折りたたみ式「iPhone」への期待--新たなテクノロジーへの興奮をもう1度

Andrew Lanxon (CNET News) 翻訳校正: 編集部2023年12月25日 07時30分

 Appleは9月に新製品発表イベントを発表し、チタニウム素材の採用、USB-C対応などのアップデートを盛り込んだ「iPhone 15 Pro」を発表した。「iPhone 15 Pro Max」には5倍ズームの望遠レンズも搭載された。しかし、折りたたみ式のiPhone――少なくとも、2つに折っても壊れないiPhoneは登場しなかった。今ではサムスンやGoogle、OnePlusなど、多くのモバイル企業から折りたたみスマートフォンが発売されていることを考えると、Appleは出遅れているとさえ感じられる。これは、問題となるかもしれない。

半円状に曲がった架空のスマートフォン
筆者が作成した曲面iPhoneの残念な想像図
提供:Andrew Lanxon/CNET

 Appleは現在、高機能・高価格のプレミアムスマートフォン市場で覇権を取っているが、(価格面だけならプレミアムスマートフォンに分類される)折りたたみスマートフォンは、すでにAppleのシェアをじわじわと切り崩しつつある。Motorolaは、同社の折りたたみスマートフォン「razr」の購入者の実に20%がiPhoneからの乗り換えだったと米CNETに伝えた。サムスンの折りたたみスマートフォンである「Galaxy Z Flip」「Galaxy Z Fold」シリーズは、すでに5世代目に突入している。

縦折り型のスマートフォン
AppleはGalaxy Z Flip5のような小型のフォーマットを選ぶだろうか?
提供:Amy Kim/CNET

 2023年にGoogleとOnePlusが折りたたみスマートフォン市場に参入したことで、Appleは潜在顧客を失うリスクだけでなく、サムスンをはじめとする競合企業に折りたたみスマートフォン市場の支配を許す可能性さえある。そうなれば、Appleが今後折りたたみスマートフォンを出しても不利な戦いを強いられかねない。しかも、折り曲げられるディスプレイという画期的な技術に飛びついたアーリーアダプターたちは、Appleが折りたたみスマートフォンを投入し、「iOS」への乗り換えを促す頃には、Androidのエコシステムに完全に取り込まれている可能性がある。

 もっとも、今のところAppleは安泰だ。2023年の折りたたみスマートフォンの世界販売台数は、全メーカーを合計しても2000万台前後と予測されているが、「iPhone 14 Pro Max」は2023年上半期だけで2650万台も売れたと報じられている。まだ完全にタイミングを逃したわけではないことはAppleも分かっているのだろう。

iPhone 15 Pro Max
iPhone 15 Pro Maxは優れたスマートフォンだ。これが曲げられるとしたらどうだろう?
提供:Andrew Lanxon/CNET

 Appleはこれまで、業界をじっくり観察し、満を持して独創的な製品を発表することで成功を収めてきた。Appleは電話やタブレット、スマートウォッチ、コンピューターを発明したわけではないが、既存の製品を日常生活の中でもっと便利に、もっと価値ある方法で、そしてもちろん、もっと楽しく使う方法を見つけ出した。今、iPhoneや「iPad」、「Apple Watch」、「Mac」シリーズの製品が高い市場シェアを誇っているのはそのためだ。

 Appleなら、折りたたみスマートフォンをどう作るのかを見てみたい。筆者は現在の折りたたみスマートフォンに失望している。かれこれ12年間、記者としてモバイル製品を追ってきたが、スマートフォンはどんどん退屈になっている。今やどの端末も、代わり映えのしない長方形の板にちょっとしたバリエーションを加えたものにすぎない。

 折りたたみスマートフォンなら、何か新しく、真に革新的なものをもたらしてくれるのではないかと期待した。しかし最初の興奮は、この数年間でどんどんしぼみ、今や完全に消えてしまいそうだ。どの端末も悪くはない。ディスプレイを折り曲げられる目新しさは今も健在だ。しかし、人間とスマートフォンの関係に革命を起こすほどの力はない。ボタンを押して文章を入力していた時代に、タッチスクリーンが登場した時のような衝撃はない。

Pixel Fold
Googleの「Pixel Fold」
提供:James Martin/CNET

 筆者は、Googleの「Pixel Fold」が折りたたみスマートフォンを飛躍的に進化させてくれるのではないかと期待した。結果として、Pixel Foldはよくできた製品ではあったが、革命的なところはどこにもなかった。むしろ、Googleが既存の製品を後追いしているように感じられた。「OnePlus Open」についても同じことが言える。もはや筆者の希望はAppleにしかない。かつて製品革命を起こした実績を持つAppleが、この市場にまったく新しい1ページを開き、スマートフォンの使い方を飛躍的に進化させてくれることを期待している。

 しかし、イノベーションは斬新な製品設計からのみ生まれるわけではない。Appleはサードパーティーのソフトウェア開発者と緊密な関係を築いている。折りたたみiPhoneが真に便利なものとなるためには、サードパーティーの協力が必要だ。筆者が既存の折りたたみスマートフォンに抱いている最大の不満は、ハードウェアの出来は良くても、多少UIの工夫があるくらいで、あとは基本的に標準的なAndroid端末にすぎないことだ。つまり、「折り曲げられる普通のスマートフォン」にすぎない。

 折りたためるという特徴を活かした新機能の開発に取り組んでいるAndroid開発者はほとんどいないが、その理由は想像に難くない。まだ十分な数のユーザーがいないため、多様なディスプレイサイズにソフトウェアを適応させるための時間と費用が割に合わないのだ。市場には、すでに複数の折りたたみ形式が存在することを考えると、折りたたみ式のAndroidスマートフォンはすでに、Android陣営を長年悩ませてきた「断片化(フラグメンテーション)問題」を抱えている。つまり、開発者にとってAndroidベースの折りたたみスマートフォンは、通常のスマートフォンよりも対応しにくいプラットフォームなのだ。iPhoneとiPadが証明しているように、Appleはこの状況を変えられる。

iPad Air
Appleの「iPad Air」
提供:Scott Stein/CNET

 Appleが一流の開発者たちと緊密な関係を築いていることを考えると(もちろん、Appleの開発チームも優秀だ)、満を持して登場する折りたたみiPhoneは、「折り曲げられるiPhone」以上のイノベーションを実現するものとなるだろう。

 そうあってほしい、と心の底から願っている。もう一度、新しいテクノロジーにわくわくしたい。新しいガジェットを手にした時の興奮を味わいたい。斬新な機能を初めて試した時の「!」という瞬間を経験したい。

 要するに、これ以上テクノロジーに退屈したくない。次こそ、Appleの出番だ。

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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