ラスベガスの巨大球形アリーナ「The Sphere」--ゴーグルなしのVR体験を目指す

Artie Beaty (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 矢倉美登里 長谷睦 (ガリレオ)2023年07月06日 11時26分

 その姿を目にした人からは「サウロンの目」「巨大な金食い虫」「デス・スター」「新形態のアート」と呼ばれてきた巨大建造物がある。しかし、運営元が望む称号は「コンサートおよび映画体験の再定義」だ。

The Sphere
提供:Greg Doherty/Getty Images

 公式には「The Sphere」との名称を持つ、ラスベガスにあるこの巨大な劇場は、ロック界の伝説的なバンド、U2の25公演をこけら落としとして、9月下旬にオープンする予定だ。米国時間7月4日にこの施設の付近を訪れた人たちは、外壁が初めて本格的にライトアップされ、星条旗や花火など、米国の独立記念日にちなむ愛国的なイメージを持つ映像が投影される様子を見ることができた。

 高さ366フィート(約112m)、幅516フィート(約157m)のThe Sphereは、球体構造の建造物としては世界最大の大きさを誇る。内部にはプログラミング可能な世界最大のLEDスクリーンが設置されており、建物の外側全体を包み込むように、スクリーンが覆っている。

The Sphere
提供:Greg Doherty/Getty Images

 しかし、人目を引くのは確かなものの、外観はThe Sphereの最も興味深い特徴ではない。

 内部は、16万平方フィート(約1万4860平方メートル)の大きさを持つ解像度16KのLEDスクリーンが、1万7000以上ある座席の頭上に設置され、観客とステージの上、天井と壁いっぱいに広がっている。各座席にスピーカーが設けられていて、大多数の席は、冷気や熱気、風、さらには匂いの放出が可能な、人の五感に訴える特別な仕掛けが用意されている。

 The Sphereの生みの親によると、この施設の音響システムは、一部の観客にのみ特定の音を届けることもできるという。例えば、映画を英語で鑑賞している観客のすぐそばで、別の観客がヘッドホンを装着せずにスペイン語版の音声を聞くことが可能とのことだ。また、ある座席ではアコースティックのパフォーマンスのみが聞こえ、同時に別の席では電子楽器を含むあらゆる音が聞こえる、といった設定も可能になるようだ。

 The Sphereの生みの親であるDavid Dibble氏とJames Dolan氏はこれまでも、コンサート体験を一変させるべく全力で取り組んでいると発言していた。The Sphereでは、単にステージでバンドが演奏するのではなく、新たなレベルの没入体験をうたっており、巨大スクリーンの高解像度により、映像を見ていると他の要素に加え、The Sphereという施設の形や大きささえも、変化するように感じられるという。

 「あのゴーグルなしのVR体験」というのが、両氏が投資家にThe Sphereプロジェクトを売り込んだ際の宣伝文句だった。この宣伝文句からは、従来型のVRよりもその場にいる観客の一体感がはるかに高い体験との印象を受ける。VRはこれまで、体験がヘッドセット内に限られており、これがメタバース体験に関する最大の批判の1つとなっている。

 しかし、極めて高解像度のスクリーンが、匂いや風といった物理的要素、そしてヘッドホンが不要な高音質の音声と組み合わさると、真のVR体験を生み出せるのだろうか。その可能性はあるが、本当のところを確かめるには公演が始まる9月まで待つ必要がある。

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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