サムスンはスマートフォンやウェアラブル製品だけのメーカーではない。とはいえ、世界のスマートフォン出荷台数の大部分を占める2大企業の1社として、モバイル市場で大きな影響力を持っている。そして同社の「Galaxy S」シリーズは通常、その年の最初に発表される主要モデルであるため、2024年のトレンドの方向性を定める可能性がある。
サムスンの例年の製品発表サイクルや報道、リーク情報に基づいて、2024年に同社から発表されそうなモバイル製品を以下で見ていこう。
サムスンがここ数年と同じ発表パターンを踏襲した場合、Galaxy S24シリーズは2024年最初の数カ月に登場する可能性が高い。
同シリーズでは、人工知能(AI)が大きな役割を果たすと考えられる。サムスンは現地時間11月8日、「Samsung Gauss」と呼ばれる新しい生成AIモデルを発表した。Gaussは基本的に、「ChatGPT」の登場を受けてサムスンが開発したものだ。同社によると、他の類似するAIツールと同じように、Gaussも電子メールの作成や文書の要約、コード作成の支援などの機能を備えているという。Gaussが将来的にどの製品に搭載されるのかは明かされなかったが、Galaxy S24に搭載されても不思議ではない。さらに、同社は10月に、「Exynos 2400」プロセッサーを発表している。Exynos 2400は、AIパフォーマンスを14.7倍向上させ、生成AIによるテキストからの画像生成を可能にするという。
サムスンは通常、特定の市場で販売される特定の「Galaxy」モデルにのみ「Exynos」チップを搭載し、米国などの地域では、Qualcommの最新チップを使用する。だが、Qualcommも次期モバイルプロセッサーの「Snapdragon 8 Gen 3」でAI機能を大幅に強化している。Qualcommは10月下旬、ハワイで開催された「Snapdragon Summit」で同チップのAI機能を披露したが、それは、今後登場するサムスンの新型スマホのExynos版とQualcomm版の両方で、AIが重要な役割を果たす可能性があることを示唆しているのかもしれない。Sam Mobileの記事では、そうなる可能性が高いことがほのめかされており、サムスンは、Galaxy S24でAI機能を前面に押し出す予定だと報じている。
それがどのようなものになるのかは現時点では不明だが、カメラの部分にAIが組み入れられる可能性は高そうだ。サムスンは先頃、「ISOCELL Zoom Anyplace」と呼ばれる動画用の200メガピクセルカメラセンサーの新機能を発表した。この機能によって、将来のスマートフォンでは、動いている被写体を撮影するときに、最大4倍までズームインできるようになるはずだ。ただし、サムスンによると、この機能は200メガピクセルのカメラセンサーがベースとなるため、うわさの「Galaxy S24 Ultra」のみの機能となる可能性が高い。
「Galaxy A」シリーズのスマホは、Galaxy Sシリーズほど知られてはいないが、マルチレンズカメラや高リフレッシュレートの画面など、プレミアム機能をより低価格で提供することが特徴だ。ただし、パフォーマンスやカメラの品質など、特定の機能の性能が抑えられていることも留意しておこう。
同社は通常、Galaxy Aシリーズの新型モデルを3月に発表する(発売時期は地域によって異なる)。2023年の「Galaxy A54 5G」、2022年の「Galaxy A53 5G」もそれぞれ3月に発表された。「Galaxy A55」に関するリーク情報やうわさはまだないが、いつものように、プロセッサーやカメラ、デザインがアップグレードされる可能性が高い。
ただし、Galaxy Aシリーズに搭載されるプロセッサーは通常、フラッグシップデバイスに搭載されるものよりもワンランク下であることを考えると、Galaxy S24シリーズと同じチップが搭載されることはないだろう。
「Galaxy Z Flip5」は、大型化したカバースクリーン、隙間のできないデザイン、強化されたカメラのおかげで、「Galaxy Z Flip4」から大幅に進歩していた。うわさのGalaxy Z Flip6は、Z Flip5をベースとして、新しいプロセッサーなどの、いつもと同じアップグレードが施される可能性が高い。折りたたみ式の形状を活用したソフトウェアも拡充されるかもしれない。Galaxy Clubの記事によると、Z Flip6には、50メガピクセルのメインカメラセンサーが搭載される可能性があるという。Z Flip5のメインカメラは12メガピクセルだったので、これが本当なら、大幅な進歩となる。
同社は通常、フラッグシップのGalaxy Sシリーズと同じチップをGalaxy Z Flipシリーズにも搭載するため、Galaxy S24シリーズと同じAI機能を利用できる可能性もある。もちろん、現時点では、これらはすべて臆測に過ぎず、サムスンが正式に発表するまで、確実なことは分からない。
通常、新しいZ Flipモデルは8月に発表されるが、2023年はそれよりも少し早い7月にZ Flip5が発表された。
