グーグルの最新スマートフォン「Google Pixel 8」と「Google Pixel 8 Pro」の国内販売がスタートした。「Google Pixel 7a」「Google Pixel Fold」から引き続き、NTTドコモの4.5GHz帯(n79)がサポートされていて、キャリアではドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの3社がそろって取り扱う。
ラインアップは、Pixel 8が8GBのRAMと128GBまたは256GBのストレージ、Pixel 8 Proが12GBのRAMと128GB、256GB、512GBのストレージ。「Googleストア」での直販価格(以降、価格は全て税込)はPixel 8が11万2900円~、Pixel 8 Proが15万9900円~となっている。
どちらもグーグルが独自開発するチップセットの最新版「Google Tensor G3」と、最新OSの「Android 14」を搭載。写真から不要なものを消せる「消しゴムマジック」に代表されるような、オンデバイスでの高速処理を前提としたAI機能が、さらに強化されている。メーカーから発売前の製品を借りることができたので、前モデルからの進化点や、Pixel 8とPixel 8 Proの違い、新しいAI機能についてレビューしたい。
まずはディスプレイから。Pixel 8は約6.2インチ、フルFD(1080×2400)の「Actuaディスプレイ」、Pixel 8 Proは約6.7インチ、QHD+(1344×2992)の「Super Actuaディスプレイ」を搭載する。これはGoogle Pixel史上、最も明るいディスプレイとのこと。最大輝度はPixel 8が1400ニト(ピーク輝度2000ニト)、Pixel 8 Proが1600ニト(ピーク輝度2400ニト)となっていて、実際にギラギラの太陽光下でも見やすい。どちらもOLEDだが、Pixel 8 Proはより省電力性能に優れた、LTPO OLEDを採用。可変式のリフレッシュレートに違いがあり、Pixel 8は60~120Hz、Pixel 8 Proは1~120Hzをサポートしている。
搭載バッテリーはPixel 8が4575mAh、Pixel 8 Proが5050mAhだが、仕様上のバッテリー駆動時間はどちらも24時間以上となっている。筆者の体感でも1日以上は使えるという印象で、両者のバッテリー持ちに大きな違いはない。
Pixel 8のサイズは、高さ150.5m×幅70.8mm×奥行き8.9mm、重さ187g。前モデルの「Google Pixel 7」からぐっとコンパクトになっていて、そのサイズ感はPixel 7aに近い。片手操作可能な持ちやすいスマートフォンが欲しい人には、うれしい変更点だろう。
対するPixel 8 Proは、高さ162.6m×幅76.5mm×奥行き8.8mm、重さ213g。前モデルの「Google Pixel 7 Pro」からサイズを大きく変えていない。相変わらずのヘビー級だが、角は丸く、ディスプレイはフラットに変更されている。この形状については好みが分かれるかもしれないが、筆者は前モデルよりも持ちやすいと感じた。
背面に大きく横たわる「カメラバー」など、「Google Pixel 6」から続くデザインアイデンティティはそのまま。一方でPixel 8 Proでは、前モデルで独立していた望遠レンズがひとまとめになるなど、カメラ周りのデザインにも変更が加えられている。フラッシュライトの下には、Pixel 8 Proだけの新たな機能として、表面温度を瞬時に測れる温度センサーも搭載されている。
背面のカメラは、Pixel 8が50メガピクセル(F値1.68)の広角カメラと、12メガピクセル(F値2.2)の超広角カメラの2つ。Pixel 8 Proが50メガピクセル(F値1.68)の広角カメラと、48メガピクセル(F値1.95)の超広角カメラ、48メガピクセル(F値2.8)の光学5倍望遠カメラの3つを搭載する。
どちらもマクロ撮影に対応していて、特にPixel 8 Proは、約2cmの距離までぐっと近づいた撮影が可能。フロントカメラはどちらも10.5メガピクセル(F値2.2)で、画角を2段階に切り替えられるようになっているほか、Pixel 8 Proではオートフォーカスもサポートされている。
Pixel 8とPixel 8 Proのカメラの最も大きな違いは、望遠カメラの有無だろう。Pixel 8は最大でデジタル8倍までだが、Pixel 8 Proは光学5倍、最大でデジタル30倍までの撮影が可能。またPixel 8 Proのカメラには新たに、50メガピクセルの超高解像度撮影やRAW撮影、レンズの切り替えなどを手動でできる「プロ設定」も追加されている。ホワイトバランスやシャッタースピードなども設定でき、好みの写真撮影が楽しめる。さらに今後のアップデートで「動画夜景モード」など、動画をよりきれいに撮れる「動画ブースト」も追加されるという。
カメラそのものも進化しているが、やはり注目なのは撮影後の写真にさまざまな手を加えられる「Googleフォト」だ。写真から不要なものをワンタップで消せる「消しゴムマジック」、ピンボケ写真をシャープに補正できる「ボケ補正」など、今やGoogle Pixelシリーズの代名詞となりつつあるAI機能の多くは、このGoogleフォトで利用できる。
今回は複数枚の集合写真からベストな顔を集められる「ベストテイク」や、生成AI技術を用いてあとからトリミングを変更し、映っていなかったものまで作り出せる「編集マジック」、動画の音声データから声、音楽、周囲の人、自然、ノイズ、風などの音を切り分け、低減できる「音声消しゴムマジック」などが、新たに追加された。これらの機能はPixel 8/Pixel 8 Proを使用すれば、Googleフォトにアップされている古い写真や動画にも適応できる。
写真を簡単に切り抜けるものや、「消しゴムマジック」に類似する機能は他メーカーのスマートフォンでも見かけるが、「編集マジック」や「音声消しゴムマジック」のような機能は、さすがに一歩抜きん出ている感がある。
AI機能では写真のほかにも、音声から文字起こしができる機能が進化していて、話している言語を自動的に判別できるようになった。たとえば音声入力アシスタントでは、ポーズしながら話すことで、複数言語を交えた入力が可能に。また、文字起こしが可能なレコーダーは、事前に指定しなくても言語を自動判別してテキスト化できる。ただし、筆者が試した限り、これらの機能はまだ、複数の言語が混じった会話をフレキシブルに判別できるというレベルにはなく、たとえば逐次通訳を正しく文字起こしするといったことは難しそうだ。
このほか、Pixel 8とPixel 8 Proはおサイフケータイに対応し、IP68相当の防水・防塵をサポート。今後7年間の長期にわたり、OSやセキュリティのアップデートを行う、サポートの強化も発表されている。物価高や為替の影響もあって、販売価格は前モデルに比べてかなり高くなっているが、ディスプレイやカメラといったハードウェアが大きく進化し、かつサポートも充実しているという意味では、長く使用できる端末とも言える。
なお「ベストテイク」や「編集マジック」、「音声消しゴムマジック」などのAI機能が使えるのは、今のところPixel 8とPixel 8 Proだけ。Android 14にアップデートしても、前モデルでは利用できないことを確認済みだ。ただし、おそらく2024年に発売されるであろう割安モデルの「Pixel 8a」では、サポートされる可能性が高い。大きく進化したディスプレイやカメラ機能と、これらAI機能の価値をどう考えるかが、今買うか待つかの見極めポイントとなりそうだ。
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