「Chromebook」、つまりGoogleの「ChromeOS」が稼働するノートPCは、登場から10年以上が経ち、基本機能だけのインターネット接続デバイスという存在から、個人用としても仕事用としても優れたノートPCへと進化してきた。一定期間が経過すると、セキュリティアップデートと機能アップデートが提供されなくなるという制限はあるものの、そのユーザーフレンドリーな特長から、学校や企業で、また技術に詳しくない人にとって、優れた選択肢になっている。
それにもかかわらず、この10年の間、Chromebookについては否定的な意見が多かった。オフラインでは使えないとか、性能不足だという誤った認識もその一部だ。中には、Chromebookが登場したばかりの頃なら正しかったかもしれない指摘もあるが、それ以降は修正や改善が進んでいる。
そこで今回は、Chromebookに関する8つの誤解を紹介する。新しいノートPCを探すときには、これらの通説にだまされないようにしよう。
これは今でもよくある誤解で、Chromebookが初めて登場したときから言われているが、その頃は「Chrome」ブラウザーを使ってインターネットにアクセスするのが主な用途だった。学校や企業などでChromebookユーザーが増えるのに応じて、GoogleはChromeOSの機能を拡充しており、Chromebookメーカー各社もそうした新機能を使えるようにパフォーマンスを引き上げてきた。今では、他のノートPCと同じく、価格に見合った性能を備えている。
一方、ChromebookのOSであるChromeOSは今でもハードウェア要件が低い。つまりChromebookは、価格を抑えたうえで基本的な機能を提供できるということだ。ハードウェア要件が低いにもかかわらず、Chromebookは同価格帯の「Windows」ノートPCに劣らぬ、ときにはそれよりも優れたパフォーマンスを発揮する。
米CNETのJoshua Goldman記者はこう記している。「新しいWindowsノートPCが200ドル(約3万円)というのは極めてまれであり、率直に言って買う価値があることはめったにない。一方、同じ200ドルで優れたChromebookを見つけるのは至って簡単だ。(中略)上位機種となると400~500ドル(約5万8000~7万2000円)程度で、ニーズ次第では1000ドル(約15万円)を超えてくる」
例えば、レノボの「Chromebook Duet 3」は379ドル(約5万5000円)で、動画をストリーミングできるし、「Android」アプリもほとんど動く。NVIDIAの「GeForce NOW」やMicrosoftの「Xbox Cloud Gaming」を介してクラウドゲームも遊べる。それ以外の上位機種となると、例えば「Acer Chromebook Spin 714」はさらに高価になるが、バッテリー持続時間は最大10時間だ。こちらも動画のストリーミングが可能なほか、「Slack」のような生産性向上アプリも扱える。
ChromebookはChromeOSを採用しているので、ブラウザーはChromeしか使えないと考えるのも無理もない。だが、これも誤解だ。「Brave」や「Firefox」など、他のブラウザーもChromebookで動作する。
Chrome以外のブラウザーを使用するには、「Google Play」ストアから各アプリをダウンロードする必要がある。Androidスマートフォン用のアプリではあるが、Chromebookでも動く。一部のアプリはタブレットに対応しているので、Chromebookの大きなディスプレイ空間を使えて、見た目がすっきりしている。従来のデスクトップソフトウェアと同様、ウィンドウのサイズ変更も可能だ。
Chromebookは、多層防御によってユーザーのデータを保護している。例えば、アップデートはGoogleから自動的に提供されるので、デバイスには常に最新のパッチが適用される。また、個々のウェブサイトやアプリはサンドボックスで実行され、脅威があっても封じ込められるようになっている。
こうしたセキュリティ機能のおかげで、Chromebookは他の多くのノートPCより安全性が高い。セキュリティ脆弱性に関するデータベースの「CVE Details」によると、ChromeOSで発生したセキュリティ脆弱性は、2010年以降で57件だ。対して「Windows 10」では、2013年以降に3070件の脆弱性が見つかっている。
初代モデルは確かにオンラインでしか使えない仕様だったが、Googleがだいぶ前にその方針を変えたため、Chromebookのアプリの多くはインターネット接続があってもなくても機能する。Chromebookを使ってメモを取る、映画を見る、音楽を聴くことはオフラインでも可能だ。メールを確認して返信を作成することもできるし、「Googleドライブ」でドキュメントの閲覧、編集、作成もできる。ただし、作成したメールの送信も、編集中のドキュメントに対する変更も、インターネットに再接続した時点で実行される。
だいぶ前であれば、Chromebookではウェブベースのゲームしかできなかったが、2016年からはGoogle Playストアにあるゲームの多くをプレイできるようになっている。「Roblox」や「Steam」、GeForce NOW、あるいは「Amazon Luna」やXbox Cloud Gamingのゲームもプレイできる。
クラウドゲーミング用のChromebookも販売されている。ハイエンドのゲーミングPCがなくてもクラウドサービスを使ってAAAタイトルのコンピューターゲームを楽しめる初のゲーミングChromebookが、「Acer Chromebook 516 GE」と「ASUS Chromebook Vibe CX55 Flip」、そしてレノボの「IdeaPad Gaming Chromebook」の3機種だ。
基本的な編集であれば、写真と動画の編集アプリがGoogle Playストアでいくつも公開されている。AdobeのAndroid版アプリや、「LumaFusion」などがChromebookに対応している。また、Googleは6月に、「Googleフォト」を使った新しい動画エディターとムービーメーカーも発表している。
専門的な業務に就いていて、「Adobe InDesign」や「Adobe Photoshop」といった高度な写真・動画編集機能が必要な場合には、さすがにWindows、「Mac」、「Linux」のノートPCが必要になる。だが、家族が集まったときの写真アルバムや動画などをまとめるくらいであれば、必要な機能はすべてChromebookでまかなえる。
これも間違いだ。Chromebookで「Microsoft Office」を動かすことはできる。だが、Windowsまたは「macOS」専用に作られたMicrosoft Officeではなく、同製品のプログレッシブウェブアプリ(PWA)を使うことになる。
PWAは、ウェブサイトのモバイル版のようなものだが、オフラインで使えたり、プッシュ通知があったりして、もっと多機能だ。Chromebookで十分に機能する「Microsoft 365」のPWAもある。PWAのダウンロードが必要になる以外は、ウェブ版の「Office 365」を使うときと同じだ。Microsoft Officeのパワーユーザーだと、OfficeのPWAをデスクトップ版より力不足に感じるかもしれないが、大抵のニーズは十分満たせるだろう。
これは半分だけ当たっている。ChromebookにWindowsをインストールすることはできないが、リモートアクセスを介してWindowsにアクセスすることはできる。「Parallels Desktop for ChromeOS」や、「Chromeリモートデスクトップ」といったリモートアクセスツールを使えば、ChromebookをWindowsコンピューターに接続できる。
Parallels Desktop for ChromeOSは、ビジネスユーザーが主な対象で、Windowsアプリケーションのフル機能を利用できる。Chromeリモートデスクトップは短時間でセットアップでき、ChromebookでWindowsやMacのソフトウェアにアクセスできるようになる。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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