スマートリモコンメーカー「Nature」、主力商品の値下げと新製品に込めた思い

 人気のスマートリモコン「Nature Remo」シリーズを販売するメーカー、Nature。同社は6月1日に主力4製品の最大33%にも及ぶ値下げを敢行し、7月4日にはエントリーモデルにあたる新製品「Nature Remo nano」を発売した。実は同社、今回値下げした製品を1年前に値上げしており、大きく方針転換したことになる。同社CEOの塩出晴海氏に、その想いを聞いた。

Nature創業者でCEOの塩出晴海氏
Nature創業者でCEOの塩出晴海氏

節電が自分ごとになった今が、認知と普及の好機

 スマートリモコンは、赤外線リモコンで操作するエアコンなどの家電を、家の外から、あるいは自動で操作可能にするガジェットだ。エアコンを例にすると、外出時の消し忘れを防止できるほか、帰宅前に電源を入れ、家についた直後から快適な空間で過ごせるようにしてくれる。あるいは、室温が一定以上になったときにエアコンを入れる、部屋が暗くなったら照明をつけるなど、室内の環境にあわせた家電の自動操作もできる。スマートリモコンを導入することで、さまざまな電化製品を賢く使えるようになるのだ。

 塩出氏によれば、Natureが今夏に製品の値下げとエントリーモデルの発売をした理由は、「今こそスマートリモコンの普及を進めるべき時期だから」だという。その思考の裏にあるのは、単なる商機だけではなく、同社が掲げる「自然との共生をドライブする」というミッションだ。スマートリモコンはスマートホームを構成する一要素だが、同社はスマートホームを利便性の追求という側面だけではなく、節電、そして地球環境保護という面で捉えている。

 「日本は他の先進国に比べて、スマートホームの普及が遅れている。その要因のひとつが、スマートリモコンを含むスマートホームデバイスについて、多くの消費者が贅沢品という印象を持っていることだ」(塩出氏)

 そんな日本においても、ロシアによるウクライナ侵攻や円安の影響により電気代が高騰。節電は各家庭にとって喫緊の課題となった。この夏も、さまざまなメディアで光熱費の節約術が特集されている。塩出氏はこの状況を、節電という社会課題を解決するための手段として、スマートリモコンを認知、普及させるフェーズだと考えた。

 「これまでスマートリモコンを導入していた層は、いわゆるガジェット好きや、新しい情報に敏感な方々だった。しかし節電が自分ごとになった今は、節電ツールとしてのスマートリモコンを多くの人に導入してもらえるチャンス。Natureのミッションを達成するには、より多くの家庭にスマートリモコンを普及させ、エネルギーを無駄にせず賢く使う、『エネルギーマネジメント』を社会全体で実現していく必要がある。それを叶えるという意味でも、今を逃すわけにはいかなかった」(塩出氏)

Nature Remo nano。サイズは47mm四方、厚みも12.5mmという小ささだ。価格は税込3980円
Nature Remo nano。サイズは47mm四方、厚みも12.5mmという小ささだ。価格は税込3980円

より導入しやすいスマートリモコンを目指して

 スマートリモコンの普及に向けて、今Natureが力を入れているのが、導入障壁の排除だ。今夏の値下げとエントリーモデルの発売はそれを象徴する取り組みだが、ソフトウェアの面でも改善を行なっている。その最たるものが、設定の簡素化だ。

 「スマートリモコンを使ったことのない方、特に年配の方にとっては、初期設定が煩雑だと導入に向けての大きなハードルになってしまう。初期設定サービスとセットでスマートリモコンを販売するという選択肢もあるが、スマートリモコン自体が高価な製品ではないので採用できず、お客様自身に設定を行ってもらう必要がある。そこでNatureでは、買ってからすぐ、可能な限り少ない操作で初期設定ができるよう、アプリを改良してきた。その甲斐もあって、Nature Remoはセットアップがしやすいという一定の評価を、ユーザーの皆様からいただいている」(塩出氏)

 自動化という側面では、GPS連携に力を入れている。ユーザーが家に近づいたことをスマートフォンのGPSが検知し、帰宅前に自動でエアコンの電源を入れる、逆に家から出たら自動でオフにする、といった機能だ。

 だがこのGPS連携、ユーザーが複数人で構成される家族となると少し事情が変わる。というのも、ひとつのアカウントを同じ家に住む複数のユーザーが共有している場合、ひとりだけが外出したとき、つまり家にまだ人が残っているときにもエアコンが止まってしまうなど、望まない挙動をするケースがあるのだ。

 そこで同社は、2022年12月に「ホームロケーション」機能をリリースした。これは、ひとつのスマートリモコンを複数アカウントで共有し、家族の動きを一人ひとり認識できるようにするものだ。ホームロケーション機能によって、家族全員が家から出たらエアコンを停止するなど、細かな設定を行えるようになった。また、複数段階の条件を設定できる「フィルター」機能も、6月28日に実装。1.家族の誰かが家にいるときに、2.室温が27度以上になったらエアコンを起動するといった、複雑な条件設定が可能だ。

 またNature Remo nanoは、同社のスマートリモコンとしては初めて、スマートホームの国際的な標準規格「Matter」に対応した。Matterに対応したデバイスは単一のアプリから操作できるので、製品のメーカーごとに別々のアプリをインストールする必要がなくなる。たとえばAppleの「HomePod」はMatterに対応しているが、これとNature Remo nanoを連携させることで、Apple端末のホームアプリからNature Remo nanoと接続した家電を操作できるようになる。

再生可能エネルギーが普及しない日本に足りないもの

 値下げとエントリーモデルの発売、そしてソフト面のアップデートでスマートリモコンをより手軽で便利なものにしようとしているNature。しかし先にも述べたように、同社のゴールは利便性の追求ではない。

 「スマートホームデバイスを使ってもらうことが、我々の目標ではない。最終的なゴールは、Nature Remoをバーチャルな発電所として機能させて、化石燃料の消費量を減らすこと」(塩出氏)

 同社は太陽光パネル、蓄電池、EVのパワーステーション、エコキュートの操作をスマホから可能にする「Nature Remo E」も販売している。塩出氏は、再生可能エネルギーの普及についても、スマートホーム化の推進を通して後押ししていきたいと語る。

 「ほとんどの家に太陽光パネルが設置されているような、分散化と脱炭素化が進んだ社会では、電力会社から電力を買う必要がなくなる。家ごとの発電状況、電力消費状況が分かれば、家単位での電力融通だって可能になる。そういった、社会に必要なサービスをNatureは開発していきたい」(塩出氏)

Nature Remo E。コンセントに差し込んで使用する。価格は税込3万9800円
Nature Remo E。コンセントに差し込んで使用する。価格は税込3万9800円

 取材の終わりに塩出氏は、「どんな形でもいいから、もっと多くの人に自然のなかで時間を過ごしてほしい」と強調した。化石燃料消費量削減を目指すNatureを彼が創業したきっかけは、ヨットでの洋上生活を体験したことだという。「自然のなかで過ごすことによって、地球環境を大切にしようという意識が生まれる」と、塩出氏は語る。Natureに集い、共に事業を進めるメンバーも、ダイビングやサーフィン、登山やトレイルランニングなど、自然と触れ合う趣味を持つ者が多い。塩出氏の考えが正しいことを、彼らが証明しているといえよう。

 スマートホームや再生可能エネルギーの普及が遅れている日本。その裏には、自然との触れ合い不足があるのかもしれない。

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