「つながらない」の声が浮き彫りにしたドコモの現状--他社から数年レベルの遅れ鮮明

 NTTドコモは10月10日、ネットワーク通信品質対策を発表した。

 2023年の春ぐらいから、ドコモのユーザーからネットワーク品質に関する不満の声がSNSなどで多く上がっている。当初は渋谷や池袋などの都心部、ターミナル駅周辺が中心であったが、最近では地方にも拡大している印象だ。

  1. 他キャリアでは数年前に実施済みの対策をようやく
  2. スループット重視なのに改善目標が「HD画質」の違和感
  3. 世界トップのネットワークを目指すべきでは

他キャリアでは数年前に実施済みの対策をようやく

 発表会で実際にドコモのネットワーク通信品質に対する改善策を聞いたが、第一印象としては「後手後手」に回っており、他社に比べても大きく遅れている感が強かった。

 例えば、ドコモでは駅や繁華街、住宅地など全国2000カ所以上で集中的に対策を実施。さらに乗降客の多いJRや私鉄などの鉄道動線を強化するという。

 しかし、鉄道動線を強化する考え方はKDDIが5G開始当初から行っており、2021年6月にはJR東日本の山手線全30駅、JR西日本の大阪環状線全19駅のホームで、5Gネットワークの構築を完了しているほどだ。

 また、ドコモはSNSによるユーザーの声を分析して対策場所の特定に活用していくという。確かに ユーザーが通信品質に不満を感じると、まずSNSにつぶやくし、「同じ状況の人がいたりしないかな」とSNSで調べたりする。

 ただ、今から2年前の2021年11月に、KDDIのネットワークオペレーションセンターを取材したことがあったが、すでに当時から、巨大なディスプレイに各基地局の通信状況だけでなく、X(当時はTwitter)でのネットワーク品質に対する不満をチェックしていた。また、つぶやきの数だけではなく発言内容をリアルタイムに抽出して、状況をチェックしていたのが驚きであった。

 しかも、auネットワークだけでなく、ドコモ、ソフトバンク、楽天モバイルなど他キャリアユーザーのつぶやきも抜き出しており、ライバルのネットワーク品質に対する不満の声が手に取るようにわかっていたのだ。


 ちょうど、同じようなタイミングでドコモのネットワークオペレーションセンターも取材する機会があったのだが、SNSを検出している様子はなかった。その後、2023年7月の取材では、ドコモネットワークオペレーションセンターでもSNSの反応をチェックするようになっていたが、発言の総数を確認している感じであった。とはいえ、「SNSの声を重視する」という姿勢はドコモもより他社のほうが圧倒的に早かった印象だ。


 また、ドコモではユーザーが利用する「ドコモスピードテストアプリ」の調査データを活用していくという。

 ただ、こうした取り組みもソフトバンクがとうの昔に実施している。携帯電話事業に参入し、iPhoneを取り扱い始めたものの、ユーザーから「iPhoneは欲しいが、ネットワーク品質がひどくてソフトバンクとは契約したくない」とさんざん批判されていた頃から、様々なアプリでネットワークが圏外の場所を把握し、ビッグデータとして集める仕組みを構築。ネットワーク品質の向上に役立てていた。

 ドコモも本来なら「d払い」など、ユーザーが日常的に使いアプリに仕込めるのが理想だが、「スピードテストアプリ」という、かなりマニアックなアプリにしか仕込めておらず、どこまでデータが集まり、対策に役立てられるかは不透明だ。

スループット重視なのに改善目標が「HD画質」の違和感

 もうひとつ、ドコモに対して不安を感じたのが、通信品質評価で「スループット」を重視している点だった。

 スループットとは、スマホを使い通信をする上での平均速度のようなものだ。確かに速度測定アプリなどではスループットを測定し表示するため、「このネットワークは速い」などわかりやすい指標となる。

 ただ、ここ最近、ネットワーク品質に対して評価の高いソフトバンクの場合、スループットではなくユーザーの「体感」を重視しているという。

 ユーザーがスマホを操作し、何かしらをタッチしたとする。その操作は無線ネットワークから基地局を経由しインターネットに流れ、サーバーに届き、データがユーザーのもとに返ってくる。そこまでの時間、反応速度の速さこそが「ユーザーがイライラしない快適に使えるネットワーク」というわけだ。

 実際、世界でキャリアのネットワーク品質を調査し、ランキングをつけている調査会社「OpenSignal」もスループットより体感速度を調査で重視しているようだ。

 5Gの開始によって「スループット」は訴求しやすい要素だが、実際のユーザーの使い勝手でいえば「体感速度」のほうが重要というわけだ。

 もうひとつ、突っ込みたくなるのが、ドコモとしてスループットを重視している割には、対策後の品質水準が「HD画質の動画を不便なく視聴できる」レベルに留まっているという点だ。

 本来であれば5Gネットワークによって、4Kや8Kの映像が楽しめるはずではなかったか。それが「HD画質を不便なく視聴できる」というレベルに留まっているのは何とも悲しい。

世界トップのネットワークを目指すべきでは

 ドコモとしては将来需要を見据えて300億円の先行投資をして、ネットワーク品質の改善をするという。一方でドコモは、インフラシェアリングの会社であるJTOWERに通信鉄塔を譲渡して、1000億円以上を手にしている。

 JTOWERはドコモから通信鉄塔を譲り受け、他社の基地局を搭載するビジネスモデルを展開しつつある。

 ドコモはJTOWERへの譲渡で1000億円近い資金を手にしているのだから、300億円なんてケチなことはいわずに、1000億円を元手にもっと将来に向けたネットワーク品質改善に投資を続け、ユーザーの不満を解消し、他社に負けない、世界トップレベルのネットワークを構築すべきではないだろうか。

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画広告

企画広告一覧

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]