Galaxy Z Flipと同様、新型のGalaxy Z Foldも通常は晩夏に発表される。Z Foldの次の展開に関するうわさは、ほとんどない。だが、「Sペン」用のスロットを備え、「Galaxy Z Fold」によく似たデバイスが描かれた特許文書が先頃発見されたことで、サムスンのブック型の次期折りたたみデバイスには、ついにスタイラスの格納場所が設けられるのではないか、との臆測が流れている。それが実現すれば、Galaxy Z Fold6は、生産性デバイスとしての有用性がさらに向上するだろう。
サムスンの過去のZ Foldの発表に基づいて考えると、Z Fold6には、Galaxy S24と同じ新型プロセッサー、いくつかの新しいソフトウェア機能、少しだけ改良されたデザインといったアップグレードが施されるかもしれない。
サムスンのスマートウォッチに関する次の展開は分からないが、引き続き、ヘルストラッキングが大きなテーマになることは予想される。同社は睡眠に注力しており、世界中の「Samsung Health」ユーザーの睡眠行動を調査したことについて、これまでで最も大規模な健康睡眠調査の1つだと主張している。2023年にリリースされた「One UI 5 Watch」ソフトウェアアップデートでも、睡眠関連のデータが同社スマートウォッチの前面に押し出されている。
筆者の同僚のLexy Savvides記者がレビュー記事に書いているように、「Galaxy Watch5」から「Galaxy Watch6」への最大の変更点は、ソフトウェアと画面、バッテリー持続時間に関連するものだった。サムスンはGalaxy Watch7でも同様のアプローチを採用するかもしれない。同社が2024年、AIに注力する可能性が高いことを考えると、次期「Galaxy Watch」にAI機能が組み込まれても不思議ではない。
サムスンは2023年、「Galaxy Buds」の「ファンエディション」である「Galaxy Buds FE」を発表したが、通常モデルとプロモデルを発表してからは、しばらく時間が経っている。「Galaxy Buds2 Pro」は2022年8月、「Galaxy Buds2」は2021年8月に登場した。どちらのイヤホンも、快適なデザインと優れた音質を備えているとして、米CNETのDavid Carnoy記者から高く評価されているが、改善の余地はある。
例えば、Galaxy Buds2 Proの一部の機能はGalaxyスマートフォンでしか動作しないため、他の「Android」搭載スマホを使っているユーザーはあまり魅力を感じないかもしれない。また、通常のGalaxy Buds2はIPX2の耐水性しか備えていない。サムスンが次世代のGalaxy Budsで、こうした欠点に対応してくれることを期待したい。
サムスンは、何年も前からスマートウォッチとワイヤレスイヤホンを販売しているが、スマートリングという新しい分野に進出する可能性もある。韓国のニュースサイトTHE ELECによると、サムスンは2024年第3四半期か2025年第1四半期にスマートリングを発表する可能性があるという。このリングはOuraの「Ouraリング」と同様のウェルネスデバイスになる見通しで、4種類のサイズが用意されるかもしれない、と同記事で報じられている。
サムスンはスマートリングをリリースする計画について、まだ何も発表していないが、ヘルストラッキングはそのようなデバイスのユースケースとして、もっともらしいものに思える。
サムスンは、折りたたみスマホの次の方向性について、さまざまなアイデアを持っているが、同社の未来のコンセプトが実際に製品化されたことはまだない。例えば、「CES 2023」では、タブレットサイズの画面を引き伸ばしてさらに大きくできる折りたたみ画面を備えた「Flex Hybrid」を披露した。これは、サムスンがこの数年間に示してきたいくつかのコンセプトの1つに過ぎない。同社は、アコーディオンのように複数の折り目で折り曲げることのできるモバイルデバイスのプロトタイプも開発している。
同社は、これらのコンセプトがいつ市場に投入されるのか、あるいは、市場に投入されるのかどうかさえ、明らかにしていない。だが、折りたたみスマホが現在のモバイル市場に占める割合はほんの一部に過ぎないものの、その出荷台数は、今後増加していくと予想されている。
2023年は複合現実(MR)にとって大きな年となった。Appleが同社初のヘッドセット「Vision Pro」を発表し、Metaは「Quest 3」を、ソニーも「PlayStation VR2」を発売した。しかし、サムスンのMRの計画に関しては、依然として、ほとんど明らかになっていない。
サムスンとQualcomm、Googleは共同でMRのプロジェクトに取り組んでいるが、3社が2023年2月に提携を発表して以来、それに関するニュースはあまりない。サムスンが予定しているGalaxy S24の発表イベントは、3社のこの提携発表から約1年後に開催される見込みであるため、このイベントで新たな情報が明かされるかもしれない。
同社は、新しいヘッドセットなどの特定のMR製品を開発中かどうかについては、何も語っていない。
2024年になれば、サムスンの製品計画について、より詳しいことが明らかになるだろう。しかし、テクノロジー業界の方向性を考えると、AIが次期製品群の大きな部分を占めることになるのは間違いなさそうだ。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス