「Vision Pro」を使い始めてから3日が経過し、Appleの3499ドル(約52万円)の空間コンピューターを使用しているという現実にようやく慣れてきた。
OSを正確に操作できるようになり、隠れたナビゲーションボタンも簡単に見つけられるようになった。パートナーが、「EyeSight」越しに目が合うたびに、びっくりして飛び上がることもなくなったし、首の痛みもほぼ治まった。
Vision Proは購入する価値があるのかという質問にはまだ答えられない(正直に言うと、明確に答えられるようになるまで、おそらく1~2年かかるだろう)が、筆者は先週末、仮想現実(VR)ではないAppleのヘッドセットについて、特に強く感じたことをすべて思い出し、3つの主要なポイントにまとめた。以下でそれらのポイントを紹介していこう。
「Vision Proのキラーアプリは何なのか」。Appleが2023年6月にVision Proを発表して以来、筆者はこの質問を自分自身や他の人にぶつけてきた。実際に3日間使用してみて、その答えは出たが、皆さんが望んでいる回答ではないかもしれない。
それは、「Zoom」で「Persona」を使用する体験や「ChatGPT」でもなければ、仮想のターンテーブルでDJをすることでもない。それぞれの断片的要素を合わせて構成される全体、つまり、Vision Proを取り囲むエコシステムだ。どこかで聞いたことのあるようなフレーズだと思った人もいるかもしれない。このヘッドセットで試したすべてのアプリやサービスの中で、筆者を最も驚かせたのは、「iPhone」から空間ビデオを「AirDrop」できることや、「MacBook」を開くと「接続」のバブルが表示されること、「Mac」の仮想ディスプレイから「visionOS」のさまざまなフローティングウィンドウにマウスカーソルをシームレスに移動できることだ。「AirPods Pro」を装着して、没入的な動画を視聴していると、映画館が存在することを忘れてしまいそうになった。
Vision Proは、すでに強力だったAppleのハードウェアとソフトウェアのエコシステム(皆さんも1~2台のApple製品をすでに所有しているのではないだろうか)を拡張したもののように感じられるため、ユーザーはおなじみの、安全で負担のない使用体験を享受できる。
Vision Proは、未来からやって来た人々が現代の材料を使って作った製品のような印象を与える。こうした感想を述べるのは、筆者が初めてではない。前面ガラスのシームレスな曲面、生地と質感の融合、魔法のように筆者の目と手の動きを追跡するさまざまなセンサーは、Appleのインダストリアルデザイナーチームの優秀さを示している。
本体の重量のバランス、そして、「Light Seal」がディスプレイから簡単に持ち上がってしまうこと(つまり、主に前面ガラスに手を触れることになるため、必然的に前面ガラスが指紋だらけになる)を除けば、Vision Proのハードウェアについて、不満点はほとんどない。
後はソフトウェア面だ。これに関しては、Appleの「第1世代製品」のさまざまな問題が現れている。例えば、フローティングウィンドウは突然消えるし、未完成に感じられるネイティブアプリの機能もある。まるで、Appleが厳しい発売スケジュールに急いで間に合わせたかのようだ。「visionOS 1.0」のソフトウェア体験のせいで、筆者はすでにバージョン1.1のリリース日を心待ちにするようになっている。「WWDC」で詳細が発表されるのだろうか。
筆者が最も望んでいるのは、物理的なアクセサリー(Bluetoothのキーボードやマウスなど)を前面に表示させることだ。Vision Proは、手を前面に表示するのは得意で、筆者の肌の色合いをその没入環境に合わせて調整する機能も備えている。その一方で、Apple独自の「Magic Keyboard」も含めて、アクセサリーは隠されたままになる。タッチタイピングができないのであれば、長い電子メールの下書き作成は諦めた方がいい。
ほかにも、小さな不満点がいくつかある。「iPadOS」のアプリ(横に浮かべておくことが多い「Slack」や「Outlook」も含む)にダークモードがない、ホーム画面でアプリを並べ替えられない、画面録音用のマイク入力がない、といったことだ。繰り返しになるが、それらはすべて今後のアップデートで改善される可能性がある。筆者はそう願っている。
AppleのVision Proを使う体験は、ヘッドホンを装着するときと似ている。ひとたび装着すると、まわりの世界から隔離されて没入し、孤独になる。この点に関しては、筆者は楽観的でありたい。以下の理由から、この孤独感は短期的な現象にすぎないと考えているからだ。第一に、VRヘッドセットはそのうち服装や装飾の一部として受け入れられるようになると考える。第二に、社会的な環境において、顔面を遮るものがあっても物理的にコミュニケーションをとる方法を学んでいくと思う。第三に、より有意義な方法で、VRで人とつながることが可能になるだろう。Vision Proで「FaceTime」を利用できるようにしたことは、始まりにすぎない。
現時点では、ヘッドセットが家族や友人とのやりとりに自然に組み込まれるというAppleのビジョンは、少なくとも筆者の経験から言わせてもらえば、まだ実現していない。Vision Proで空間ビデオを鑑賞するときの興奮や、ヘッドセットで視聴する3D映画と地元の映画館で見る3D映画との違いを、言葉で表現することしかできない。どちらの体験も、筆者が言語化した表現よりも、実際ははるかに素晴らしいが、筆者以外の人間がそれを知ることはできない。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」