ノイズにあふれた現代社会では、騒音性難聴は深刻な脅威だ。ヘッドホンをつけて音楽を大音量で聴いていると、難聴のリスクは高まる。しかし、常に周囲が騒々しく、どうしても音量を上げざるを得ない人はどうすればいいのだろう。
ノイズキャンセリングヘッドホンは、ヘッドホンと外部音の終わりなき戦いに終止符を打つことができるかもしれない。この種のヘッドホンは周囲の雑音を遮断してくれるため、音楽やポッドキャストの音量を上げずに済む。それが耳を守ることにつながるというわけだ。
このところ、ノイズキャンセリングヘッドホンの人気がかつてないほど高まっている。ソニーのオーバーイヤー型から、「Bose QuietComfort Earbuds II」のようなインナーイヤー型まで、市場は花盛りだ。しかし、耳を保護することが目的なら、ノイズキャンセリングヘッドホンは必ずしも正しい選択肢とは限らない。その理由を紹介する。
ノイズキャンセリング方式のヘッドホンは、まったく仕組みの違う、2種類の方法で耳を守っている。
1つは「パッシブノイズキャンセリング(PNC)」だ。この方式を採用しているヘッドホンは、基本的にはその形状等によって物理的に耳を密閉し、周囲の音を遮断することで防音性能を発揮する。フィット感が強いので、人によっては圧迫感を感じるかもしれない。しかし、音ーー例えば爆竹のような突然発生する爆発音や、赤ん坊の泣き声や犬の遠吠えのような高周波音をかき消すには効果的だ。
一方、「アクティブノイズキャンセリング(ANC)」方式のヘッドホンは、逆位相の音を生成することで外部の音を「消す」。このタイプのヘッドホンは、ジェットエンジンのうなるような音や、混雑したカフェのざわめきなど、周囲の騒音のピッチを特定することによって機能する。アクティブ型のノイズキャンセリングが最も効果を発揮するのは、同じような種類と量のノイズが常に発生している場所だ。
ANC方式のヘッドホンは、まず消したいノイズの音波を測定し、その後、消したい音と位相が180度ずれた(つまり、真逆の)波を発生させる。
イエスでもありノーでもある。ノイズキャンセリングヘッドホンは、耳を多少は保護してくれるが、完璧ではない。
例えばPNC方式のヘッドホンは、耳を密閉することで、大きな外部音、特に爆発音のような突発的に発生する音から耳を守る。
一方、ANC方式のヘッドホンも、周囲の騒音を抑えてくれるので音量を上げる必要がなくなり、結果としてある程度は耳を保護できる。しかし、ノイズキャンセリングヘッドホンさえ付けていれば聴力が低下しないとは言えない。大音量の音楽は内耳にある有毛細胞を傷付ける。これは「感覚毛」という細い毛のような束を持ち、脳に音を伝える役割を果たしている極小の細胞だ。音量が小さければ小さいほど、この細胞に与える可能性のあるダメージも少なくなる。
ANC方式のヘッドホンは、突発的に発生する大音量からは耳を守れない。PNC方式のヘッドホンに搭載されているような、物理的に音を遮断する仕組みがないからだ。パッシブ型の形状とアクティブ型の技術を組み合わせたヘッドホンがあれば、どんな状況でも耳を最適な方法で保護できるだろう。
しかし、ノイズキャンセリングヘッドホンは本格的に聴覚を守ることのできる保護具ではないことを忘れてはならない。もし聴力を傷付けるような大音量にさらされる機会が多いなら、聴覚保護具を付けることを勧める。米疾病予防管理センター(CDC)は、耳栓やイヤーマフ、または特製の器具の使用を推奨している。
突発的な爆音や高周波音から耳を守りたいならPNC方式を選択しよう。ANC方式は外部音を識別してから、その音に合った逆相の音を見つけるまでに多少の時間を要するため、突然の爆音に瞬時に対応して、ユーザーの耳を守ることは得意ではない。もし純粋に耳を保護したいなら、保護用のイヤーマフを装着した方がいい。
公共交通機関や雑踏、人がひしめくオフィスのような、絶えずざわめきが聞こえる環境で耳を守りたいなら、ANC方式のヘッドホンが役に立つだろう。ANC方式のヘッドホンを着け、可能な限り小さい音量で音楽を聴けば、騒音性難聴のリスクはぐんと減る。
注意してほしいのは、屋外で運動しながら音楽を聴く場合には、ノイズキャンセリングヘッドホンは適さないということだ。交通量の多い道路を自転車で走る場合などは特に周囲の状況に注意を払う必要がある。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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