折りたたみスマートフォンを買うべきかどうかを考える上で、最も重要な要因は予算、そしてスマートフォンに何を求めるかだ。耐久性やタイミングも重要だが、結局はいくらまでなら出せるか、その端末で何がしたいかに尽きる。いずれにしても、確実に言えることは2023年が折りたたみスマートフォンにとって重要な年だったということ、そしてこの流れは2024年以降も続く可能性が高いということだ。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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