身につけられるガジェットとして、すっかり市民権を得たスマートウォッチ。一方で、メーカーによってどのような違いがあるのか、わかりにくい製品でもある。
そこで、アップル「Apple Watch Series 9」、グーグル「Pixel Watch 2」、サムスン「Galaxy Watch6」、ファーウェイ「HUAWEI WATCH GT 4」、ガーミン「Venu 3/3s」という各社の最新製品を、製品選びの際に重要になる8つのポイントに絞って比較してみた。2024年こそスマートウォッチと考えている人の、参考になれば幸いだ。
スマートウォッチは、スマートフォンと一緒に使うガジェット。そこでまずは、自分が使っているスマホと一緒に使えるかどうかが、選択基準となる。Apple Watch Series 9はiPhoneのみ対応で、Androidスマホと一緒には使えない。逆にPixel Watch 2とGalaxy Watch6は、iPhoneでは使えない。HUAWEI WATCH GT 4とVenu 3は、どちらでも利用できる。
スマートウォッチのセットアップには、メーカーごとに専用のアプリが必要だ。iPhoneとApple Watch Series 9の組み合わせの場合は、プリインストールされている「Watch」アプリを使用。Pixel Watch 2では、「Google Pixel Watch」、Galaxy Watch6では「Galaxy Wearable」を使用する。HUAWEI WATCH GT 4では「Huawei Health」、Venu 3では「Garmin Connect Mobile」というアプリをインストールする必要がある。
なお、Huawei Healthは「Google Play」からは入手できないので、HUAWEI WATCH GT 4をAndroidスマホで使用する場合は、別途「HUAWEI AppGallery」というアプリを入手して、そこからHuawei Healthを入手するというひと手間が発生する。
Pixel Watch 2を除く製品には、大小サイズ違いの2モデルが用意されている。サイズによって選べるカラーなども異なるほか、Apple Watch Series 9ではアルミとステンレスなど、素材が異なるモデルが選択可能。エルメスやナイキとのコラボモデルも展開されている。
なお、どのスマートウォッチもバンドの取り外しができ、製品によって選べるバリエーションに違いはあるものの、サードパーティー製も含めてバンド交換が可能だ。
さらに、Apple Watch Series 9、Pixel Watch 2、Galaxy Watch6には、eSIMを搭載するセルラーモデルもあり、別途キャリアと契約すれば、スマホが近くになくても単体で通話や通信ができる。ファーウェイもHUAWEI WATCH GT 4では対応していないが、上位モデルとなる「HUAWEI WATCH 4」はeSIMに対応している。
いずれも価格が少し高くなり月々の通信費もかかるが、ランニングなどの際にスマホを持たずに出掛けても、いざというときにつながる安心感が得られる。
利用シーンや好みにあわせてウォッチフェイス(文字盤)を変更できるのは、アナログ時計にはない、スマートウォッチならではのメリットだ。メーカーごとにたくさんのウォッチフェイスが用意されていて、専用アプリから新たなウォッチフェイスを追加、変更できるようになっている。メーカーごとに追加のウォッチフェイスをダウンロードできるしくみも用意されている。
例えばガーミンの場合は、「Connect IQ Store」というアプリをスマホにインストールし、そこからウォッチフェイスの追加が可能。同じConnect IQ Storeからアプリを追加して機能を拡張することもできる。
同様にファーウェイでは、AppGalleryからアプリの追加が可能。Google Pixel Watch 2とGalaxy Watch6は同じ「Wear OS」をベースにしているため、Androidスマホと同じGoogle Playからアプリを追加できる。
Apple Watch Series 9も、iPhoneと同じ「AppStore」からアプリの追加が可能だ。なお、Google PlayやAppStoreでは、「LINE」など普段使っているスマホアプリと連動するアプリが入手しやすいといったメリットがある。
スマートウォッチはマイクとスピーカーを搭載しているため、単体でつながるセルラーモデルでなくても、スマホのBluetooth子機として電話を受けたり、かけたりできる。
さらに、SMSメッセージの通知から中身を確認して返信も可能だ。しかし、iPhone、Androidスマホの両方に対応する、HUAWEI WATCH GT 4やVenu 3でも、この機能はAndroidスマホでしか使えない点には注意が必要だ。
スマホからはさまざまな通知も受け取れる。受け取る通知の種類はスマホのアプリで設定でき、メーカーや製品による違いはあまりないが、通知からできる操作には違いがある。
例えば、Apple Watch Series 9やGoogle Pixel Watch 2、Galaxy Watch6で、スマホアプリと連動するアプリがインストールされている場合は、通知からそのアプリを起動して操作が可能。LINEの通知からLINEを起動して返信するといったことができる。
スマホとの連携機能ではこのほか、音楽再生もよく使用する機能のひとつ。スマホで再生中の音楽をウォッチから操作するのは、どの製品でもできるが、スマートウォッチ単体で音楽を再生する方法は、製品によって違う。
Apple Watch Series 9の場合は、プレイリストやアルバムを追加できるほか、音楽配信サービスごとにアプリを追加して操作が可能。Google Pixel Watch 2、Galaxy Watch6、Venu 3も同様に、音楽配信サービスごとにアプリを追加して操作できる。
