待望の「Apple Vision Pro」が米国時間2月2日に発売された。そして、Appleが定める14日間の返品期限が迫ってきた今(訳注:元記事の執筆時点)、多くのアーリーアダプターがVision Proを急いで返品しようとしている。
Vision Proを返品しているユーザーの割合は不明だ。Appleがその数字を発表することも、おそらくないだろう。Vision Proの販売数は20万台にのぼるそうだが、これまでのところ、レビューは賛否両論だ。われわれは、「Reddit」の投稿を調べて、Vision Proに対してよく挙げられている不満点を拾い上げ、以下にまとめた。
多くのVision Proユーザーは、ライトシールのフィット感に不満を抱いている。例えば、使用中に頭が痛くなった、双眼鏡で映画を見ているような感じがした、鼻の辺りから光が漏れて没入できなかった、といった苦情が投稿されている。このような問題は、ほとんどの場合、ライトシールを交換するだけで解決できるにもかかわらず、ユーザーにとってはVision Proを返品する十分な理由になることが多い。
ライトシールにはさまざまなサイズが用意されている。フィット感に不満のあるユーザーは、最初のスキャンで提示されたサイズが間違っていた可能性がある。フィット感が気になるといった理由や、端から光が漏れていることが原因でVision Proの返品を検討している人は、本体をApple Storeに持ち込んで、さまざまなサイズのライトシールを試してみると、問題が解決するかもしれない。
ただし、問題はサイズを上げ下げすればいいという単純なものではない。ライトシールには、「N」と「W」という種類があり、それぞれ11~14、21~26、33~36というサイズで展開されている(11N、11W、といった具合だ)。しかもこの数字は、衣服のようなサイズパターンに従っているわけではない。ほおや額が前方に突き出ている長さやライトシールの深さによってサイズが変わってくるので、各番号でフィットする顔のタイプが異なる。フィット感がしっくりこない人は、サイズをいくつか試してみるといいだろう。
目と指を使ってデジタル世界を操作するのは直観的で便利だと思う人もいるかもしれないが、必ずしもそうとは限らない。
Vision Proのアイトラッキングは、ユーザーをひどく疲れさせ、目の痛みや疲労を引き起こすことがある。目が疲れるという問題は、装着者の身体がVision Proに慣れるにつれて改善されていく可能性もあるが、一部のユーザーにとってはデバイスの返品を検討する大きな理由となっている。
Vision Proの重さは約600g~650gで、顔に装着するデバイスとしては、かなり重い。参考までに、12.9インチの「iPad Pro」は約680gだ。「iPhone 15 Pro Max」を3台重ねると663gになる。約18cmのバナナが5本ついた房は約490gだ。
3Dプリンターで作成された部品を使って、重さをうまく分散するユーザーもいれば、映画1本分の時間も装着するのは無理だと報告するユーザーもいる。返品したい人は、Vision Proに対する悲嘆が最終段階に入るまで待ったりしないように。返品期間が過ぎてしまうかもしれないからだ。
Apple Vision Proは間違いなく革新的なデバイスだ。黎明期のコンピューターも革新的だったが、部屋1つを丸ごと、あるいはそれよりも大きな空間を占拠するほど大きかった。それから長い道のりを経て、今日のノートPCやスマートフォン、ウェアラブルテクノロジーにたどり着いている。
Appleにとって幸いなことに、Vision Proが成熟するのに要する時間はコンピューターほど長くはないが、Vision Proのテクノロジーはこのデバイスを今後も使い続けたいと思わせるほど優れたなものではない、と不満を述べるユーザーも多い。
特にApple製品に搭載されている「Retinaディスプレイ」と比較して、小さなテキストのレンダリングが苦手であることや、標準的な計算タスク中に動作がカクつくことについての不満も多い。Vision Proが生産性向上や作業のためのデバイスとしてマーケティングされていることを考えると、これは由々しき問題だ。
Vision Proを装着して3D映画や空間ビデオを鑑賞し、そのテクノロジーに圧倒された筆者は思わず「すごい。あなたも見てる?」と夫に声をかける。だが、返ってくるのは夫の困惑した表情だけ。筆者はこんな場面が想像できる。
Vision Proは、装着者にとってはすばらしい体験を与えてくれるだろう。しかし、米ZDNETのJune Wan記者でさえ、孤独な体験にもなり得るとしている。
AppleのVision Proを使う体験は、ヘッドホンを装着するときと似ている。ひとたび装着すると、まわりの世界から隔離されて没入し、孤独になる。この点に関しては、筆者は楽観的でありたい。以下の理由から、この孤独感は短期的な現象にすぎないと考えているからだ。第一に、VRヘッドセットはそのうち服装や装飾の一部として受け入れられるようになると考える。第二に、社会的な環境において、顔面を遮るものがあっても物理的にコミュニケーションをとる方法を学んでいくと思う。第三に、より有意義な方法で、VRで人とつながることが可能になるだろう。Vision Proで「FaceTime」を利用できるようにしたことは、始まりにすぎない。
Vision Proのターゲットが、食料品を買うのもままならない人でないことはわかっている。最初からずっと、こうした大きなテクノロジー製品に喜んで大金を払うアーリーアダプターと、このプラットフォームへの投資を検討している開発者を対象としていた。
しかし、3499ドル(約52万4000円)のVRヘッドセット(しかも、この価格にアクセサリーは含まれていない)というのは、熱心なアーリーアダプターにとっても高額である。Vision Proをめぐる騒ぎが沈静化するにつれて、Vision Proに4000ドル以上(約60万円。アクセサリーや「AppleCare+」、税金を足した金額)を費やした多くの人が、その金額に見合う価値を見いだすのに苦労することになるだろう。
もちろん、Vision Proを所有している人の中には、最初から返品するつもりで購入した人もいる。試しに使ってみて、ついでにSNSで自撮りを何枚かひけらかそう、というのが目的だ。
そうしたことが可能なのは、Appleの寛大な返品ポリシーのおかげだ。Appleでは、どのデバイスでも、製品が元の状態のままで、かつパッケージも破損等がなければ、購入後14日以内の返品を認めている。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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