Twitter「後」の未来を決める3つのポイント--Threads大躍進に見るSNSの今と今後の付き合い方 - (page 2)

Twitter「後」の未来を決める3つのポイント

 このようにまとめるとわかるように、Twitterそのものを完璧に置き換えるサービスは意外に存在しない。

 分散化しているのでTwitterのような倒産リスクがなくても、利用しづらいためにユーザーがなかなか増えていないMasotodonや、サービスが安定していてもタイムラインの検索ができないので情報収集が難しいThreadといったように、どうしても一長一短がつきまとう。

 一方、Twitterがいま直面している最大の問題はもちろんイーロン・マスク氏の買収によって付け替えられた借金による負債であるものの、そもそもTwitterがいまの状態に陥ったいくつか遠因がある。それらの問題点を新興SNSがどのように解決しようとしているかを見ることで、万が一の時の移行先が見通しやすくなるだろう。

モデレーションの問題

 もともとイーロン・マスク氏がTwitterの買収に意欲を示したのは、フェイクニュースやヘイトスピーチを抑制するためのモデレーションに対して不満をもっていたのが一つのきっかけだったといわれている。

 利用規約に照らしてどんな投稿を表示してよいのかを判断する「モデレーション」はSNSにとってはなくてはならない。しかし、行き過ぎたモデレーションは特定のユーザーを抑圧している状態になり利用頻度が下がってしまい、逆に放置すればユーザー全体にとって安全な場所ではなくなり広告プラットフォームとしての価値もそれだけ減ってしまうため、微妙な舵取りが要求される。

 ThreadsはInstagramでつちかった強力なモデレーションの運用実績があるため、一般ユーザーにとっても起業家アカウントにとっても比較的安全な場所になることが期待されるものの、何を投稿してよいかがMetaの支配下におかれる状況になってしまう。

 Mastodon、Misskeyといった分散型のサービスはモデレーションをサーバー単位、あるいは個人の単位で草の根で行うスタイルになっており、より大きな自由があるかわりに安全性を確保するためのコストは上がってしまう傾向がある。BlueskyのATプロトコルのようにモデレーションの仕組みを入れ替え可能にする試みもあるが、誰かが膨大なスパムや荒らし投稿を除去しなければいけないというコストは残ってしまうのだ。

アルゴリズムの問題

 ではThreadsがよいかというと、現状ではまだ判断が付きにくい面がある。Threadsのタイムラインが時系列順ではなく、アルゴリズムによって表示されているからだ。

 たとえばThreadで投稿を楽しんでいると、突然タイムラインの雰囲気が変化することがある。フォローしているユーザーの投稿がなくなり、見覚えのないユーザーの自撮り画像などが延々と続くタイミングがあるのだ。今後個々のユーザーの嗜好にあわせた調整が行われるようになるとされているが、Threadsのタイムラインが「Metaの見せたいもの」というフィルターを通した世界であることを意識する瞬間だ。手触りとしては、TwitterというよりもTikTokに近いといえる。

 このことは、特にSNSをPRや情報発信に利用したい企業やユーザーにとって大きな問題となりうる。Threadsでは投稿が検索できないことと相まって情報の広がりが限られており、その拡散がMetaのアルゴリズムしだいという未来もありうるからだ。

AIの問題

 急速な進歩が世界を揺るがしているAIの存在もTwitter型SNSと無関係ではない。Twitterが先日おこなった利用者が使用できるAPIの回数制限はTwitterをAIの学習データ目的にスクレイピングする動きを抑制するのが目的と表向き説明されているが、こうした「AI対策」を口実にしてさまざまなウェブサイト同士の相互運用が困難になってきている。

 Twitterを閲覧するのにログインが必須となったり、Threadsが現時点でアプリからしか利用できないといったことも、対スクレイピングの視点でそれぞれの会社がユーザーの投稿を囲い込もうとしている動きと見ることもできる。

 Mastodon、Bluesky、Misskeyといった分散型SNSはこうした動きに対してより自由な独自路線を歩みやすいものの、ユーザーはより多くのユーザーが存在するプラットホームに向かう傾向があるため、どれだけのシェアを獲得できるかは不透明だ。

 より分断して相互運用が難しくなってゆくウェブの世界で、どのSNSを利用し、誰の情報を受け取り、誰に情報を届けるのかは、より複雑な判断の必要な問題になることが予想されるのだ。

君たちはどうSNSを使うか

 SNSの使い方は人によってさまざまであるものの、1)コミュニティのなかで会話を楽しむ、2)情報を誰かから手に入れる、3)自分の伝えたい情報を誰かに拡散する、が基本だとみて差し支えないだろう。

 すると、現時点のThreadsは知っているユーザーと会話を楽しむことは十分にできるものの、投稿を検索できないため情報の発見や拡散は困難だという制限が今後を考える上で気になる点になってくる。一般のユーザーにとっては世界がなかなか広がりにくいという壁が今後問題になるであろうし、Instagramのソーシャルグラフを持つ既存ブランドも短期的にはユーザーが増えても、長期的な運用がメリットをもたらすかどうかは、特にThreadsのアルゴリズムの今後の展開を見守らなければいけない。そうした状況も踏まえて、ユーザー今後定着するかどうかが直近の注目点だろう。

 自由に情報をやりとりしたい一般ユーザーにとってはBluesky・Mastodon・Misskeyなどの分散型SNSの発展は魅力的に映ることだろう。Twitterではアカウントが凍結してしまうリスクがあるが、それを気にせず趣味の合った人々と会話を楽しむ場としてこれらのプラットホームは今後も成長してゆくことが期待される。

 しかしこうした分散型SNSが世界中のユーザーを受け入れるほどの成長を遂げるのは厳しい可能性もある。TwitterのAPI制限時にはBlueskyは一時的に新規登録を停止せざるを得なかったが、Threadsは軽々とそれに対応したように、分散化がどこまでスケールできるかについて、銀の弾丸のような解決方法は存在しない。

 Threadsの運営を率いているアダム・モッセーリ氏は、Threadsの初期の成功を喜びつつも、Twitterが長年構築してきたユーザーコミュニティーや、社会に深く根付いた利用のされ方はすぐには変わらないので過小評価してはならないとコメントしている。

 もしTwitterが停止するようなことがあったとして、そのコミュニティや機能をそっくりそのまま入れ替えるようなサービスは現時点では存在しない。

 ウェブがしだいに分断する時代に、どこでどんなコミュニティとつながりたいのか、どのように投稿を露出させて誰に届ければいいのか。Twitterの混乱は、時代の変化にともなうそうした複雑で困難な課題を明るみにしたともいえるのだ。

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