生成AI、世界経済に年間620兆円の価値をもたらす可能性--マッキンゼー最新報告

Vala Afshar (ZDNET.com) 翻訳校正: 矢倉美登里 高橋朋子 (ガリレオ)2023年07月11日 11時26分

 人工知能(AI)は、リーダーとそのチームが、戦略的かつ即時にデータに基づく意思決定を行い、効果的な行動をとる上で重要な役割を果たしうる。マーケティングへの導入によって生産性の向上が見込まれ、マーケティング担当者は生成AIによって年間1カ月以上に相当する時間の節約が可能となり、より有意義な仕事を行う余地が生まれると予測する調査結果もあれば、AIには平均的な1日の作業の40%を自動化する可能性があるとの予測もある。

AIのイメージ
提供:Getty Images/mesh cube

 生成AIの潜在的な経済インパクトに関するMcKinsey & Companyの最新レポートは、次なる生産性のフロンティアとなりうる分野を取り上げている。レポートでは16種類のビジネス機能を調査し、生成AIが1つ以上の測定可能な成果を生み出す形で特定のビジネス課題に対処できるユースケース63件を検証している。

 McKinseyのレポートから、生成AIがもたらすインパクトに関する主な予測をご紹介しよう。

  • McKinseyの最新調査によると、生成AIは、分析した63件のユースケース全体で、年間2兆6000億~4兆4000億ドル(約367~621兆円)相当の経済価値をもたらす可能性がある(ちなみに英国の2021年の国内総生産(GDP)は3兆1000億ドル(約438兆円)だ)。これによって、AI全体が経済にもたらすインパクトは15~40%増加することになる。
  • 生成AIのユースケースがもたらす可能性がある経済価値の約75%は、カスタマーオペレーション、マーケティング・セールス、ソフトウェアエンジニアリング、研究開発の4分野で生み出される。
  • 提供:McKinsey 2023 Generative AI Report
    提供:McKinsey 2023 Generative AI Report
    • 生成AIは、あらゆる産業分野に大きな影響を与える。売上高に占める割合として生成AIの影響が最大となる可能性がある業界は、銀行、ハイテク、ライフサイエンスなどだ。
    • 生成AIは仕事の構造を変え、個人の仕事の一部を自動化することで個々の労働者の能力を高める可能性を秘めている。今ある生成AIなどの技術は、現時点で従業員の時間の60~70%を占めている業務を自動化できる可能性がある。技術的な自動化の可能性が加速している大きな要因は、生成AIの自然言語を理解する能力が高まっていることにあり、この能力は総労働時間の25%を占める業務で必要となるものだ。
    • 技術的自動化の可能性が高まっていることを考えると、ワークフォース変革のペースは加速するだろう。技術開発、経済的実現可能性、普及のタイムラインなど、McKinseyの最新の普及シナリオでは、2030年から2060年の間に現在の業務の半分が自動化される可能性があると予想され、その中間点は2045年で、同社によるこれまでの予測より約10年早まる。
    技術が人間レベルの能力を発揮する時期をまとめた表
    提供:McKinsey 2023 Generative AI Report
    • 生成AIは、経済全体の労働生産性を大幅に向上させられるが、それには労働者の異動や転職をサポートするための投資が必要になる。この技術の導入率や他の業務に振り替える労働者の時間の割合にもよるが、生成AIは2040年まで労働生産性を毎年0.1~0.6%向上させられる可能性がある。
    • 生成AIの時代は始まったばかりだ。この技術は明らかに熱狂をもって受け入れられており、まだ初期段階にある各社の製品も注目に値する。しかし、この技術を最大限活用できるようになるまでには時間がかかり、ビジネスや社会のリーダーたちが対処するべき課題はまだ山積している。例えば、生成AIに内在するリスクの管理、従業員に必要となる新たなスキルや能力の判断、再教育や新たなスキルの習得といったコアビジネスプロセスの再考などが必要になるだろう。

     生成AIの潜在価値はビジネス機能ごとに異なる。16種類のビジネス機能に関するMcKinseyの分析では、カスタマーオペレーション、マーケティング・セールス、ソフトウェアエンジニアリング、研究開発の4分野だけで、生成AIのユースケースがもたらす年間価値全体の約75%を占める可能性があるという。

     McKinseyのレポートにおける非常に重要な指摘のひとつは、「生成AIは、特定のユースケースにおいて潜在価値をもたらしうるだけでなく、社内のナレッジマネージメントシステムに変革をもたらすことで、組織全体の価値を高める可能性もある」というものだ。

     生成AIのインパクトはビジネス機能ごとに異なるが、レポートでは非常に説得力のある具体例を挙げており、例えば生成AIがセールスにもたらす生産性の改善は、現在の世界的な営業経費の3~5%に相当する可能性があるという。

    ビジネス機能ごとのインパクト
    提供:McKinsey 2023 Generative AI Report

     McKinseyのレポートは最後に、生成AIが仕事の未来にもたらすインパクトを予測し、長年にわたって機械は労働者に様々な「並外れた力」を授けてきたと指摘している。

     多くの業界では、生成AIや信頼、データセキュリティ、デジタル体験の改善が、全体的な顧客体験を向上させるための主要な優先事項となっている。生成AIが経済にもたらす潜在的なインパクトについては、McKinseyのレポートで詳細を確認できる。

    この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画広告

企画広告一覧

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]