テクノロジードリブンの人材サービス企業へ--パーソルHDがグループ横断で取り組むテクノロジー人材拡充

 2023年8月23日に開催された「CNET Japan オンラインカンファレンス2023 企業のこれからに必要不可欠 「デジタル人材」獲得の秘策と実行」に、パーソルホールディングス(パーソルHD) グループテクノロジー推進本部 本部長 内田明徳氏が登場。「グループ横断のテクノロジー戦略の牽引 -DX人材の採用・組織開発・リスキリング-」と題して、同社が実践する独自のテクノロジー戦略と、テクノロジー人材育成に向けたリスキリング/アップスキリングの取り組みについて語った。

(画面右)パーソルホールディングス(パーソルHD) グループテクノロジー推進本部 本部長の内田明徳氏、(左)モデレーターのCNET Japan編集部の佐藤和也
(画面右)パーソルホールディングス(パーソルHD) グループテクノロジー推進本部 本部長の内田明徳氏、(左)モデレーターのCNET Japan編集部の佐藤和也
  1. CoE組織でグループ全体のテクノロジー戦略を推進
  2. パーソルグループの中期経営計画におけるテクノロジー戦略の方向性
  3. テクノロジー人材の確保・育成・評価機能をHDに集約
  4. 経験者採用+異職種人材の育成でテクノロジー人材を2000人に
  5. 年間100人程度のテクノロジー人材採用・育成を目指す

CoE組織でグループ全体のテクノロジー戦略を推進

 パーソルグループは、6万人以上のグループ従業員を抱え、売上高1兆円を超える総合人材サービス企業である。1973年に創業した人材派遣の「テンプスタッフ」をはじめ、正社員領域の転職支援サービス「doda」、テクノロジーやBPOなどによる業務支援など時代の要請にあわせて事業を拡大、多様なサービスを手掛けており、「はたらいて、笑おう。」というグループビジョンの元で活動している。

 同社では今年度からの中期経営計画の中で、経営の方向性を「『テクノロジードリブンの人材サービス企業』への進化」と定め、事業成長のエンジンとして、「人的資本」「テクノロジー」「ラーニング」を示している。内田氏は同社が掲げる成長戦略について、「人材リソース提供の領域にとどまらず、デジタルの力を活用し人とテクノロジーの両方で事業の価値を上げていきたい。さらに、非連続で成長していく形の新しい事業モデルも作っていきたいと考えている」と説明する。

パーソルグループの中期経営計画
パーソルグループの中期経営計画

パーソルグループの中期経営計画におけるテクノロジー戦略の方向性

 パーソルグループは、テクノロジードリブンの人材サービス企業を実現するための組織として、グループ内にCoE(Center of Excellence)を設置。同組織をハブとして、グループ全体のテクノロジー人材・組織を拡充し、各事業・サービスでの実装と活用を強化する形となっている。その中で、テクノロジー領域を「顧客体験」「従業員体験」「デジタル化」「DX」の4象限に分解し、それぞれにテーマを掲げて投資をしていく。また、テクノロジー戦略を実行していくための組織として、経営ボードの下部組織として「テクノロジー委員会」が置かれ、各事業・機能からキーマンが参加し、戦略・方針の策定やリソース配分の審議を行っている。パーソルではこれらの体制のもとで、グループ共通のテクノロジー戦略を回していく形となっている。

テクノロジー戦略の方向性・推進体制
テクノロジー戦略の方向性・推進体制

テクノロジー人材の確保・育成・評価機能をHDに集約

 そしてテクノロジー戦略の核になっているのが、テクノロジー人材の確保、育成、配置にかかわる機能をホールディングス(HD)に集約していることである。「採用や人材育成、制度運用の機能を集約し、そこで一括採用して人材プールを作っている。人材は数百名規模になっていく計画で、そこから重要度や想定効果によって、各事業の案件に戦略的にアサインを掛けていく」(内田氏)という形となっている。

 このような戦略を策定した背景として内田氏は、テクノロジードリブンの人材サービス企業へ進化するためにテクノロジー人材の拡充が急務であることを挙げる。そこで、「採用アセットを集中して、足りないところに戦略的にアサインしていく。それをしながら人材を増やし、中長期的にはパーソルのテクノロジーブランドを向上させてハイスキル人材をさらに獲得できるようにし、長期的はグループのテクノロジー人材の質と量を圧倒的に増やすようにする」(内田氏)との道筋を描いている。

パーソルグループにおけるCoE組織体制
パーソルグループにおけるCoE組織体制

  テクノロジー人材の獲得および働きやすい環境を構築するために、同社ではグループテクノロジー推進本部で、テクノロジー人材専門の採用・制度運用を独自に行っているという。採用ではテクノロジー専門の採用部隊を編成し、各プロセスで情報収集から実行、改善のサイクルを回して市場での採用力向上に努めている。特に評価制度については、「PE(プロダクトエンジニア)制度」という専門の人事制度を構築。スキルが上がるとその価値が市場連動し、市場価値に見合った報酬を支払う仕組みを導入している。

