「Facebook」や「Instagram」などで、著名人の投資セミナー広告が表示されたことはないだろうか。これらは被害者も多く報告されているなりすましの詐欺広告であり、多くの著名人が名前をかたられ困っているという。
被害の実態と理由、対策までをご紹介したい。
著名人の名前や写真を無断で利用し、主催するセミナーや投資ビジネスへ勧誘する詐欺が多発している。クリックすると「LINE」の友だち登録や、LINEの投資グループへの参加が促される仕組みだ。LINEでは、暗号資産の取引や、投資目的の銀行口座への振り込みなどが求められる。
これまでに、前澤友作さん、堀江貴文さん、森永卓郎さんなどの著名人の写真や名前が使われており、騙された人も多い。中には、ロンブー敦(ロンドンブーツ1号2号 田村淳)さんや、明石家さんまさん、大坂なおみさんなどの芸能人の名前、写真を使った例も。
過去には、アナウンサーの大江麻理子さんが「本当に本当に困っています。InstagramやFacebookで、私の名前を騙った詐欺広告が横行しています。何度削除依頼をしてもまた出てきます」とXで投稿。自身の名前を騙った詐欺広告に困っていることを明かしている。
本当に本当に困っています。InstagramやFacebookで、私の名前を騙った詐欺広告が横行しています。何度削除依頼をしてもまた出てきます。なぜこんなことが許されているのか、メタ社に取材しようかと思っています。とにかく、テレ東以外が出している私の名前での広告は全て詐欺です。ご注意ください。 https://t.co/LhvtTiCWBQ
— 大江麻理子 Mariko Oe (@oe_mariko) November 20, 2023
「ZOZOTOWN」創業者の前澤友作さんも、「【拡散希望・Facebook社を責任追及します】」とXに投稿。自身の写真を使った詐欺広告がFacebookやInstagram上で大量に見つかり、Facebook Japanに説明を求める内容証明を送るも、本社に連絡せよとの通知がきて対応中としている。
【拡散希望・Facebook社を責任追及します】
— 前澤友作@MZDAO (@yousuck2020) September 2, 2023
僕の写真を勝手に使った詐欺広告がFacebookやInstagram上で大量に見つかる
↓
Facebook Japan社に説明を求める内容証明(画像①〜③)を送付
↓… pic.twitter.com/5PL2kP1pNw
これらの著名人のもとには、「◯千万円振り込んでしまった」「◯◯さんだからと信じたのに」「本当に◯◯さんが関わっているのか」など、被害者からの電話やメールが寄せられて困惑しているという。
警察庁によると、特殊詐欺のうち、投資名目の詐欺被害は10月末までに去年の約8倍の221件、被害額は去年の10倍以上の約26億円に上っているという。
2022年春頃から、SNSの詐欺広告被害は多数報告されている。東急百貨店東横店の閉店処分品セールを騙り、ルイ・ヴィトンやロレックスなどが安く手に入るとする詐欺広告がFacebookなどで多く報告されて話題となったのだ。
前述した著名人なりすまし広告詐欺以外にも、みずほ証券、野村証券、SBIグループ傘下企業などの証券会社や日本証券業協会を騙った偽の金融機関詐欺広告も報告されている。こちらもやはり、本物の企業ロゴなどを利用しているため、信じてしまう人も多い。
「今後高騰する株式の銘柄情報を入手できる」「投資に関する書籍や資料をプレゼントする」などと表示され、気になった人がクリックやLINEの友だち追加をすると、投資勧誘や金銭の支払いの話を持ちかけられる。偽のSNSやメッセージから誘導される例もあり、金融庁も注意喚起をしている。
ニュースサイトを模したものもある。目を引くようなニュースタイトルで関心を惹き、日経新聞や「Yahoo!Japan」などのニュースサイトの記事を装い、投資勧誘へと誘導するものだ。こちらも本物のニュースサイトに見えるため信じてしまいがちだが、実際はなりすましの詐欺広告なので注意してほしい。
騙される人が増える背景には、物価高で生活が苦しくなっている人が多いこと、投資で何とかしなければという気持ちにかられている人が増えていることがあるだろう。
また、SNSという場も騙されることにつながっている。いつも使っているSNSなので安心してしまい、友達の投稿に挟まれている広告だから疑わないという人もいる。
LINEも、利用すると相手との心の距離感が近くなる効果がある。グループでのやり取りも、サクラが仕込まれており、「おかげさまで儲かりました」などの投稿がされていたため信じてしまったという人もいる。
SNSでは、エコーチェンバー現象や正常性バイアスが働いてしまい、被害を増やすことにつながってしまっているのだ。
詐欺広告は海外の犯罪組織が出していることが多いようだが、なぜこのような詐欺広告を止められないのか。Facebookなどの広告審査は主にAIで担っていることが多いが、悪徳業者はこのシステムをすり抜ける技術を持っているようだ。今後運営会社は、AIだけでなく人の目でも確認し、詐欺広告を排除する義務があるのではないか。
では、詐欺広告を見破るにはどうすればいいのか。
まず、そもそもうまい話などはなく、簡単に儲けられる話が一般人にくるはずがないと疑う必要があることは知っておきたい。普段からFacebookやInstagramでこのような詐欺が多発している情報を知り、警戒しておくことも大切だ。
もし気になる広告があった場合も、その内容で検索してみること。詐欺ということが本人、または公式サイトやSNSなどで警告されていることも多い。警告するこのようなニュース記事が見つかり、詐欺が多発していることに気づけることもあるだろう。
投資を持ちかける広告を見かけても、LINE登録はけしてしないこと。もしLINEで著名人とやり取りしてしまった場合も、ビデオ通話を持ちかけてみると本人かどうか確認できるのではないか。最近はディープフェイク動画で本物でなくてもそれらしいビデオ通話ができることもあるが、ディープフェイクは横顔はうまく作れないという。ビデオ内で確認することが大切だろう。
怪しい広告を見かけたら、通報することでそのような詐欺広告検出システム改善にも役立つ。詐欺広告の相談は、金融庁の「金融サービス利用者相談室」(0570-016811)、「消費者ホットライン」「188(いやや)」で相談してほしい。
高橋暁子
ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。SNS、10代のネット利用、情報モラルリテラシーが専門。スマホやインターネット関連の事件やトラブル、ICT教育に詳しい。執筆・講演・メディア出演・監修などを手掛ける。教育出版中学国語教科書にコラム 掲載中。元小学校教員。
公式サイト:https://www.akiakatsuki.com/
Twitter:@akiakatsuki
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」