テクノロジーを活用して、ビジネスを加速させているプロジェクトや企業の新規事業にフォーカスを当て、ビジネスに役立つ情報をお届けする音声情報番組「BTW(Business Transformation Wave)RADIO」。スペックホルダー 代表取締役社長である大野泰敬氏をパーソナリティに迎え、CNET Japan編集部の加納恵とともに、最新ビジネステクノロジーで課題解決に取り組む企業、人、サービスを紹介する。
ここでは、音声番組でお話いただいた一部を記事としてお届けする。今回のゲストとしてご登場いただいたのは、トヨタ自動車の子会社で、IP(知的財産)と計測シミュレーションを手掛けるトヨタテクニカルディベロップメント(TTDC)代表取締役社長執行役員の香川佳之氏。柱となる2つの事業の現状と、コロナ禍でスタートしたという新たな取り組み、新事業創出について聞いた。
加納:最初にTTDCについて教えてください。
香川氏:トヨタテクニカルディベロップメントと大変長い名前になりますので、通常はTTDCと略していただいています。トヨタ自動車の子会社で、IP(知的財産)と計測シミュレーションの2つが事業のメインです。
IPでは、トヨタグループ内の開発段階で発生する特許の取得サポートや技術動向調査、計測シミュレーションでは、長さや重さ、光の量などあらゆるものを計測しています。工業の世界では「測れないものは作れない」という言葉があるくらい、計測は重要な部分です。また自動運転や電気自動車の性能の正しさをコンピューター上でシミュレーションする事業もしています。IPと計測そのの専門会社として立ち上げたのがTTDCになります。
加納:IP、計測とかなり専門性の高い事業になりますね。
香川氏:社内では我々は「開発惑星の大気圏」と例えていて、何かを開発するときの状態を星になぞらえ、水や光、空気を与える大気圏のような存在でありたいと思っています。知的財産などは、技術をプロテクトする、会社の技術を守るという役割を担う。つまり、惑星の周辺の環境を整備するのが我々だということです。
大野氏:計測シミュレーションにおいての強みはあたりですか。
香川氏:一番強いのは、車のシステムを制御するコンピューターに入ってくる信号を取り出して見える化することです。エンジンの場合は燃料はどのくらい噴出するのかなど、コンピューターがすべてを司っています。センサーから複雑で大量な信号を取り出してビジュアル化します。自動運転となれば、自動運転などではとてつもない数の目や耳の代わりとなるセンサーが必要になりますが、それらの信号を同時に取り出して見える化することが得意な部分です。
大野氏:センサーも自社開発ですか。
香川氏:TTDCとして直接ものづくりはしていないのですが、計測器の企画や設計は行いますし、お客様各社が使用されているセンサーを組み合わせたソリューション提供が得意な部分でもあります。
大野氏:専門技術の高い2つの事業を持ちながら、新しく新規事業組織を立ち上げたそうですね。
香川氏:きっかけはコロナで、感染が拡大した当初は困りごとがたくさんありましたよね。ただ、ものづくりの会社であれば、足で踏んで出す消毒液装置やマスクを作るなど、社会に貢献ができた。もちろんTTDCでも何かできないかと議論を重ねたのですが、すぐに役立てられることがなかった。私自身、大変悔しい思いをしました。世の中に役立つことを自分たち発でできることは社員の自信やモチベーションにもつながると考え、新規事業へチャレンジしたのがスタートでした。
大野氏:新規事業に取り組む企業は多いですが、ポイントはどのあたりですか。
香川氏:現在、3期目を迎えますが、まずは社内公募から始めました。初回に130件程度ほどものアイデアが集まりました。良いアイデアを持っていたり、新しいことをやりたい社員が結構いることが初めて分かりました。もちろんやるのであれば丁寧に育てたいですから、新規事業は社長直下の組織にして進めています。
加納:社長直下の組織にしているメリットはどんな部分でしょう。
香川氏:既存事業が忙しい中で、新事業をどう育てるのか? 新規事業は目に見える成果が少ないですから、周りの人から「何をやっているんだろう」と思われてしまいがちです。一方で新事業をバックアップするために既存事業からリソースや人材、資金も充てていかなければならない。これは社内での納得が得られにくい部分だと思いますので、社長がしっかり見ていること、リソースの配分も社長自らが決めること、そして会社としてやる意義があるということをみんなに伝えながら進められることが一番大きなメリットだと考えています。
下記の内容を中心に、音声情報番組「BTW(Business Transformation Wave)RADIO」で、お話の続きを配信しています。ぜひ音声にてお聞きください。
大野泰敬氏
スペックホルダー 代表取締役社長
朝日インタラクティブ 戦略アドバイザー
事業家兼投資家。ソフトバンクで新規事業などを担当した後、CCCで新規事業に従事。2008年にソフトバンクに復帰し、当時日本初上陸のiPhoneのマーケティングを担当。独立後は、企業の事業戦略、戦術策定、M&A、資金調達などを手がけ、大手企業14社をサポート。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会ITアドバイザー、農林水産省農林水産研究所客員研究員のほか、省庁、自治体などの外部コンサルタントとしても活躍する。著書は「ひとり会社で6億稼ぐ仕事術」「予算獲得率100%の企画のプロが教える必ず通る資料作成」など。
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