開頭手術なしで脳によるデバイス操作が可能に?米企業が新技術を開発中

Jesse Orrall (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2023年09月28日 07時30分

 コンピューターを脳波で操る技術、いわゆるブレイン・コンピューター・インターフェース(BCI)という夢の研究は、数十年前から続いている。これまでのところ、その技術のほとんどは、臨床試験や臨床研究の段階にとどまってきた。実際に頭蓋骨の内部に埋め込むデバイスとなると、特にそうだ。Synchronという企業が、その状況を変えようとしている。

 米CNETは、そのSynchronが開発を進めているBCI、「Synchron Switch」について知るために同社を訪れた。Synchron Switchは、どういう仕組みなのか、開頭手術をせずにどうやって脳に埋め込むのか、そしてどのような使い方があるのかを聞いた。

Tom Oxley氏が、どのように運動皮質の近くにインプラントが埋め込まれるか説明しているところ
SynchronのCEO、Tom Oxley氏が、どのように運動皮質の近くにインプラントを埋め込むかを説明しているところ。使用者が動こうとする意思を表す脳波を読み取るという。
提供:CNET

 Synchronの最高経営責任者(CEO)を務めるTom Oxley氏は、既存の医療技術を出発点にしたと説明している。中でも大きいのがステントとカテーテルで、どちらも血管を通して体内に挿入する技術だ。

 「首の頸静脈から入り、脳まで到達したら、運動皮質と呼ばれる脳の部位でステントが展開する」、とOxley氏は語る。そこから、インプラントは「無線で外部と通信し、パーソナルデバイスを制御する」のだという。

ステントの技術を利用するSynchronのインプラント
ステントの技術を利用するSynchronのインプラントは、血管を通して脳に挿入される。
提供:Synchron

 運動皮質における信号は、人が動こうとする意思を伝える。Synchron Switchインプラントのアンテナが脳内のその信号を読み取るので、使用者は身体のどこかを動かそうと考えるだけでデバイスを制御し、テキストメッセージの入力、オンラインショッピング、オンラインバンキングといった操作ができるようになる。

 ルー・ゲーリッグ病(筋萎縮性側索硬化症:ALS)や脳卒中、ケガなどによってまひがあり、タッチスクリーンやコンピューターを利用できない人の役に立つことを想定している。

デモ用の脳
このデモ用の脳は、医師が実際に人間に処置をする前の訓練に使われる。
提供:CNET

 これまでに、10人がSynchron Switchインプラントの処置を受けており、同社は臨床試験の現工程について結果をまとめているところだという。次の工程がいわゆるピボタル試験となり、それが終わるとSynchronは米食品医薬品局(FDA)から市販の承認を受けられる。

 血管という侵襲性の低い経路を利用して脳に達する技術は、神経科の他の治療にも影響を与える可能性があるとOxley氏は言う。パーキンソン病のための脳深部刺激療法や、てんかん患者の発作の監視などへの応用が期待されている。

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画広告

企画広告一覧

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]