スマートフォンから110番への誤通報が増えている。通報があると警察は対応せざるを得ず、本当に必要な人への対応ができなくなる恐れもある。なぜこのようなことが起きるのか。理由と対策について見ていきたい。
たとえば長野県では、2022年の110番通報受理件数のうち誤通報の割合は、21年の6.3%から13.1%に急増している。過去の誤通報は、119番と間違えたものがほとんどだったが、最近はスマホからのものがほとんど。
2023年に埼玉県警が受理した110番通報を見ると、呼びかけても応答がない“無応答”が10万205件にのぼる。22年の1.6倍と急増しており、割合も7件に1件ととても多い。
県警の通信司令課に110番通報が入ったため、「事件ですが、事故ですか」と問いかけても返事がない。発信元の電話番号にかけてもつながらず、位置情報から発信場所を特定してかけつけると、元気でぴんぴんした持ち主が驚いた顔で対応することに。スマホをバッグに入れたままにしておき、いわゆる誤通報が起きていた――このような事態が相次いでいるのだ。
バッグやポケットに入れたままで勝手に発信しており、警察が来るまで誤通報に気づかないケースも多いという。
最近特に多いのが、Android端末からの誤通報だ。長野県警の調査によると、約300件のうち94.4%がAndroid端末からということがわかっている。
緊急通報は、アプリを起動する余裕がなくても通報ができる便利な機能だ。2021年10月にリリースされた「Android 12」以降に追加されている。連絡先を消防(119番)、海上保安庁(118番)、任意の番号にすることもできるが、日本では初期設定が110番になっている。この機能を知らない人も多いことから、このようなトラブルにつながっていると考えられる。
緊急通報を行うには、スマホの電源ボタンを素早く5回押し、「緊急SOS」画面になったら画面を3秒間長押しして設定してある連絡先に電話するか、画面下の「×」を右にスライドしてキャンセルすることができる。しかし知らぬ間に緊急通報になっていて気づかないと、このような誤通報につながってしまうというわけだ。
もし誤って通報していたことがわかった場合、放置していると警察の手を煩わせることになってしまう。必ず「誤通報です」と連絡する必要がある。
このようなトラブルをなくすためには、設定を変更しておくことも検討してもいいかもしれない。「設定」→「緊急情報と緊急通報」→「緊急SOS」で設定画面となる。「緊急SOSをOFFにする」をタップしてオフにすることもできる。
「長押しでアクションを開始する」をタップで、丸いボタンを3秒長押しすることで緊急時のアクション開始にできる。「アラーム音を鳴らす」をオンにしておき、緊急SOSのカウントダウン中に大きな音が鳴るように設定しておくことも可能だ。
iPhoneでも誤通報は起きている。「iPhone 14」に搭載された衝突検知機能によるものだ。衝突を検知すると警告音が鳴り、20秒以内に取り消さないと119番に通報が行く仕組みだ。
デフォルトではオンになっており、ジェットコースターやスキー場での衝突・転倒などによって誤通報につながっているのだ。スマホを投げたり、落としたりすることも誤通報につながるため、扱いには注意してほしい。
iPhoneでは、「設定」→「緊急SOS」で設定変更できる。
「長押ししてから放して通報」は、サイドボタンといずれかの音量ボタンを長押しすると、カウントダウンが開始し警報が鳴る。カウントダウンの後にボタンを放すと、緊急通報サービスに発信する。
「ボタンを5回押して通報」は、サイドボタンを5回素早く押すもの。「目立たない形で通報」は、長押ししてから放して通報、またはボタンを5回押して通報を使用して緊急通報をかけると、警報、フラッシュ、VoiceOverオーディオが消音となる。
誤通報してしまった場合は、通報画面で「×」をタップしてキャンセルしよう。ただしオフにはできないので、誤通報しづらいものに変えるのもいいだろう。
米国では一人で運転中の交通事故などが起きたときに、緊急通報機能が役立っていると聞く。日本でもいざという時に必要な方はぜひ活用してほしい。しかし誤通報しそうな方は、設定を見直すことも検討するといいのではないだろうか。
高橋暁子
ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。SNS、10代のネット利用、情報モラルリテラシーが専門。スマホやインターネット関連の事件やトラブル、ICT教育に詳しい。執筆・講演・メディア出演・監修などを手掛ける。教育出版中学国語教科書にコラム 掲載中。元小学校教員。
公式サイト:https://www.akiakatsuki.com/
Twitter:@akiakatsuki
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