――2023年も「Shochiku Accelerator」の募集を開始しました。今回のポイントは何でしょうか。
昨年度に引き続き、「Entertainment Festival」というテーマで、世の中をもっと面白くしたいと思っている起業家の皆さんと一緒にやっていきたいと思っています。
募集ジャンルの領域は5つあります。1つ目が「IPコンテンツの創造と展開」です。映画や演劇の種となるような新しいキャラクターの開発はもちろん、Web3のように我々が今まで手がけていなかったコンテンツも考えられます。作ったコンテンツやグッズをお客様に届ける”方法”も含めて、一緒に挑戦できるスタートアップを募集しています。
2つ目が「AI等の技術を活用したデジタル共創」です。先端技術を組み合わせることで、時間や場所を問わずに観劇を楽しめるような、今までと違う鑑賞体験を生み出せないかと考えています。また映像制作のフローやマーケティングにAIを導入できないか、といったところも模索していきたいです。
3つ目が「不動産テックと街づくり」です。当社の本社があり、歌舞伎座をはじめとした演劇劇場や映画館を運営している東銀座エリアにおいて、街の活性化につながるサービスや技術を探しています。保有不動産の運営管理や、物件の安全管理につながるシステムをお持ちのスタートアップも募集しています。
4つ目が「新領域でのエンタメ挑戦」です。ゲーム・ヘルスケア・教育など、当社の既存事業にはない分野で、当社のアセットをもとに新しい事業を作りたいと思っています。
最後が「サスナビリティ共創」です。たとえばフィルムや書籍で保存していたライブラリーをデジタル化し、利活用できないかと考えています。もしくは街づくりにおける、地域の価値を高めるようなSDGsの取り組みにも関心があります。
募集締め切りは8月21日で、書類とピッチによる選考を経て、中間審査を実施します。その後は松竹の事業部門と一緒にチームを組み、提案内容について「こういった取り組み方ができるのでは」「将来的にこういった事業を目指せるのでは」等を議論して、実証実験に臨む予定です。一度実験して終わり、ではなく、事業化に向けた”第一歩”につながるようなプログラムを設計しています。
――2023年の「Shochiku Accelerator」について、取り組み方として前回と変わるところはありますか。
採択件数は少し絞ろうと思っています。1社1社と、もっと丁寧に仕事をしていきたいからです。前回ご参加頂いた方からはポジティブな評価を頂いたものの、我々としては、1社に向き合う時間をさらにしっかり取りたいと考えています。
――こんなスタートアップに参加してほしい、というような思いがありましたら教えてください。
我々は、創業128年を迎え、日本企業の中でも長くビジネスを続けてきた会社の一つです。当社と生まれたばかりのスタートアップという異質な組み合わせで事業を創っていくことになりますから、そういうギャップに興味を持っていただけるようなスタートアップにはぜひ応募していただきたいです。
エンタメを主軸にしている企業はたくさんありますし、5~10年ほどの新興企業ながら成功されているベンチャーも多くいらっしゃいますが、我々はそのエンタメ業界の中でも長くやらせてもらっていますので、スタートアップの方からすればそこを魅力に感じていただけるのではないかなと思います。長くやってきた人たちと、今から世界を取るぞ、みたいな勢いのある人たち、スタンスの違う2つの集団がぶつかり合うことで、これまでにない新しいものが生まれるものと期待しています。
あともう1つ、新事業開発を目的とした「Shochiku Accelerator」の枠組みとは別に、「松竹大商談会」(仮称)という松竹グループの課題解決を目的としたイベントも今秋~冬にかけて開催予定です。グループが抱えている特定の課題について、一緒に解決していただける企業を募るというもので、2023年度はアクセラレータープログラムとの2本立てでやっていきます。
――5月に松竹の社長が迫本淳一氏から高橋敏弘氏に交代されました。それによって貴社を含めグループ内での事業上の変化はありますか。
特に変化はないと思います。新社長となった高橋も会長となった迫本の方針を引き継いでいくことを社内外に発信しています。迫本会長はスタートアップとの共創に関してもともと強い意志を持っていましたし、高橋社長は経理部門や映像部門が長かったので、全社的な課題をよく理解していると思います。
映画業界はこれまで社長の年齢層が高かったのですが、今は東宝の松岡社長(代表取締役社長社長執行役員の松岡宏泰氏)も57歳で同年代ですし、社外とも新しい取り組みが加速していくのではないか、というような期待も持てそうに感じているところです。
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