 「スキルを上げるために、OKR(Objectives and Key Results:目標と主要な結果)のようなチャレンジングな目標を置いて、職種と定義も細かくし、業績連動がない年俸制での報酬という形に変えた。6職種でそれぞれサブ職種を置いて、年4回評価をしながらスキル向上を促す形になっている」(内田氏)

独自のテクノロジー人材採用人事制度
独自のテクノロジー人材採用人事制度

 働き方についても、パーソルホールディングスのテクノロジー人材においては、リモートワークをほぼ100%にしていることに加え、全国のどこからでも仕事ができる「居住地フリー制度」を採用。さらに副業をするエンジニアが増えている中で、「グループ内複業制度」として、グループ各社からの求人や支援の依頼に対し、個人事業主として複業をして別の報酬を得られるという取り組みを実践している。これにより、グループ内での人材不足という中で自社のニーズとマッチングさせて、双方がメリットを得られる形となっている。

 さらにテクノロジー先進企業としてのブランド向上とテクノロジー人材のモチベーションアップを目的として、自らの成果を発表できるオウンドメディア[TECH DOOR]を運営して情報を外部に発信するほか、セミナーを含めたメディアへの露出も積極的に進め、「パーソルグループが本気でテクノロジー人材強化に取り組んでいることを知ってもらうようにしている」(内田氏)とのこと。

経験者採用+異職種人材の育成でテクノロジー人材を2000人に

 これらの取り組みによりパーソルグループでは、コアテクノロジー人材とテクノロジー活用人材をあわせて現在の1000人強から2000人へと増やす計画だという。ただし、「昨今の採用事情を鑑みると、人材拡充を経験者採用のみに絞るという構造には非常にリスクがある」(内田氏)。そこで同社が採用と同様に力を入れているのが、非テクノロジー部署からコアテクノロジー人材に転身・異動する「リスキリング」と、異動を伴わずにテクノロジー活用人材を目指す「アップスキリング」による育成である。

アップスキリングとリスキリングによるテクノロジー人材育成イメージ
アップスキリングとリスキリングによるテクノロジー人材育成イメージ

 リスキリングでは、昨年度未経験者7名にセキュリティ分野での育成を実施し、「今年は職種も3職種に拡大して人数も倍にして実施する予定」(内田氏)としている。流れとしては、社内公募制で人材を募り、半年間業務から切り離して教育し、その後正式配属となる。リスキリングを成功させる秘訣として内田氏は、「しっかりスキルを身に着けてもらう意思をトップが示し、手を挙げてもらって、コーチのように伴走する仕組みや一緒に学ぶ仲間を作って、学んだものや経験を生かす場を作る――。これを繰り返していくことで育成がうまくいく」と語る。

リスキリングを成功させるためのポイント
リスキリングを成功させるためのポイント

 またアップスキリング施策としては、ワークショップ方式を採用。手を動かし会話をしながらテクノロジーの活用によってアウトプットを出すという形で、実践重視のメニューを組んでいるという。これにより、「分かった気になるのではなく、使える知識にしてもらっている」(内田氏)のだという。

アップスキリングのためのワークショップ施策
アップスキリングのためのワークショップ施策

 このような形でパーソルグループではテクノロジー人材の拡充に取り組んでいるが、そこには決して一足飛びでたどり着いた訳ではないと内田氏は強調する。「これは当社の規模だからできたという話ではない。自分も2016年に入社したが、失敗や経営陣へのアピール、議論を繰り返す中で理解が進み、今の状態にたどり着けた。変革には時間がかかるし、コロナに代表されるような外部要因の変化にも巻き込まれやすい。それでも粘り強くくじけずに、多くの人たちと話をして変革を進めていく態度が重要だと思っている」(内田氏)とアドバイスを送る。

年間100人程度のテクノロジー人材採用・育成を目指す

 後半では、CNET Japan編集部と視聴者からの質問に内田氏が回答した。まずグループ内複業の事例については、「新規事業のWebの開発を手伝う形、ITコンサル、IT人材向けイベントの企画、IT人材向け研修のコンテンツ開発などがある」という。

 CoE組織におけるテクノロジー人材採用で重視していることは、「まずは『はたらいて、笑おう。』というグループビジョン、つまり人材サービスが持つ価値に対して共感してくれること。その上で、事業に対してどんどん新しい取り組みや提案をしていかなければならないので、その価値に対して見合う提案力や実装力があるかを見ている」という。その際には、「ビジョンや社内でのプロジェクトに関して、かなり細かくお伝えし、お互いのアンマッチがない形で来てもらうようにしている」とのこと。

 CoE組織における採用・育成の割合は、「現在は採用がメインで、育成は取り組み始めたところ。採用・育成あわせて、年間約100人増を見込んでいる」という。

パーソルグループテクノロジーオウンドメディア[TECH DOOR]
パーソルグループ公式サイト

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画広告

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]