ソニーは9月5日、におい提示装置「NOS-DX1000」の関連商品として、最大40種の嗅素をユーザー自ら注入可能な、におい提示装置用カスタムカートリッジ「NOS-CK10」を発売すると発表した。食品業界などで、嗅覚測定や店頭でのにおいサンプル提示といったことに活用できるとしている。
NOS-DX1000は、におい制御技術Tensor Valveを搭載し、においに関連した研究や測定を行うためのにおい提示装置。3月に発売し、耳鼻科や神経内科の研究用途として販売しているという。
ソニー インキュベーションセンター嗅覚事業推進室室長の藤田修二氏は「発表後、食品会社やソムリエのトレーニング、香水のサンプルテストなど、医療分野以外でも使いたいという問い合わせをいただきた、カスタムカートリッジの発売はこういった要望に応える形で実現したもの」と発売の背景を話す。
カスタムカートリッジは、嗅素を注入する容器(サブカートリッジ)を計40個同心円状に配列した構成で、最大40種の嗅素を注入できるというもの。付帯サービスとして提供する、専用アプリ「Scent Canvas」と組み合わせ、用途に合わせて基本テンプレートからユーザーインターフェイスを設定でき、においの提示方法を複数パターンから選択できることが特徴だ。
ソニー インキュベーションセンター嗅覚事業推進室の森有彌氏は「お客様自身がにおいを提示する方法や順番を変更できるのが新アプリのポイント。従来のアプリは嗅覚測定に特化した内容になっており、それ以外の使い方はできないが、Scent Canvasは幅広いニーズに応えるため、お客様自身がカスタマイズできる」とNOS-DX1000でも用意されていた専用アプリの違いを説明する。
においが商品開発や品質保持の上で重要な役割を果たす食品業界への導入を狙っており、「においを取り扱う上での困りごとや課題を知ることができた。カスタムカートリッジを通じてにおい産業の業務における手間や時間の削減に貢献したい」(森氏)と話す。
発表会には、アサヒグループジャパン 執行役員の伊藤義訓氏とアルファ・モス・ジャパン 代表取締役の吉田浩一氏が登場。食品業界と嗅覚の関係性についてトークセッションを実施した。
ビールの商品開発や生産部門で工場の工程管理などを手掛けてきたというアサヒグループの伊藤氏は「ビールは発酵するときにさまざまな香り成分が生成される。このバランスや組み合わせが重要で、ここがうまく行かないと味のバランスが崩れてしまうこともある」(伊藤氏)と香りの重要性を強調した。
フランスを拠点に電子鼻装置の開発をしているというアルファ・モス・ジャパン吉田氏は「アプリ開発からマネジメントまでにおいに関するビジネスにかかわっている。お客様から聞くにおいの問題と困りごとにおいて装置で解決できるか期待感がある」とコメントした。
伊藤氏は「ビール技術者は国内外のビールをすべて飲み分けられる。これは特別な才能ではなく、飲むという訓練を積むことでできるようになる。これは飲むのも大変だが、このサンプルを作るのも大変な作業」と現場の課題についてコメント。吉田氏も「においは見えないからこそ、人や部門間での共有が難しい。同じにおいを安定かつ簡単に出せるツールがあれば役立つと思う。においは周りに散らばってしまうがカスタムカートリッジは、鼻をつけたところしか嗅げない。この拡散しないにおいというのが重要なキーになる」とした。
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