睡眠ゲームアプリ「ポケモンスリープ」が7月20日にリリースされた。枕元にスマホを置いて眠ることで、睡眠トラッキングができるアプリで、睡眠データの記録や、ポケモンの寝顔の収集、育成などが楽しめる。ポケモンで睡眠ゲームアプリが出る意味を考えていこう。
ポケモンスリープでは、加速度センサーとマイクで睡眠時間や質を測定できるようになっている。睡眠中の音が録音できるため、いびきや寝言、猫の声などが録音されていてびっくりした人もいるようだ。
記録できるデータは、寝付くまでにかかった時間や睡眠の質など。「うとうとタイプ」「すやすやタイプ」「ぐっすりタイプ」から、睡眠の質によって似た睡眠パターンを持つポケモンが集まってくる。そのポケモンの寝顔を収集し、「寝顔図鑑」を埋めていくのがポケモンらしいところだろう。
睡眠スコアが高ければ高いほどカビゴンは成長していく。また、カビゴンは日中に料理を作って食べさせるなどしても成長させることができる。その他、ポケモンならではの音楽が流れる睡眠導入BGM、睡眠グラフの浅いステージで起こしてくれるスマートアラーム機能などもある。
毎日決まった時間に長くしっかりと眠ると、収集できるポケモンの寝顔数なども増えるため、眠ることへのモチベーションにつながるアプリとなっているのだ。
現代の私たちの多くは、睡眠に問題を抱えていると言われている。
NTTドコモ モバイル社会研究所が2月に調査した、「2023年スマホ利用者行動調査」によると、就寝前に布団に入りながらスマホを使用する割合を調査したところ、全体の6割超が就寝前にスマホを使用すると回答。男性では10〜30代は約8割、女性では20代が約9割と最も高く、10代、30〜40代の約8割が就寝前にスマホを利用している。
寝る直前にブルーライトを浴びると睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌が阻害されるため、睡眠の質に影響が出ると言われている。
また、ブレインスリープの2021年版子供の睡眠実態調査によると、日本人の子供は大人同様に世界で一番睡眠時間が短く、1位のニュージーランドと比べて1.5時間以上の差があるという。日本の子供の睡眠時間は、ほとんどの年齢で推奨される時間に足りていないのだ。
睡眠習慣が乱れていると体調不良にもつながる傾向にある。現代の子どもたちは忙しく、いつもやることに追われている。動画、ゲーム、SNS、宿題、遅い時間まである塾。高学年になればなるほど睡眠時間は減り、体調や成長などにも影響が懸念される。
睡眠測定自体は、スマートウォッチで手軽にできるため、利用している大人も多い。スマートウォッチは腕に巻いておくだけで測定できるので、手間を掛けずに利用したいならこちらだろう。筆者も利用しているが、睡眠時間を保つ、生活リズムを整えるといった効果につながっていると感じる。
一方、このゲームアプリをあえて使うポイントは、ゲーミフィケーションにあるだろう。機械的に睡眠を記録するのではなく、睡眠を楽しみ、楽しんで睡眠を改善できるのだ。このアプリは2019年5月に発表されていたが、4年経ってリリースされた。睡眠測定アプリとしては後発だが、その分楽しさは評価できそうだ。
このように、ヘルスケア分野をゲームで楽しむというのは、ポケモンという企業の一貫したテーマの1つでもある。たとえば同社は、歯磨きアプリ「ポケモンスマイル」を出している。歯磨きを上手にすることでポケモンを捕まえられるアプリで、歯磨きへのモチベーションにつなげているのだ。
また、同社がナイアンティックと共同開発した位置情報ゲーム「ポケモンGO」は、徒歩での移動をゲーム化したものだ。このゲームを始めたことで歩くようになったという人も多く、歩く習慣を促進するアプリとして人気が高い。
Twitterでは、「長く寝ればたくさんのポケモンに会えるのか。もっと寝たくなってきた」「仕事で短時間睡眠を繰り返しているので相性が悪いかも。もっとしっかり寝ようかな」などの声が多数聞かれる。このゲームを楽しむことで、睡眠改善のモチベーションにつながっている人は多いのだ。
スマホは睡眠の敵扱いとされることが多いが、このように使い方によっては睡眠改善にもつながる。睡眠に課題を抱えている人だけでなく、なかなか寝ない子どもに利用させるのもいいのではないだろうか。
高橋暁子
ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。SNS、10代のネット利用、情報モラルリテラシーが専門。スマホやインターネット関連の事件やトラブル、ICT教育に詳しい。執筆・講演・メディア出演・監修などを手掛ける。教育出版中学国語教科書にコラム 掲載中。元小学校教員。
公式サイト:https://www.akiakatsuki.com/
Twitter:@akiakatsuki
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