電機大手の2023年度第1四半期(2023年4~6月)連結業績が出そろった。そのなかから家電事業にフォーカスして業績を分析してみる。
パナソニックグループでは、家電事業を担当するくらしアプライアンス社の売上高が前年並の2059億円、調整後営業利益は10億円増の139億円となった。合理化や価格施策などの取り組みによって、増産対応や戦略費などの固定費の増加をカバーして増益になったという。
日立製作所で家電事業を担当する日立グローバルライフソリューションズの売上高は前年同期比8%増、Adjusted EBITAが73億円増の116億円と好調な業績になっている。前年同期には上海ロックダウンの影響で洗濯機の生産が止まるという事態に見舞われたが、これが回復したことなどが増収増益に貢献している。
また、シャープでは、家電事業を含むスマートライフ&エナジーの売上高が前年同期比5.8%減の1066億円、営業利益は7.1%減の69億円と減収減益になっているが、「洗濯機や掃除機などで高付加価値化が進展し、白物家電事業そのものは増益になっている」(シャープ 代表取締役 副社長執行役員の沖津雅浩氏)と語る。シャープでは新製品への切り替えにあわせて価格転嫁を行ってきたため、利益貢献が遅れていたが、新製品投入が一巡したことで、これが、第1四半期にはプラス効果となって表れている。
このように、前年同期の上海ロックダウンの影響による販売減少からの回復に転じたほか、価格転嫁による収益性の改善といった効果がみられており、増益については、手応えが感じられる内容になっているといえる。
だが、市場低迷の影響が大きくのしかかっている点は見逃せない。
パナソニック くらしアプライアンス社の業績をカテゴリー別に見てみると、同社の優位性が発揮されているビューティ・パーソナルケアの売上高は前年同期比12%増の413億円と好調だが、キッチン空間は前年同期比4%減の948億円、ランドリー・クリーナーは前年同期比1%減の698億円とマイナスになっている。
シャープでも、冷蔵庫や調理家電、空気清浄機が、それぞれにおいて市況低迷の影響を受けて減収になったとし、ソニーも、テレビの売上高が前年同期比4%減の1359億円と前年割れの実績になった。ソニーグループ 執行役員 財務IR担当の早川禎彦氏は、「テレビの市場環境が厳しい。今後も費用や在庫コントロールに十分な注意を払う必要がある」と述べた。
バルミューダでも、2023年4~6月実績は、空調関連が前年同期比37%減の7億7900万円、キッチン関連が27%減の21億3700万円となっており、「コロナ明けの外向け需要の拡大によって、巣ごもり需要の反動が2023年中は続くことになるだろう」(バルミューダ 代表取締役社長の寺尾玄氏)と予測する。
実際、国内の家電市場は厳しい状況が続いている。
一般社団法人 日本電機工業会(JEMA)によると、電気洗濯機は6月単月として過去最高の出荷金額となり、第1四半期(2023年4~6月)実績も販売台数は20%増の106万9000台と好調ぶりを示しているが、電気冷蔵庫は2023年6月まで7カ月連続のマイナス、電気掃除機は4カ月連続、電子レンジは3カ月連続、ジャー炊飯器は7カ月連続のマイナスとなっている。また、一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA)によると、薄型テレビの販売台数は9カ月連続で前年割れが続いている。洗濯機を除く主要カテゴリーでの低迷が長期化しており、このトンネルをいつ抜け出すことができるのかが気になるところだ。
一方で、第1四半期決算および今後の動向として注目しておきたいのは、家庭用エアコンである。日本では異例ともいえる酷暑が続いているが、これはアジアをはじめとして世界各国でも同様である。暑い日が続いていることで、エアコンの売れ行きには追い風が吹いている。なかでも、国内エアコン市場は、むしろ第2四半期に需要の本番を迎えると期待されている。
一般社団法人 日本冷凍空調工業会(JRAIA)によると、4月~6月の家庭用エアコンの国内出荷実績は、前年同期比5%減の271万3000台と前年割れになっている。国内の酷暑を考えると意外に感じるかもしれないが、この状況は、電機各社のコメントから理由を知ることができる。
パナソニックホールディングス 代表取締役 副社長執行役員 グループCFOの梅田博和氏は、「2022年6月は暑く、7月には涼しめの日が多かったのに対して、2023年6月は比較的涼しい日が続いていたが、7月に入って酷暑になった。前年と逆転する現象が見られている」と指摘。「7月の家庭用エアコンの総需要は1.3倍から1.4倍になっている」とする。パナソニックグループでエアコンを担当するパナソニック 空質空調社の第1四半期売上高は前年同期比2%減の2313億円と前年割れだが、国内ルームエアコンの販売減を除けば増収増益としており、「国内ルームエアコンは、第2四半期には挽回できる」と意気込む。
この分野で好調なのがダイキン工業である。同社は第1四半期業績として過去最高を更新。国内エアコン市場全体は停滞したものの、電気代の上昇で高まる省エネニーズを捉えた家庭用エアコン「うるさらX」の提案などにより、国内空調事業は前年同期の売上高を上回った。また、インドネシアやタイでの好天によって家庭用エアコンが伸長。中国では、空調や換気に、省エネ、空気質の提案を加えた新シリーズの製品投入が貢献したという。
また、三菱電機も第1四半期の全社業績は過去最高を更新。円安影響に加えて、空調・家電事業の需要拡大を好業績の理由にあげる。「欧州、アジア、北米、国内向けの空調機器の増加に加えて、円安の影響や価格転嫁の効果などにより、空調・家電事業は増収増益になった」(三菱電機 常務執行役 CFOの増田邦昭氏)とする。空調・家電事業は、売上高が前年同期比24%増の3797億円、営業利益は4.5倍となる369億円と高い成長をみせている。
シャープもエアコンの販売が好調で、「アジアでの販売好調を背景に、前年同期比2桁の伸びをみせた」(シャープ 代表取締役 副社長執行役員の沖津雅浩氏)という。だが、富士通ゼネラルは、国内向け空調機事業は、前年同期の上海ロックダウンの影響から回復しているものの、海外向け空調機事業は各地域での在庫補充が一巡。販売代理店などの保有在庫が潤沢となって、追加受注が一時的に鈍化傾向に転じたことも影響し、営業赤字という厳しい結果になっている。エアコン事業は、各社とも第2四半期以降での事業拡大を目論んでおり、異常ともいえる酷暑が、売上や利益にどう影響するのかが、第2四半期の焦点になりそうだ。
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