トヨタ自動車と出光興産は10月12日、バッテリーEV(BEV)用の有力な次世代電池である全固体電池の量産化に向けて、固体電解質の量産技術開発や生産性向上、サプライチェーン構築で協業すると発表した。
両社の材料開発技術と、出光の材料製造技術、トヨタが電動車開発で培った電池加工・組立技術を融合させ、6月に「Toyota Technical Workshop」で公表した2027〜2028年での全固体電池実用化を確実なものとし、その後の本格量産を目指す。
今回の協業は、柔らかく他の材料と密着しやすく、電池の量産がしやすい硫化物系の固体電解質が対象。BEV向けに高容量・高出力が発揮しやすいという。
本格量産に向けた数十名規模のタスクフォースを立ち上げるとともに、「硫化物固体電解質の開発と量産化に向けた量産実証(パイロット)装置の準備」という第1フェーズ、「量産実証装置を用いた量産化」の第2フェーズ、「将来の本格量産の検討」の第3フェーズを設定し、協業を進める。
具体的には第1フェーズで、両社の技術領域へのフィードバックと開発支援を通じ、品質・コスト・納期の観点で、硫化物固体電解質を作り込む。出光のパイロット装置を用いた量産の実証につなげる。
第2フェーズでは、出光はパイロット装置を製作・着工・立ち上げ、硫化物固体電解質の製造と量産化を推進する。またトヨタは、当該硫化物固体電解質を用いた全固体電池と、それを搭載した電動車の開発を推進する。
第3フェーズでは、第2フェーズの実績をもとに、将来の本格量産と事業化に向けた検討を両社で実施するとしている。
出光は、石油精製の過程で得られる副産物を活用して、固体電解質の中間材料である硫化リチウムの製造技術を培い、安定供給体制の構築を目指した量産技術の開発に取り組んでいる。小型実証設備の能力増強やパイロット装置の建設計画を進めているという。
また、トヨタは、電池技術の将来性を見据え、液系電池の先にある選択肢として全固体電池を開発してきた。両社は2013年以降、耐久性などの課題解決に取り組み、性能と耐久性を両立できるめどがついたという。
出光興産 代表取締役社長を務める木藤俊一氏は、「硫黄成分は、石油製品の品質を向上させることで副次的に生まれるもの。われわれは、有用性をいち早く1990年代半ばから見い出し、長年にわたって培った研究力と技術力によって、固体電解質を生み出すことに成功した。この固体電解質が今まさに、モビリティの新しい未来を切り拓かんとしている」と、協業を歓迎した。
トヨタ自動車 代表取締役社長を務める佐藤恒治氏は、「ここからはモノづくりのフェーズで、『実現力』が大切になる。両社の力をひとつにして全固体電池を量産化し、日本発のイノベーションを実現する。みんなでモビリティの未来をつくっていく」と話した。
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