Galaxy Watch6とHUAWEI WATCH GT 4は、専用アプリ経由でのAndroidスマホ内の音楽ファイルの転送が可能。Venu 3は専用ソフトを使ってPCから音楽ファイルを転送できる。
スマートウォッチには、さまざまなセンサーが搭載されている。各種センサーによって取得された活動量などのデータが、スマホの専用アプリ経由で各メーカーのクラウドサービスにバックアップする仕組みだ。このため、スマホの機種変更時はもちろん、スマートウォッチを買い換える際も、同じメーカーのものであれば、過去のデータを引き継げるようになっている。
もちろん製品によって、搭載されているセンサーや取得できるデータは異なる。各メーカーに共通するのは、加速度センサーやジャイロセンサーといった動きを検出するセンサーのほか、位置情報に関わるGPS、高度や気圧、コンパス、バイタルデータに関わる心拍、血中酸素濃度、皮膚温など。これらを組み合わせて、活動量や睡眠、ストレスなどが計測できる。なお、いざというときに転倒などを検出して通知する機能は、今回取り上げるどのスマートウォッチにも搭載されている。
このほか心電図は、グローバルでは対応している製品も多いが、日本で利用できるのはApple Watch(Series 4以降)だけ。またGalaxy Watch6には、ほかにはない体組成が測れる機能も搭載されている。
メーカーによって最も違いが出るのが、アクティビティや睡眠などのデータがどのように記録されるか。例えばアクティビティでは、歩数や活動量、消費カロリーが記録できるのはどれも同じだが、その記録の方法や付随して利用できる機能が、メーカーごとに異なる。
Apple Watch Series 9は、ムーブ(消費カロリー)、エクササイズ(運動)、スタンド(立ち上がって動いた時間)の3つを、3色のリングで表現。設定した目標に到達し、リングを閉じることがモチベーションになる。HUAWEI WATCH GT 4でも同様のリングが採用されているほか、項目は異なるもののGalaxy Watch6にも似たリングがある。
ワークアウトは、ランニングやウォーキングといった一般的な運動の場合、どの機種でも自動検出して記録することが可能。また、登録されているワークアウトから該当するものを選んで記録することもできる。この登録ワークアウト数はメーカーや製品によって違うが、よほどニッチな運動でなければ、だいたいカバーされていると考えていい。
運動の記録はApple Watch Series 9の場合、iPhoneの「フィットネス」アプリと「ヘルスケア」アプリに保存され、ほかの人と共有もできる。ヘルスケアアプリではほかに、心拍数や酸素レベル、呼吸数、睡眠などのデータもまとめて管理できる。
同様に、Google Pixel Watch 2では「Fitbit」アプリ、Galaxy Watch6では「Samsung Health」、HUAWEI WATCH GT 4ではHuaweiヘルスケア、Venu 3ではGarmin Connect Mobileに、それぞれ記録されるしくみだ。
睡眠についてはどのメーカーも時間だけでなく、質も記録できる。いずれも基本的には、スマートウォッチを着けて眠れば自動的に記録されるが、Apple Watch Series 9では、あらかじめ眠る時間を設定して「睡眠」集中モードがオンになっていないと記録されない。
眠りの深さを4段階で記録できるのはどのメーカーでも同じだが、他の4製品では睡眠スコアが点数で表示されるのに対して、Apple Watch Series 9には点数表示がない。なお、Fitbitアプリには月会費が必要なプレミアム機能があり、睡眠についてより詳しい分析やアドバイスも受けられるようになっている。
心拍の変動などをもとにストレスをチェックできる機能も、各製品に備わっている。Apple Watch Series 9には、ストレスレベルをチェックできる機能はないが、状況に応じて深呼吸を促す通知を表示する。
このほか、ガーミンのVenu 3ではアクティビティやストレスレベル、睡眠などのデータをもとに自分の「電池残量」がわかる、独自の「Body Battery」がチェック可能。Google Pixel Watch 2でも同様の「エナジースコア」を見ることができる。
決済機能もスマートウォッチで使えると、便利な機能のひとつだ。今回取り上げた5製品では、HUAWEI WATCH GT 4を除く4製品が「Felica」に対応している。Venu 3では「Suica」、Google Pixel Watch 2とGalaxy Watch6ではSuicaに加えて「iD」や「Quicpay」、Apple Watch Series 9はさらに加えて「PASMO」「ICOCA」も利用できる。
また、これらの製品ではNFCに対応する「Visa」のタッチ決済なども利用できるが、HUAWEI WATCH GT 4ではNFCを搭載しているものの、日本では決済機能が利用できない。
Apple Watch Series 9、Google Pixel Watch 2、Galaxy Watch6の3製品はセルラーモデルが選べ、スマホと連動するアプリが豊富、決済機能が豊富など、できることが多い一方で、バッテリー駆動時間が短い。Apple Watch Series 9は最大で18時間。急速充電ができるとはいえ、1日に1度は充電が必要だ。対して、HUAWEI WATCH GT 4とVenu 3は、約2週間の連続使用が可能となっている。いずれも専用の充電ケーブルが必要になるので、旅行にそれを持参しなくて済むのはうれしいポイントと言えるだろう。
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