Googleのスマートフォン「Pixel」はハードウェアが売りの機種ではない。業界が折りたたみディスプレイや100倍ズームカメラ、アクションボタンなど、あの手この手でユーザーを引き付けようとする中、Pixelは常に「頭脳派」の立ち位置を崩さず、アルゴリズムと機械学習によってスマートフォンの可能性を押し広げてきた。今やユーザーは、目新しいハードウェアの必要性を疑問視するまでになっている。ポートレート写真を撮るのに、はたして望遠レンズが本当に必要だろうか、と。
Googleの最新スマートフォン「Pixel 8」と「Pixel 8 Pro」は、筆者の懐疑心と好奇心を過去最高レベルにまで高めた。スマートフォン開発に対するGoogleのアプローチは一貫しており、特に今回は検索、写真、電話、カメラアプリなど、幅広い場面で人工知能(AI)が活用されている。このため、Pixelユーザーは今後、写真を撮る時も身近な人とコミュニケーションをとる時も、常に「AIに助けてもらう」という選択肢を考慮に入れることになるだろう。
AI搭載スマートフォンの可能性に興味がある人も、新型Pixelの性能に関心がある人も、ぜひ続きを読んでほしい。
曲線を感じるデザイン:デザイン面の変更はわずかで、前モデルの「Pixel 7」を横に置いて比べない限り、両者の違いは分からないかもしれない。Pixel 8もPixel 8 Proも角が丸くなり、握った時に手のひらに食い込む感覚が減った。背面ガラスがエッジ部分に向かってカーブしていることも、なめらかな手触りにつながっている。
個人的に気に入ったのは、Pixel 8 Proに採用されている素材だ。2022年モデルは光沢仕上げだったのに対し、最新の2023年モデルはサテン/マット仕上げになっている。この変更により、特にObsidian(ブラック)カラーでは指紋汚れが劇的に軽減された。このカラーのレビュー機を同僚の記者が箱から取り出すのを初めて見た時は、そのマットな黒に羨望の眼差しを向けずにはいられなかった。
幸い、筆者の元にやってきたBay(ブルー)も今ではすっかりお気に入りだ。クリアタイプ以外のケースで覆ってしまうのはもったいないと感じるほど生き生きとしたブルーには、最近のPro、Ultra、Maxタイプのスマートフォンには珍しい遊び心がある(「iPhone 15 Pro」のカラーは退屈に感じられる)。
なめらかで明るい「Actuaディスプレイ」:Pixel 8のActuaディスプレイ、Pixel 8 Proの「Super Actuaディスプレイ」はどちらも明るさが最大の特徴だ。最近はアウトドアで遊ぶ時にスマートフォンを使うことが格段に増えたので、このアップデートは特にありがたい。写真のアングルを決める時も、会議と会議の合間にGoogleマップをさっと確認したい時も、明るく見やすいディスプレイは大いに役立つ。
Pixel 8 Proのディスプレイ(2400ニト)の方がPixel 8のディスプレイ(2000ニト)より明るいが、Pixel 8でも直射日光の下で問題なく使えた。これは過去のPixel、1800ドル(日本では25万3000円)もする「Pixel Fold」でさえできなかったことだ。リフレッシュレートも向上した。リーズナブルなPixel 7a(最大90Hz)との差はさらに広がり、上位機種のPixel 7 Pro(最大120Hz)と肩を並べる。これは重要なポイントだ。というのもPixel 8シリーズは前年モデルからそれぞれ100ドルずつ(日本では3万円ほど)値上がりしているため、アップグレードは何であれ歓迎だ。
地味だが重要なカメラの進化:Pixelはカメラ機能に定評があるが、Pixel 8とPixel 8 Proのカメラは間違いなく、競合他社の上位モデルと互角の勝負ができる仕上がりだ。ハードウェア面では、すべてのセンサーの光感度が向上し、Proの場合、メインの広角カメラは5000万画素、絞り値f/1.68、超広角カメラは4800万画素、絞り値f/1.95、Proモデルにしかない望遠カメラは4800万画素、絞り値f/2.8となった。その結果、過去モデルよりも精細で忠実な色出しが期待できる。カメラの進化は、特に低照度環境で感じられるはずだ。
例えば、この写真はPixel 8 Proのカメラを使って、薄暗いトンネル内を走る(驚くほど空いた)ニューヨークの高速バスの中で撮影したものだ。感心したのは、最前列から最後列まで、すべての座席の質感、窓に貼られたステッカーの文字など、細部がよく描写できていることだ。撮影中は車体があらゆる方向に揺れていたことを考えると、手ぶれ補正とHDR機能も強力に効いていることが分かる。
別の写真も見てほしい。これはPixel 8 Proの超広角レンズ(4800万画素)を使って撮影した1枚だ。Pixel 8シリーズはマクロモードを搭載しており、わずか2cmの距離まで被写体に近づける。この鉢植えの画像はディテールとセンターフォーカス、そして超広角レンズが生み出すエッジ部分のゆがみ効果が気に入った。つまらない写真になりそうなところに、ほどよいパンチが加わったと思う。
もっと遊んでみよう。下の写真は、地元の公園で開催された野鳥観察会で撮影したものだ。かわいらしさが伝わるだろうか。なお右の画像は、左の元画像を拡大したものではない。AIを活用した新しい画像編集機能「編集マジック」を使って鳥の位置を変えたり、サイズを変えたりしているうちに、小さな鳥がうんざり顔の別の生き物に変身してしまった。
要望を言うなら、今後は被写体を拡大した時に自動的にシャープネスが加わるようにしてほしい。そうすれば、例えば修正後の写真でも鳥が周囲になじんでみるようになるはずだ。
Googleの「Tensor G3」:編集マジックなどの機能は、最新のGoogle純正チップであるTensor G3によって可能になったものだ。このチップは、アプリのブラウジング、マルチタスク、動画の視聴といった一般的なタスクはもちろん、「Googleアシスタント」や「Googleフォト」のようなAIを利用するサービスも支えている。パフォーマンスも安定しており、Pixel 8でもPixel 8 Proでも使用中に目立ったトラブルに遭遇したことはない。Pixel 8 Proで「YouTube」の動画を再生しながら360度の映像を編集するといった負荷の高い作業もしてみたが、不具合は起きなかった。
ここからはPixel 8シリーズの主なAI機能を、使いやすさと実用性の観点から評価していきたい。点数は、筆者の個人的な評価だ。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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