ふるさと納税総合サイト「ふるさとチョイス」を企画・運営するトラストバンクは12月7日、「今後のふるさと納税のトレンド予測」を発表した。
2023年のふるさとチョイスのデータと、同社が2022年に立ち上げた調査組織「トラストバンク地域創生ラボ」による「ふるさと納税に関する意識調査2023」をもとに分析。右肩上がりで拡大してきたふるさと納税の市場は、2023年度も過去最高の寄付件数、金額になると予測した。
また、「第1次産業支援」「20代」「価値重視」の3つがトレンドのキーワードになるとした。
昨今の寄付者動向から、返礼品選びにはコロナ禍、物価高といった世の中の関心ごとが強く反映される傾向があるという。相次ぐ自然災害や世界情勢リスクに伴い、日本の食を支える農業・漁業への関心も向上。寄付行動に結びついており、2024年以降も続くと予測する。
2023年の傾向としては、8月下旬から国内の水産業を応援する機運が高まり、魚貝類への寄付が一気に増加。飼料や燃油、肥料の高騰などの影響を受けた農家を支援するガバメントクラウドファンディング(GCF)が開設されると、多くの寄付を集めたという。
特に20代という世代について、ふるさと納税を地域への応援手段として認知し、寄付することで地域への貢献を感じる傾向があると分析。SNSなどを介した情報に敏感で、社会情勢が寄付行動に強く影響し、他世代に比べて「他者を応援する寄付」に対して積極的としている。
また、ふるさと納税でしか出会えない希少な特産品、地場での体験に対して他の世代よりも関心が高く、社会情勢や経済状況などの影響が寄付行動に強く出るとし、今後、地域支援の流れをけん引する存在として、ますます存在感が増すという。「地域の若者×自治体」の共創型GCFプロジェクトも多数登場しており、若者のアイデアを基にしたふるさと納税の活用も進んでいるとしている。
寄付者全体としては、お得感だけでなく品質が高い、地域貢献性が高いといった+アルファの価値を重要視して返礼品を選ぶ傾向があるという。
2022年は物価高の影響から家計の節約志向が強く反映された一方、ふるさと納税を通じて「地域には高品質な特産品が多い」といった認識が広まりつつあること、SDGsの意識の高まりといったことなどから、毎日・長く使う家具などを返礼品に選ぶ人が増えていると分析。
従来の「お礼の品がもらえてお得」「住民税の控除が受けられる」といった経済的なメリットだけではなく、「暮らしに役立つふるさと納税」と「地域を応援するふるさと納税」という2つを意識したより地域貢献性の高い品選び、寄付金の使い道への意識が向上。今後の返礼品選びは、「地域貢献性」「品質」「こだわり」など、金銭面だけでは測れない価値が重視されていくとしている。
トラストバンク 代表取締役を務める川村憲一氏は、調査を発表した同日、2023年のほかのトピックスも紹介。コロナ禍以降の行動制限緩和に伴う「観光・体験型」返礼品の人気が、世代を問わずに拡大していると話す。
「体験型の返礼品は、(コロナ禍に突入した)2020年に減少して以降、徐々に増加。2023年は2019年と比較すると約1.8倍に増えた」(川村氏)。寄付先に実際に足を運ぶことになるため、ふるさと納税以外の地域への経済効果も期待でき、関係・交流人口増につながると語る。また、観光産業に強みがあるなど、特産品が少ない自治体へもチャンスが広がると加えた。
10月に施行されたふるさと納税に関するルール変更などに伴う「駆け込み寄付」現象も説明。調査回答者の8割がルール変更を認知し、そのうち6割がルール変更直前に寄付したとこたえたと紹介する。一方で、「駆け込みをした寄付者の中で、上限まで寄付したとこたえた方は約4分の1。余裕がある寄付者も多く、年末に調整のような寄付をする方も多いのでは」(川村氏)と予想した。
なお、ルールの変更自体は、ポジティブに受け止めているという。「今までよりも、地域に寄付金が残るという良い影響がある。ふるさと納税という制度がより発展するためには一定のルールが必要で、(今回の改正で)より明確になった。ここに合わせてわれわれのサービスもブラッシュアップしていく」(川村氏)と語った。
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