NTTは11月7日に、2023年度第2四半期決算を発表。売上高は前年同期比1.2%増の6兆3646億円、営業利益は前年同期比4.6%減の9509億円と、増収減益の決算となった。
同日に実施された決算説明会で、代表取締役社長の島田明氏がその要因について説明。「総合ICT事業」が増収増益を達成、NTTデータグループを主体とした「グローバルソリューション事業」も、国内の公共・法人関連分野の事業拡大に加え為替の影響により大幅な増収となるなど、好調を維持している。
一方で、NTT東日本・NTT西日本(NTT東西)を主体とした地域通信事業は、固定電話の音声関連収入の減少などによって減収減益とのこと。ただ、通期目標達成に向けては「おおむね想定通り」と島田氏は話しており、先行投資や改善の効果が下期に現れることで通期目標を達成できるとした。
その一方で、昨今注目されているNTT法を巡る議論についても、島田氏は改めて説明。NTT東西とNTTドコモの統合について「考えはない」と改めて否定しただけでなく、KDDIやソフトバンクなど競合側が「口約束は信用できない」という旨の説明をしたことについても言及。電気通信事業法の禁止行為規定にドコモとNTT東西の役員を兼務してはいけないなどの規定が存在することから、「そこにNTTドコモとNTT東西を合併してはいけない、と書き足せば済む」(島田氏)と答えている。
また、固定電話のユニバーサルサービスについては、元内閣法制局長官・最高裁判事の山本庸幸氏の意見を取り上げ、電気通信事業法にあまねく普及義務を課して退出規制を設けることは可能だと説明している。
ただ競合側は、NTT法であまねく提供義務が定められている固定電話サービスはメタル回線だけでなく、「ひかり電話」など光IP電話を含めた6000万回線が対象であることから、NTT法による義務は失われていないと主張している。これに対して島田氏は、ユニバーサルサービスとして規定されているのは、あくまでメタル回線を用いた固定電話や、メタルの代わりに光回線を用いて特定地域で提供する光回線電話など1350万回線に限定されており、光IP電話はユニバーサルサービスの対象外だと説明する。
競合側は6000万という数字を総務省に確認した上で提示したとしているが、この点についても島田氏は反論。「もしひかり電話自体がユニバーサルサービスの中(対象)だというのであれば、赤字の所もある。補填金を頂かないといけない」と、ユニバーサルサービス基金から補填がされていないことがその根拠だとしている。
加えて島田氏は、海外の主要な国々でも2000年代に特殊法人法を廃止する動きが進んでいると説明。「20年前に世の中が変わっているのに、20年経ってまた同じ議論をするのか」とし、後ろ向きな議論ではなく「新技術を日本の中で花開かせる未来のビジョンを描いて制度化するのが重要と思う」と話している。
なお、NTTグループではここ最近いくつかトラブルが続いており、島田氏はそれらの事象についても釈明した。1つはNTT西日本の子会社で10月に約900万もの顧客情報が不正に流出した問題であり、島田氏は問題が起きた背景として「ルールはできていたが、実際のガバナンスが効いていなかった」と説明。緊急対策としてルールの適格な実行の確認を進めているほか、USBメモリーの使用を“原則禁止”ではなく“一切禁止”にするなど恒久的な対策も同時に進めているという。
そしてもう1つは、やはり10月に全国の金融機関の決済などを処理する「全国銀行データ通信システム」で障害が発生した問題である。そのシステムを構築したのがNTTデータであり、同社はすでに会見を開き原因や対処などについて説明しているが、島田氏は一連のトラブルに関して「新しいテクノロジーをシステムの中に導入する時は、従来考えていなかったことが起きる可能性がある」として、想定外のトラブルに対処するよう従来以上の検証体制を構築する必要性を説いた。
また、今回の決算説明会では、NTTドコモの代表取締役社長である井伊基之氏が、同社の決算について説明。ドコモ単独での2023年度第2四半期決算は、売上高が前年同期比1.6%増の2兆9464億円、営業利益が前年同期比0.7%増の5808億円と、増収増益となっている。
島田氏の説明にもあった通り、ドコモの増収要因は成長領域と位置付ける法人事業とスマートライフ事業が伸び、政府主導の料金引き下げ影響が残るコンシューマ通信事業をカバーしたことだという。
