ベネッセコーポレーションとウルシステムズは1月17日、同月に「一般社団法人Generative AI Japan」(GenAI、ジェナイ)を発足したと発表した。
両社を共同発起人とし、代表理事を務める慶應義塾大学 医学部 教授の宮田裕章氏など、先端企業や有識者ら17人を理事として迎える。生成AI活用における教育やキャリア、協業、共創、ルール作りなどのテーマにおける提言などを実施し、日本全体の産業競争力の向上を目指す。
2023年の「ChatGPT」登場を皮切りに、日本でも注目が集まった生成AI。多くの企業が活用を推進する一方で、社会実装面での価値創造や高い公正性、安全性の構築などが必要とされている。
国の規制やガイドライン整備が進むが、実態にそぐわない規制導入や、AIサービス利用時のリスクが高止まりする可能性といった懸念もある。民間企業や利用者の視点からの議論の場や、政策提言やルールメイキングにつなげる仕組みなど、1社だけでは解決が難しい課題に対する他社・団体同士の協業・連携が必要になるという。
Generative AI Japanの代表理事を務める、慶應義塾大学医学部 教授の宮田裕章氏は「(生成AI活用の推進における)課題は主に人財面で、分野をまたぐ活用の部分。ユースケースを持ち寄りながらともに人材を育て、ルールを作る。1社だけでは難しいところを協力していく。学術を含めた多様なステークホルダーが集まった上で、何ができるのかを積み上げていきたい」と、設立の趣旨を話す。
具体的な活動計画は、(1)先端技術の共有と連携、(2)ビジネスユースケースの共有と実装支援、(3)Labを起点にした共創・協業、(4)教育・学び、(5)生成AI活用のルール作り・提言――の5テーマが軸となる。事例収集と知見化を進めつつ、産学連携で生成AIの活用促進、社会提言を実施していく予定だ。
1月17日時点では、さまざまな業界から16社が法人会員として参加を表明。今後も可能な限り多様な業界から、活動に賛同する会員企業を集うという。
Generative AI Japanの発起人となった、ベネッセホールディングスでデータソリューション部 部長を務める國吉啓介氏は、「(現時点で参加を表明する)われわれだけで何かをやるわけではなく、これから参加する企業の声も聞き、何をしていくかもブラッシュアップしていきたい」と語る。5軸とする活動計画もスケジュールなどを明確に予定するわけではなく、まず会話を開始するところから始めたいと話した。
衆議院議員を務める小林史明氏は、Generative AI Japanの設立に寄せて、生成AIの活用への期待を話す。
「世界最大のテクノロジーの祭典として先週開催された『CES 2024』は、AI一色だったと聞いている。特に、さまざまな業界をAIでどう変えていくかが焦点で、AIプラットフォーム、デジタルツイン、ロボットの3領域が、世界の当面のトレンドになりそうだ。一方日本は、コロナ禍が明けて経済活動が正常化しつつあり、忘れかけていた“人手不足”が圧倒的に大きな現場の課題になっているが、政府としては30年続くデフレからの脱却というチャンスに変えたい。物価が緩やかに上昇するが、それ以上に人々の所得が増えるという社会をしっかり実現したい。その時に重要になるものが、AIであり、ロボティクスによる自動化だ。新しい産業が生まれ、人々の働き方を変え、多様な人材が活躍しやすくなる」という。
また、テクノロジーの社会実装により多様で平和な社会を実現するという心持ちで12年間活動するなか、いつも紹介しているという約400年以上続く地元の老舗和菓子屋の事例を紹介。
「高齢化で働けなくなる(はずの)和菓子屋の職人が長く働ける理由は、電球を明るいLEDにしたこと、あんこ入りの30kgの箱を持ち上げられなくなる前に油圧のリフトを導入したことだった。これだけでも5年長く働くことができ、そんな事例が(ほかにも)たくさんある。間違いなく日本中の現場で起きており、人とテクノロジーはAIやロボティクスによりもっと楽に協働することができるし、より多様な人が現場で働くことができる。現場仕事、いわゆる肉体労働に近いもの、ここにこそ日本の生産性の伸びしろがある。人材不足が大きな課題になるからこそ、日本の新しいテクノロジーや、海外からの企業のテクノロジーに期待したい」(小林氏)
なお、昨今のAI、自動化といったテクノロジーは人の仕事を奪うと言った懸念の声も少なからずあるが、日本にとってはメリットの方が大きいと説明する。「人口が増える社会こそが成長すると言われているが、一方で、AIやロボティクスによる雇用(機会)の喪失に対する危機感は、社会として強くなる。しかし、日本は真逆だ。人手が不足し、人口が減っていく社会だからこそ、徹底的にAIを使った自動化、人との協働を進めることができる。日本こそ、この生成AIの力も最も引き出せる国で、だからこそ新しいルールも必要だ。(今回発足した)新団体からさまざまなルール形成に関する提言も予定していると聞いているが、今のルールを前提とした議論でなく、テクノロジーをベースとした自由な発想であるべき姿を描き、その時にどんなルールが必要になるかをわれわれに共有してほしい。ともにその新しいルールを作り上げる、そんな活動をしていきたい」(小林氏)とし、生成AIをはじめとする新テクノロジーにおける適切なルール構築の必要性を説いた。
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