バルミューダは、2023年度上期(2023年1~6月)業績を発表。売上高は前年同期比34.6%減の57億4500万円、営業利益が前年同期の4億2100万円から、マイナス6億9500万円の赤字に転落。経常利益は前年同期の3億6900万円から、マイナス5億9700万円の赤字となり、当期純利益が前年同期の2億3400万円から、マイナス13億8500万円の赤字となった。
バルミューダ 代表取締役社長の寺尾玄氏は、「減収は想定線であったが、国内事業は想定よりも下振れした。外向き需要の活発化などにより、苦しい事業環境が続いている。だが、第1四半期に比べると、第2四半期は戻しつつある」としたほか、「売上総利益は前年度第4四半期で底打ちしているが、円安の影響が続いており、原価率も厳しい。また、営業利益は経費削減に努めており、想定線からは若干の下振れに留めている。さらに、第1四半期には携帯端末事業終了に伴う特別損失を計上し、繰延税金資産の取り崩しに伴う法人税等調整額も計上したことが、最終赤字に影響している」と総括した。
売上原価率は、前年同期の65.0%から70.1%と悪化。販管費比率は前年同期の30.2%から42.0%となり、自己資本比率は63.4%となった。
製品カテゴリー別売上高は、空調関連が前年同期比37.2%減の12億3900万円、キッチン関連が34.0%減の37億3500万円、携帯端末関連が98.5%減の200万円。その他(クリーナー、スピーカー、照明など)が21.0%減の7億6700万円となった。
「バルミューダの商品のほぼすべてが家のなかで使うものであり、2022年前半まではコロナによる巣ごもり需要を享受することができた。だが、コロナ明けの外向け需要の拡大によって、巣ごもり需要の反動が2023年中は続くと想定している。ところが、この反動の強さは想定以上であるというのがいまの感覚であり、当面続くと懸念している。今回の決算も、すべてのカテゴリーで売上げが落ちている。また、中国や台湾で生産し、日本に輸入し、販売する輸入企業のバルミューダにとっては、昨今の為替の動きは苦しい状況になっている」と述べた。
地域別売上高は、日本が前年同期比26.9%減の41億9600万円、韓国は62.9%減の7億8600万円、北米が20.1%減の2億4900万円、その他が16.4%減の5億1200万円となった。「とくに韓国の落ち込みが大きい」と指摘した。
一方、2023年度(2023年1~12月)の業績見通しは、5月に発表した修正値を維持。売上高は前年比9.4%減の159億5000万円、営業利益はマイナス5億2000万円の赤字、経常利益がマイナス5億5000万円の赤字、当期純利益がマイナス12億5000万円の赤字としている。
「2024年からの反転攻勢の準備に向けて、さまざまな手を打っているところである。今後の成長のための追加投資として、広告宣伝や販促活動の強化を続け、製品ラインアップのさらなる拡充に向けた研究開発の強化も進めていく」と、赤字見通しではあるものの、これまで打ち出してきた積極的な方針を踏襲する姿勢を強調した。
家電カテゴリーでの新製品の投入を計画。6月の電子レンジの発売に続き、10月には新たなジャンルの新製品を投入し、11月にはリニューアルした新製品を投入するという。また、北米での販売力強化や、秋以降には東南アジアにおける家電販売も開始する。
「広告宣伝や販売促進に関しても、第3四半期、第4四半期と続けることになる。これにより、数字が元気になっていくと考えている」とした。
さらに、2024年の新製品投入計画にも言及。「今後1年間で、従来の2倍のペースで新製品を投入する計画である。為替の影響で開発を止めていた時期もあったが、2022年後半になって、円安の限度が見え始めたので、開発投資活動を再開した。それらの商品が出てくるのが2023年10月からになる。2024年も立て続けに商品を投入するが、これらは原価率などを見直して開発したものである」と語った。
さらに、価格の見直しを検討していることを公表。「やりたくはなかったが、適切な売上総利益率の確保のために、価格設定の見直しを検討している。いつ、どのような規模で、どのような商品で行うのかは、まだ言えない。だが、2022年4月に実施したような一斉値上げではない」としながら、「バルミューダが苦しんでいる要因は原価率にある。経費削減も限界までやってきたが、それでもよくならない。あとは原価率そのものを変える必要がある。良好な策を考え、なるべく早く実施したい」と語った。
また、「成長のためのたゆまぬチャレンジに取り組む」とし、「アイデア、デザイン、エンジニアリングの力を発揮できる新ジャンルの商品開発を進めている」と述べた。
その上で、今後のバルミューダに方向性について寺尾社長は、「事業環境は苦しい状態にあるが、もがきながら家電事業の強化、収益力の改善、たゆまぬチャレンジを続けている。これまでの経験からも苦境を救うのはひとつの商品であると思っている。新たな魅力、これまでになかったワクワクを届けて、ビジネスを続けていきたい」と語った。
8月7日に発表した小型風力発電機についても時間を割いて説明した。
同社では「BALMUDA Energy Project」を開始すると発表。小型風力発電機の研究開発に取り組み、2023年秋から実証実験を行う計画だ。この研究には、世界風力エネルギー学会副会長である東京大学 名誉教授の荒川忠一氏をシニアアドバイザーに迎え、足利大学飯野研究室との共同研究も予定している。
小型風力発電機について寺尾社長は、「エネルギーに対する関心は、バルミューダを始める前から持っていた。バルミューダが最初に作ったのが独自の羽根を持つ扇風機の『The GreenFan』であり、DCモーターを世界で初めて扇風機に採用している。最小のエネルギーで、最大を気持ちよさと効果を生み出すことを目指した商品であり、それが原点にある」と前置きし、「特殊な羽根を持つGreenFanを使って、風力発電ができないかという思いは以前からあったが、なかなか着手できなかった。エネルギーを使うだけでなく、エネルギーを作るところまで、自分たちで提案ができるようになれば素晴らしいことである。電力の地産地消を実現するのが理想である。バルミューダは、流体力学まわりに、多くの知見やノウハウを持ち、そこに勘所がある会社だと自負している。だからこそ勝機がある」とコメントした。
「未来の人類は、電力を地産地消しているはずだ。そこに少しでも関与できるのであれば、エンジニア冥利に尽きる。そして、社会的価値のある仕事をすることにもつながる。だが、実現のためには多くのハードルを越えなくてはならない。外で利用するために耐久性も重要になる。まずは、たくさんのデータを入手し、よりよい商品開発につなげていく。将来は、自動車のようにBtoCとして提案できる商品にするのが夢である」と述べた。
さらに、「携帯端末事業の経験は、インターネットと家電を組み合わせたIoTにおいて、まだやりようがあるということを学んだ。また、自分たちの得意分野というものが存在することを改めて感じた。バルミューダは体験の会社であり、これを大事にして、ビジネスをしていきたい」としながら、「小型風力発電機によって、自分たちでエネルギーを生むことができれば、体験価値をさらに高め、生活レベルを向上させることもできるだろう。2023年の夏の暑さは異常であることを感じざるを得ないが、これは2023年だけの話ではないだろう。これまでの装備では、いままでのような体験ができない。そこにも、自分たちでエネルギーを作るという取り組みが貢献できるのではないか」などと語った。
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