KDDIは9月5日、マイクロソフトの生成AIサービス「Azure OpenAI Service」と、企業のカーボンニュートラル実現をワンストップで支援する「KDDI Green Digital Solution」の提供を開始すると発表した。
Azure OpenAI Serviceは、会話形式で自然な回答を生成できるマイクロソフトの生成AIサービス。「GPT-3.5」「GPT-4」「埋め込み(Embeddings)」「DALL-E」の4つの生成型AIモデルで構成し、自然言語処理によるテキストデータの分析から業務における効率化、生産性向上を実現する。
KDDIは、導入時のコンサルティングから設計、構築までをトータルでサポートする。生成AIによる顧客の業務効率化や課題解決の実現に貢献するという。
Green Digital Solutionは、KDDIのほか、同日に包括的業務提携を発表したアスエネ、KPMGコンサルティング、グローウィン・パートナーズといったパートナーのサービスなどと連携して提供。CO2排出量の可視化から削減までを実現し、法人顧客のカーボンニュートラル実現に必要なプロセスを、課題や状況ごとに支援するという。
Azure OpenAI Serviceは9月5日から、Green Digital Solutionは10月31日から、それぞれ法人顧客向けに提供する。
KDDIは2つの発表に合わせて同日、法人事業説明会を開催。事業全体の戦略や今後の構想など、同社の法人事業全体を説明した。
冒頭、KDDI 取締役 執行役員専務 ソリューション事業本部長 兼 グループ戦略本部長の桑原康明氏は、法人事業の戦略を説明。「さまざまなモノに通信機器が入って多くのデータが集まるとともに、SNSや映像などでの発信も増えた。多くのデータが使われ、すべてに通信が溶け込む『超デジタル社会』となり、さまざまな顧客接点からあらゆるデータが生まれ続ける世界になった」とし、現状におけるデジタルと通信の重要性を強調する。
また、法人顧客がIT投資で解決したい具体的な課題として、日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の調査を紹介。徐々にシフトしつつあるものの、業務プロセスの効率化やテレワーク、ペーパーレスといった短期的な課題から、次世代新規ビジネスの創出、ビジネスモデルの変革といった中長期で取り組む課題まで、多岐にわたって存在すると説明した。
加えて、国内でデジタル化に対応済みと認識する企業は16.4%にとどまる、自社を情報収集や未実施の段階と認識する企業は約50%、などの帝国データバンクの調査を紹介。ビジネスへのデジタル活用という観点では「日本はまだまだ遅れている面もある。世界的な流れに追いつく必要がある」(桑原氏)とした。
一方、KDDIには、法人事業における強みとして、「モバイル3000万回線、法人の顧客基盤40万社、IoT4000万回線という顧客接点があるとともに、スマホやIoTデバイスといった(データの)入出力の接点を保有している」(桑原氏)と、通信基盤、顧客基盤などに優位性があると語る。
また、法人におけるDXを「顧客が非デジタルをデジタル化し、データを活用していくこと」と定義しつつ、DX推進における(1)収集、(2)蓄積、(3)分析と価値の創造、(4)活用――を一気通貫で推進できる、グループ内対応力があるとした。
桑原氏は、KDDIの法人事業を従来の「コア事業」と、デジタル化に関連する「NEXTコア事業」という観点でも説明。後者を、非デジタルをデジタル化する「フェーズ1」、IoTなどのデータを活用する「フェーズ2」、各企業間のさまざまなデータを融合させ、“データ×データ”でデータドリブンを推進する「フェーズ3」に分類し、それぞれのビジネス加速を支援できる体制があるとした。
一例として、KDDIエボルバ、りらいあコミュニケーションズが経営統合して9月1日に発足したアルティウスリンクを、フェーズ1の具体例として紹介。コンタクトセンターの音声などをはじめとした非デジタルを、データとしての価値がある「デジタル+クラウド」へ変化させられると説明した。また、フェーズ2の具体例として、LPガス関連事業を展開する東洋計器における、IoTとAIによる配送最適化事例などを紹介した。
フェーズ3の具体例としては、3月に資本業務提携を発表した、KDDI傘下のフライウィールを挙げた。フライウィール 代表取締役社長の横山直人氏は、同社が提供する「Conata」での企業間データ活用、連携例として、売り上げを維持しつつカタログ発行部数を50%削減した日本生活協同組合連合会(コープ)、書籍販売率を20%改善したカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)などの実績を紹介した。
桑原氏は、同日発表したAzure OpenAI Serviceについても補足した。
マイクロソフトのAzure OpenAI Serviceをはじめとする生成AIは、繰り返し作業の自動化による効率化や生産性の向上、大量データの処理による予測分析といったマーケティングへの活用など、さまざまな産業や領域で革新的な改革や効率化をもたらすことが期待されている。
一方で、生成AIの導入には高度な技術や専門知識が必要であり、開発やトレーニング、データ収集など多岐にわたる技術的な課題が存在するという。また、生成AIの利用には法的な制約や倫理的な問題も存在し、ガイドラインの整備などのガバナンスも必要になる。
KDDIは2023年5月、社員1万人を対象に生成AIを活用したAIチャットサービス「KDDI AI-Chat」を実業務で利用開始。KDDI社内の利用を通し、AIの導入における技術的な課題解決、利用のガイドライン整備、実業務におけるユースケースといったナレッジがたまりつつある。Azure OpenAI Serviceではこのような知見を生かし、顧客のAIサービスの導入、活用方法などを全面的に支援する。
また、同日発表したMicrosoft、9月1日に発表したAmazon Web Services(AWS)に加え、Googleとも検討を進め、生成AIのサービスラインアップを強化する意向を示した。
さらに、これらの取り組みを踏まえつつ2024年春、さまざまなベンダーとともに業界ごとのプラットフォームを構築し、業界別の「次世代プラットフォーム」を提供すると話す。「各企業ごとに投資するのではなく、業界で『協調』できる部分をサービスとして使っていただくことで、スピードアップが図れる。顧客が自分たちのサービスを強化する『競争』への投資を支援する」と語った。
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