予定より2日遅れたが、SpaceXは米国時間7月28日夜、Hughes Network Systemsの「Jupiter 3」を打ち上げた。Jupiter 3は、宇宙ベースのインターネットアクセスに対する従来のアプローチをモダナイズするために設計された衛星だ。SpaceXの大型ロケット「Falcon Heavy」がJupiter 3を地表から約1万8000マイル(約2万9000km)の高度まで運び、打ち上げから3時間半後に軌道に投入した。
Jupiter 3はソーラーパネルが起動し、地球上のコントローラーと通信し、良好な状態にあると製造元のMaxar Technologiesが29日に発表した。Jupiter 3は「EchoStar XXIV」とも呼ばれ、Maxarによると、これまでに製造された商業通信衛星の中で最大級だという。
計画通り2023年第4四半期にサービスが開始されれば、Hughesのダウンロード速度は100Mbpsと4倍高速になり、データを大量に消費する今の世界における有用性が高まるはずだ。なおHughesは、高速化する新サービスの料金をまだ明らかにしていない。
巨大な通信衛星を単体で打ち上げる戦略は、SpaceXの「Starlink」や、OneWebおよびAmazonの「Project Kuiper」といった競合が展開している今日の衛星ブロードバンドの考え方と好対照をなす。競合各社は、より小型で安価な衛星数百基で構成する「コンステレーション」を採用し、地球低軌道(LEO)の比較的近くを周回させている。
HughesのJupiter 3は、そうしたものとはまったく異なり、重さ9トンでバスほどの大きさがある衛星を単体で運用する。ソーラーパネルを展開した状態で長さ27フィート(約8m)、幅127フィート(約39m)にもなる。赤道の上空2万2236マイル(約3万5800km)とはるかに高高度の静止軌道で、地球の自転に合わせて地球を周回するように設計されている。上空での位置は固定される。つまり、そこにアンテナを向ければよく、地球により近い軌道上を周回しながら次々にやって来るLEO衛星に接続し直す必要はないということだ。
多くの人は、より高速で、通信の遅延時間(レイテンシー)が短いケーブルや光ファイバーのブロードバンドを利用できる。しかし、衛星通信は、へき地など従来のネットワーク技術が届かない地域に住む人々をつなぐ重要な役割を果たせる。
SpaceXの参入によって衛星の打ち上げコストが下がり、新興企業や既存企業にとって宇宙はより身近な存在となった。ただし、依然としてエンジニアリング上の難題は残る。Hughesと競合するViasatは7月に入り、同社の衛星「ViaSat-3 Americas」に致命的な不具合があったことを明らかにした。地上局に電波を送信する超大型の反射板を展開する際に問題が発生したという。
フロリダ州ケープカナベラルから打ち上げられたHughesの衛星には、Viasat-3と同様にSpaceXのロケットFalcon Heavyが使われた。Falcon Heavyは、最大64トンのペイロードをLEOに、27トンのペイロードを静止トランスファー軌道(GTO:衛星を静止軌道に乗せる前に投入される軌道)に投入できる。
Jupiter 3の総通信容量は500Gbpsだ。これには、利用者が持つ端末との通信や、衛星とブロードバンドをつなぐHughesの地上局との通信が含まれる。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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