筆者の膝の上には、小型のキーボードとトラックパッドが置かれている。しかし、ディスプレイはない。少なくとも、周囲からは見えない。しかし、拡張現実(AR)メガネをかけた筆者の目には、自分を囲むように湾曲した作業空間が広がり、数十ものウィンドウが開いているように見える。
筆者がこの「Spacetop」を初めて使ってみたのは1月、ラスベガスでのことだったが、開発元のSightfulは今回ついに同製品の先行アクセスプログラムを開始すると発表した。これまでARや仮想現実(VR)のヘッドセットを数多く見てきたが、こうした未来のゴーグルやメガネと連携するように設計されたユニークな周辺機器はほとんどなかった。Spacetopの最大の売りはゲームやソーシャルの体験ではなく、ノートPCを無数の仮想ディスプレイを備えたAR対応デバイスに変えることだ。
これを売りとするのが奇妙に聞こえるなら、筆者のようにすでにそれを実践している人もいることを考えてみてほしい。筆者はMeta Platformsの「Quest Pro」をノートPCとペアリングして、仮想モニターを自分の顔の周りに広げたことがある。このようなソリューションはすでに大量にあり、そのためのアプリが提供されている。ただし、インターフェースは使いにくいことがあり、ハードウェアもモバイル向けに最適化されているわけではない。
Spacetopは、それ自体にQualcommのプロセッサーが搭載されており、空間的に追跡可能なアンカーとして機能するため、ARメガネはこの定点を基準にしてフローティングディスプレイを追跡できる。車や飛行機で移動中も追跡可能だ。また、近くにいる人と話すときはキーボードのボタンを押してフローティングディスプレイを消すなど、仮想ディスプレイのオンとオフを切り替えられる。
SpacetopにはARメガネ「Nreal Light」が付属しており、キーボードに物理的に接続して使う必要がある。Sightfulの創設者らはいずれワイヤレスにも対応する計画だが、現時点では整合性のある空間トラッキングを実現するには有線接続の方が確実だと判断した。また、全体的なコンセプトとしては、やがて他のARや複合現実(MR)のヘッドセットハードウェアに対応する可能性もある。
視野は大半のVRヘッドセットより狭い。40インチのテレビ画面をテーブルの対面に置いて見るくらいの大きさでウィンドウを表示できるが、「Chrome」に似たSpacetopのインターフェース内で最小化された別のフローティングウィンドウを見るには、頭の向きを変える必要がある。
ディスプレイのズームやスクロールは、すべてトラックパッドとキーボードで操作する。キーボードそのものがインターフェースになるということだ。
SightfulのチームはAR分野での経験が豊富だ。共同創設者のTamir Berliner氏とTomer Kahan氏はいずれもMagic Leap出身で、Berliner氏はPrimeSenseを創設した人物でもある。PrimeSenseは、Microsoftのゲームコントローラー「Kinect」にも採用された3D深度センサー技術の開発を手がけていたイスラエルの企業だ。Appleは2013年、顔認証機能「Face ID」で使用する「TrueDepth」カメラの基盤技術とするため、同社を買収した。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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