人工知能(AI)の開発が盛り上がり続ける中、この技術はより高性能になり、自分の雇用は守られるのかという人々の懸念も高まっている。しかし、マサチューセッツ工科大学(MIT)の新たな研究によると、AIを導入するコストは高いので、少なくとも当面は雇用主が人を雇用し続ける方が経済的になりそうだという。
AIに取って代わられる仕事について考えるとき、大半の人はAIが人間の仕事をどれだけうまくこなせるかのみを考慮する。そうした理由から、目に触れる研究やニュースの見出しの多くは、AIがどのような仕事を自動化できるかに焦点を当てるため、失業するのではという不安をあおるだけになってしまう。
しかし、「Beyond AI Exposure」と題されたMITの研究はそうした典型的なアプローチから転換し、見過ごされてきた要素、つまりコストを考慮に入れている。
この研究では、あるタスクに求められるパフォーマンスのレベルと、それをこなす自動化システムの特徴を割り出した。その上で、AIを導入した方が経済的に優位であるか否かを検証した。コンピュータービジョンによって自動化可能なタスク、つまり品質検査などの視覚的タスクに的を絞っている。
タスク自動化の経済面を踏まえた評価は、職業の将来がどのようになるかを示す良い指標となる。つまるところ、こうした精巧なAIモデルの導入には高いコストがかかるし、企業は投資対効果のある技術への投資にしか興味を示さないからだ。
コストを考慮することがなぜ必要不可欠なのかを説明するため、この研究では例として、小規模なベーカリーが目視による原材料の品質チェックの自動化にコンピュータービジョンの利用を検討する場合を挙げている。
この作業自体はパン職人の業務の6%しか占めないので、1人当たりの年俸が4万8000ドル(約710万円)のパン職人を5人抱える小規模なベーカリーでは、作業の自動化によって経費削減できる額は最大1万4000ドル(約210万円)になる。コンピュータービジョンの導入費用は削減できる金額よりもはるかに高いので、技術が利用可能であるにもかかわらず、作業を自動化することは財務的に健全ではないだろう。
45ページに及ぶこの研究論文では、研究の枠組みと方法、そして結果について詳述している。
「AIシステムには多額の初期費用がかかるので、企業にとって費用対効果の高い自動化を実現するAIコンピュータービジョンに 『影響される』のは、労働者報酬の23%にとどまることが分かった」(同論文)
さらに、視覚的タスクの77%は、それを自動化するシステムが企業レベルでしか使えない場合、自動化による経済的効果は得られないという。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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