また、利益に関しては、法人事業とスマートライフ事業がともに先行投資で伸び悩む一方、コンシューマ通信事業のコスト効率化などで増益を達成。ただ、法人・スマートライフ事業の投資は上期で落ち着くことから、下期は一層の増益を見込むと井伊氏は話している。
とりわけ法人事業では、中小企業に向けたICTサポートサービス「まるごとビジネスサポート」のサービス拡充を推し進めるなど、中小企業向けの事業強化に向けた投資が大きく影響しているという。
一方で、スマートライフ事業に関しては、独自の金融決済システムの構築や、XR事業を担う「NTTコノキュー」に関する投資が主だというが、注目を集めたのは金融サービスの強化に向けたマネックス証券の子会社化だ。
井伊氏はマネックス証券の子会社化により金融サービスの強化を打ち出すが、KDDIは「auマネ得プラン」、ソフトバンクは「ペイトク」といったように、競合各社は金融・決済サービスと携帯電話料金を組み合わせたプランの強化を図っている。この点について井伊氏は「現時点では考えていない」とし、当面は料金プランに合わせてサービスをお勧めする方針と説明する一方で、他社の動向によってはキャッチアップする必要性があるとも答えている。
その料金プランに関して、ドコモは7月に大容量の「eximo」と小容量・低価格の「irumo」の提供を開始しているが、井伊氏によると「eximoの選択率が増加して」いるとのことで、eximoを機として従来より上位のプランを選んだり、ドコモの他のサービスを契約したりする人の割合が増えたという。
井伊氏は、新料金プランの提供開始当初は、3GBのプランで各種割引適用により880円で利用できるirumoのインパクトが大きく、そちらの契約が大幅に増えたという。しかし、1~2カ月が経過するとeximoの人気が高まったとのこと。新料金プランの提供によってショップに訪れる顧客も増えていることから、端末を買い替える割合も「毎年2~3割で来客数が減っていたことを考えると、1年前くらい(の水準)に戻っている」(井伊氏)とのことだ。
その端末販売に関しては、同社の決算発表と同日に、総務省が「日々の生活をより豊かにするためのモバイル市場競争促進プラン」を公表。通信契約に紐づく値引き上限額を4万円にするなど、新たな端末値引きの方針が打ち出されている。その内容に対して井伊氏は「1円端末は不適当と感じていたし、安売りで転売ヤーの存在が出てきてしまった反省を踏まえると、総務省の提案はリーズナブル」と答え、評価する姿勢を示す。
加えて井伊氏は、ドコモでも現在、過度な値引きをしない方針を取るようにしていると説明。その結果端末の販売は若干悪くなったというが、その分利益を出して販売できているとのことだ。
井伊氏は、ここ最近問題視されている通信品質の向上に向けた対策についても、300億円を追加投資して対策を進めていることを改めて訴える。この件について島田氏は「2023年12月までに90%(以上のエリアを対策する)と言っているが、できるだけ速い段階で100、120%まで持ち上げていけるようにしたい」と答えており、それに対して井伊氏も「島田社長から檄が飛ばされたと受け止める」と回答し、急ピッチで対策を進めていく姿勢を改めて示している。
さらに井伊氏は、10月23日に楽天モバイルが新しいプラチナバンドの700MHz帯の免許割り当てを受けたことについても言及。この帯域の割り当てはドコモの提案によって実現したものだが、井伊氏はプラチナバンドの割り当てを強く希望する楽天モバイルに割り当てられたことを評価する。一方、免許割り当ての申請をしなかった理由について「われわれはプラチナバンドを持っている。設備投資の優先順位を考えると、そこ(プラチナバンド)よりサブ6など5G領域の投資を優先させたい」と答えている。
また、楽天モバイルの開設計画が2026年3月頃となっており、整備が遅いのではという指摘も出ている。この点について井伊氏は「そのスピード感でやりたいなら、それが望みなんだろうなと思う」とし、アンテナのサイズが大きく整備に時間がかかることもあって「遅いか早いかよく分からない。楽天(モバイル)さんが決めること」と答えた。
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