2024年、キャリアのシェア争いは「経済圏」に--d、Ponta、楽天、旧Tポイント等の違いを表で確認

 2023年、ほかの業界同様にスマホ業界にも値上げの波が押し寄せた。KDDIの「UQ mobile」、ソフトバンクの「ワイモバイル」といったサブブランドでは、通信量を増量しながら基本料金も上げるというプラン改定を実施。NTTドコモの新たなデータ低容量プラン「irumo」も、前身の「OCNモバイルONE」と比較すると、実質的な値上げと言えるだろう。

 一方、各スマホキャリアのメインブランドを中心に見られた動きが、割引サービスの強化だ。グループ内のさまざまなサービスを利用することで貯まる「共通ポイント」を中心とする「経済圏」に取り込むことで、ユーザーの囲い込みを狙う。ただし、各社・各ポイントの戦略には微妙に異なる部分もあるようだ。

  1. 4つのポイントを中心に「経済圏」を構成
  2. au:通信と金融サービスのセットプランを展開
  3. ソフトバンク:ポイント付与率が変わる通信プランを提供
  4. 楽天:楽天モバイルが有利なSPUに変更
  5. ドコモ:金融・決済領域の地盤固めをしてサービスを拡充
  6. 「Tポイント」と統合する「Vポイント」--経済圏競争に与える影響は
  7. それぞれの特徴を表で確認

4つのポイントを中心に「経済圏」を構成

 共通ポイントは現在、スマホキャリアを中心に「dポイント」「Ponta」「楽天ポイント」「Tポイント」の4つのポイントが広く普及している。それぞれを中心に構成する「ポイント経済圏」は、もともと楽天が2006年に発表した「楽天エコシステム(経済圏)」構想をきっかけに広がった言葉で、楽天グループは早い段階から楽天ポイントによる「楽天経済圏」戦略を推進している。

 ほかのキャリアも、dポイントを軸にした「ドコモ経済圏」、Pontaを軸にした「au経済圏」と続く。また、ソフトバンクは2022年3月にTポイントから「PayPayポイント」に移行しており、現在はPayPayポイントが貯まる・使えるスポットを拡大しているという状況だ。

au:通信と金融サービスのセットプランを展開

 各キャリアは従来からメインブランドなどで、自宅の固定電話やインターネットサービスとの割引プランを提供している。セット利用することでドコモや、KDDIの「au」、「ソフトバンク」などで、スマホの月々の利用料金が割引になる。

 そんなセットプランを金融サービスにも広げたのが、2023年9月に登場した「auマネ活プラン」だ。月額7238円のデータ容量使い放題プランと一緒にKDDIグループ内の金融サービスを利用することで、ポイント還元率がアップするといったお得なサービス利用特典を用意する。通信と金融のセットサービスはスマホ業界初の試みだ。

「auマネ活プラン」の発表会にて。(左から)ゲストの田中みな実さん、KDDI 代表取締役社長 CEOの高橋誠氏(写真提供:KDDI)
「auマネ活プラン」の発表会にて。(左から)ゲストの田中みな実さん、KDDI 代表取締役社長 CEOの高橋誠氏(写真提供:KDDI)

 また、auマネ活プランは「au PAYゴールドカード」との親和性が高い。auの通信料金をau PAYゴールドカードで決済することで通常ポイントが10%還元されるが、それがauマネ活プランだと1年間20%還元になる。

 このほか、ショッピング代金をau PAYゴールドカードで決済することで、通常1%還元のところ1.5%還元になる。au PAYゴールドカードからチャージした残高で「au PAY」の決済を行うことで、通常1.5%還元のところ2%還元になる特典も用意されている。

 中でも注目は、ネット銀行の「auじぶん銀行」の円普通預金の金利が、通常0.2%のところ0.3%になること。普通預金の金利は0.001%が標準なので、なんと300倍の金利が得られる。仮に100万円を1年間預金しておくと、税引き後の受取利息は2391円にもなる。

 また、「auカブコム証券」のNISA口座にau PAYゴールドカードでクレカ積立する時にも特典があり、通常1%還元のところ1年間3%還元、以降も2%還元とポイントがアップする。仮に毎月5万円をクレカ積立すると、1年目は1万8000円分、2年目以降は1万2000円分のポイントが獲得できる。投資信託のクレカ積立でこれほどのポイントが得られるサービスはそうないので、資産運用を考えている人は狙い目だ。

「auマネ活プラン」のサービス内容 「auマネ活プラン」のサービス内容
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 KDDIグループはauじぶん銀行を皮切りに、投資、保険・年金、ローンなど、さまざまな金融サービスを拡充。通信サービスと金融サービスのお得なセットプランを提供することで、ユーザーを長期で囲い込むことが可能になり、経済圏をより強固なものにできる。

ソフトバンク:ポイント付与率が変わる通信プランを提供

 金融サービスとセットのauマネ活プランのすぐあとに登場したのが、2023年10月からスタートしたソフトバンクの「ペイトク」プランだ。“魔法のようにポイントが貯まる!”をコンセプトに、プランに応じて「PayPay」で買い物した時のポイント付与率が変わる。

 プランは利用するデータ容量に応じて3つある。30GBの「ペイトク30」は月額7425円で、ポイント付与率が通常+1%(月ごとに上限約1000円分)。50GBの「ペイトク50」では月額8525円で通常+3%(月ごとに上限約2500円分)。使い放題の「ペイトク無制限」は月額9625円で通常+5%(月ごとに上限約4000円分)となっている。

 従来の「メリハリ無制限」(月額6580円)と比べて、「ペイトク無制限」は月額料金が高い。とはいえ通常0.5%のPayPayのポイント付与率がいつでも+5%になるので、8万円の買い物をして得られる上限4000ポイントを各種割引適用後の月額料金7128円に充当することで、実質の月額料金は3128円になる。

「ペイトク」プランの内容 「ペイトク」プランの内容
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 現在、PayPayユーザーは約6100万人。PayPayの親会社であるソフトバンク傘下のZホールディングスは、LINE、ヤフーと合併して、2023年10月から新会社のLINEヤフーになった。今後、LINE、ヤフー、PayPay間の連携が強化され、約5400万人の「Yahoo! JAPAN」ユーザーに加え、約9600万人のLINEユーザーとのアカウント連携も進む予定だ。

 PayPayユーザーの一層の拡大やPayPayの利用促進を図りたい中、ペイトクプランは大きな起爆剤になる。今後、PayPayの子会社である「PayPayカード」はもちろん、グループ内の「Zフィナンシャル」が提供する銀行、証券、保険、ローンなどの金融サービスとも連携が強化され、PayPay経済圏がより確立されていくだろう。

楽天:楽天モバイルが有利なSPUに変更

 auやソフトバンクがスマホの料金プランとの連携で経済圏をより強固なものにするのに対して、楽天経済圏の基板は日本最大級のECサイトである「楽天市場」。楽天グループのサービスを多く利用することで、楽天市場で買い物したときのポイント倍率がアップするプログラムの「SPU(スーパーポイントアッププログラム)」で、グループ内のサービスの利用を促進してきた。

 そのSPUの特典内容が、2023年12月に変更された。新しいSPUでは楽天モバイルの「Rakuten最強プラン」に加入することでポイントが+4倍になり、通常のポイントに加えて、いつでも5倍のポイント倍率が得られるようになった。しかも「楽天カード」を保有していることでポイントが+2倍になるので、Rakuten最強プランと楽天カードを利用するユーザーは、楽天市場の買い物がいつでも7倍になる。

「SPU」の特典内容の変更点(一部) 「SPU」の特典内容の変更点(一部)
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 Rakuten最強プランはデータ無制限が月額3278円で、データを使わなかった月は3GB未満なら月額1078円、3~20GBまでなら月額2178円と、自動で安くなる。仮に+7倍のユーザーが楽天市場で毎月5万円の買い物をすると3500円分のポイントが獲得できるので、スマホ料金を実質無料で利用することができる。

 SPUは、不定期で特典内容が変更になる。今回の変更は、2022年7月の0円プラン廃止に伴って減少したユーザー数を、より効率良く挽回したいという考えが読み取れる。「楽天銀行」との連携や「楽天証券」などの利用でもポイント倍率の特典があり、新しいSPUでは最大16.5倍になる。楽天ではこのSPUと楽天市場によって、ユーザーをうまく経済圏のサービスに誘導している。

ドコモ:金融・決済領域の地盤固めをしてサービスを拡充

 au、ソフトバンクとPayPay、楽天がグループ内のさまざまなサービスに自社ブランド名を掲げ、経済圏のシナジー効果を高めているのに対して、ドコモはその段階に向けて地盤を固める。注力する金融・決済領域では「dカード」や「d払い」などの決済サービスをより成長させつつ、今後は2024年1月から始まった「新NISA」で市場成長が見込まれる資産形成サービスに参入する。

 そのため、マネックスグループとその傘下のマネックス証券と、ドコモマネックスホールディングスを設立。2024年1月4日から業務提携を開始した。現在はマネックス証券の「マネクリ」とドコモの「dメニューマネー」でコラボ記事を制作するほか、マネックス証券でNISA口座や新規口座開設のキャンペーンを開催。今後、初心者向けの資産形成サービスを提供する予定だ。

(左から)NTTドコモ 代表取締役社長 井伊基之氏、マネックスグループ 取締役会議長兼代表執行役会長 松本大氏
(左から)NTTドコモ 代表取締役社長 井伊基之氏、マネックスグループ 取締役会議長兼代表執行役会長 松本大氏

 ドコモは、三菱UFJ銀行とデジタル口座サービス「dスマートバンク」を共同開発し、SMBC日興證券と資産運用サービス「THEO+docomo」で協業している。しかしいずれも自社サービスではなく、他社と比べると金融サービスが弱いという印象を受ける。今回のドコモマネックスホールディングスの設立で、どれくらいサービスが拡充できるのか注目したい。

「Tポイント」と統合する「Vポイント」--経済圏競争に与える影響は

 これら4キャリアのポイント経済圏に加え、2024年春からは“青と黄色のVポイント”がスタートする。これは、SMBCグループ(三井住友フィナンシャルグループ)と三井住友カードが提供する「Vポイント」と、Tポイントが統合して誕生する。

2024年春に開始へ 2024年春に開始へ
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 Tポイントは共通ポイントの先がけで、15万店舗以上の加盟店と約7000万人のユーザーを抱える。一方、Vポイントは三井住友カードを利用することで200以上の国と地域でポイントが貯まったり使ったりでき、現在は約2000万人の会員を有する。

「新ポイントに関する会見」にて。(左から)SMBCグループ 取締役 執行役社長 グループCEO 太田純氏と、CCC 代表取締役会長 兼 CEO増田宗昭氏
「新ポイントに関する会見」にて。(左から)SMBCグループ 取締役 執行役社長 グループCEO 太田純氏と、CCC 代表取締役会長 兼 CEO増田宗昭氏

 新生Vポイントも旧Vポイント同様、クレジットカードでタッチ決済などをすることで国内外どこでもポイントを貯めることができるので、そもそもユーザーを囲い込むという経済圏の概念が存在しない。そんなVポイントと日々の暮らしに根付いた加盟店と多くのユーザーを抱えるTポイントの統合は、現在のポイント経済圏に影響を与えることが考えられる。

それぞれの特徴を表で確認

 これまで説明した各経済圏のさまざまなサービスを、下記にとしてまとめた。それぞれ注力する点が微妙に異なっていることがわかる。

表(筆者にて作成) 表(筆者にて作成)
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 4キャリア、4つのポイントを中心とした4つの経済圏が展開する一方で、三井住友カードという縛りはあるものの、それ以外は何も気にせずクレカ決済するだけというVポイント。その気軽さはポイント経済圏の縛りに窮屈さを感じている人にとって、きっと魅力的に感じるだろう。今春の新しいVポイントのスタートに向けて、ポイント経済圏の新たな動きに注目したい。

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